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600字で日常を描く①

【2023年10月21日 プチ贅沢】
広尾での所用を終え、帰り道で恵比寿駅構内のアトレに寄った。何も買わない予定だったが、ショーケースに並ぶ専門店のケーキを見て足が止まった。せっかくここまで来たんだし、何か買っていこう。そう思い立って、客足止まぬ列の脇でひとり、煌びやかな芸術品を見定めるようにケーキを物色した。

長いこと悩んだ末、630円のナッツの乗ったチョコケーキにしようと決めた。列に並んだ瞬間、ハロウィン時期限定の白いオバケを模したチーズケーキと目が合った。にっこりとした顔が描かれ、チョコの三角帽子をかぶった600円のかわいいオバケは、ポツンと一人寂しそうに私を見上げていた。きっと仲間たちは他の誰かに買われていったのだろう。悩む暇もなく順番が来てしまったので、チョコケーキと一緒にそのオバケも一緒に家に連れて帰ることにした。

ここ最近、物価高の影響で以前ほどスイーツを買わなくなった。コンビニ各社や食料メーカーが「プチ贅沢」を謡って、大人向けスイーツを販売するようになって久しい。しかし、今や300円以上するコンビニスイーツを前に、大学生の身分で気軽に手を伸ばすことが出来なくなってしまっている。

恵比寿という町でケーキを買い、芸術品とオバケを片手に帰路につく。ルームメイトとケーキを分け合い、感想を共有しあう。普段節約しているからこそ、非日常的なワクワクと上品なケーキの甘さに、プチではない本物の贅沢を実感した。

592文字 15文(59:48.84)

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