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7月の進捗レポート

私たちSynfluxは現在、経済産業省の「みらいのファッション人材育成プログラム」の事業として、ゼロウェイストファッション事業におけるLCA評価導入調査事業をおこなっています。


改めてSynfluxと事業内容の紹介

7月の活動を振り返る前に、Synfluxの事業について改めてご紹介します。
Synfluxは、先端的なテクノロジーを駆使し、惑星のためのファッションをつくるスペキュラティヴ・デザインラボラトリー。独自のアルゴリズムを搭載したデザインエンジンAlgorithmic Coutureを開発しています。Algorithmic Coutureは、衣服生産の核となるパターンの設計を、微分幾何学と機械学習アルゴリズムによって最適化することで、従来15–30%が捨てられていたテキスタイルのロスと材料コストを減らすことができます。

本事業の目的は、Synfluxの環境配慮事業にLCA評価手法を導入し、その知見を日本国内のファッション事業従事者と共有することです。ファッション産業の廃棄問題を解決するため、Synfluxは「Algorithmic Couture」を推進し、LCA評価手法の確立と応用可能性を探究します。これにより、環境負荷の最小化を図り、業界全体での持続可能なファッションの実現を目指します。

取り組み過程と課題

今月行った取り組みは主に二つです。

Algorithmic Couture事業におけるLCA評価手法の課題整理

LCAとは、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)の略称です。LCA評価手法とは、ある製品やサービスがそのライフサイクル全体において環境へどのような影響を与えているかを、適切かつ定量的に評価する手法のことです。Synfluxでは現在、Algorithmic Couture事業による生地廃棄量の削減が与える環境への効果を客観的な指標で示すために、LCA評価手法を導入し、その影響を算出することを試みています。

とはいえ、複雑極まりないグローバルサプライチェーンの中で、資源採取、原材料加工、製造、輸送、使用、廃棄、リサイクルなど上流にも下流にも無数に枝分かれしていくライフサイクルを追いかけるのは容易なことではありません。そのためSynfluxではまず、Algorithmic Couture事業による直接の影響があると考えられる領域として、生地の原材料生産から製品完成までの製造段階に絞って、データの収集と分析をおこなっています。
 
手法確立のために、どのようなデータが必要なのか?環境負荷の指標はどこに定めるのがよいのか?分析方法は何が適切なのか?必要なデータは、誰がどこで取得できるのか?正確なデータが取得できない場合にはどうすればいいのか?データの入力フォーマットはどのようなものが使いやすいのか……?取り組みの中で出てきた具体的な課題にひとつひとつ対応し、Algorithmic Couture事業におけるLCA評価手法を固めてきました。
 
そして目下の課題は、データの透明性を上げていくこと。そのためにどうしたらいいのか問題点を整理し、メンタリングに臨みました。

〈メンターからのアドバイス〉
・「泥臭く」データを集めていく
・LCA評価手法を導入しているファッションブランドの方にヒアリングを行う
 
前述したように、Algorithmic Coutureは微分幾何学と機械学習アルゴリズムによって最適化された衣服のパターンを提供するため、その縫製は、従来のパターンよりも複雑化する傾向にあります。では、Algorithmic Couture製品の縫製を従来製品の縫製と比較したとき、工場でのエネルギー量がどのくらい変化しており、職人の方々の作業量はどのように違うのでしょうか?このようなデータを収集するには、実際に工場に行ったり、職人の方と話したりして「泥臭く」データを集めるしかない、ということです。
しかし、すべての製品に対して「泥臭く」データを収集することは現実的ではありません。そのため、収集したいデータを整理し、ひとつひとつのデータに対して汎用的な収集フローを確立していく必要があります。だれに、どのようなコミュニケーションの方法で質問すればうまくデータが収集できるのか、ということを考えていくためには先達に学ぶ必要がありそうです。
 
これらのアドバイスを踏まえ、次のアクションとして
・LCA評価手法を導入した経験を持つブランドの方へヒアリング
・収集したいデータの整理
・質問フォーマットづくり
に取り組んでいこうと思います。

LCA評価手法に関連する国際的な動向のリサーチ

警鐘が鳴り響いている地球環境に対して、繊維・アパレル産業は早急な変革を迫られており、世界各国で対応が進んでいます。とりわけEU諸国では、製品製造の透明性向上という観点について盛んな議論が行われており、「持続可能な製品のためのEcodesign規則(ESPR)」の施行や「デジタル製品パスポート(DPP)」の創設など強制力のある施策が始まっています。日本でも、繊維産業小委員会「繊維・アパレル産業における環境配慮情報開示ガイドライン」や経済産業省「ファッションの未来に関する報告書」など、変革への道筋を照らす資料が公開されています。
 
Synfluxの本プロジェクトは、繊維・アパレル産業の社会的・国際的動向の中に、どのように位置づけることができるでしょうか。Synfluxでは、世界的スタンダードを十分に理解した上で、そこに適合できるようにLCA評価手法を導入することを目指しています。つまり、Synfluxの事業だけで完結するのではなく、国際的動向に準拠した形でシステムを構築することが必要だと考えています。
 
そこで現在、国際的動向のリサーチとしてDPPレポートやFashionPactの関連資料をプロジェクトメンバーで精読し理解を深めるとともに、それを踏まえた本プロジェクトの照準について検討を重ねています。こうした国際的動向を踏まえた上で私たちはどのような未来に向かうのか、プロジェクトを通じてSynfluxとしてのミッションを打ち出せるように、次の1ヶ月も引き続きリサーチを進めていきます。
 


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