8月の進捗レポート
私たちSynfluxは現在、経済産業省の「みらいのファッション人材育成プログラム」の事業として、ゼロウェイストファッション事業におけるLCA評価導入調査事業をおこなっています。
先月の活動の振り返り
先月は、以下2つの活動を行いました。
・SynfluxのAlgorithmic Couture事業におけるLCA評価手法の課題整理
ここで「データの透明性を上げていくこと」が目下の課題となりました。メンタリングでのアドバイスを踏まえ、収集したいデータはなにかを整理した上でひとつひとつのデータに対して汎用的な収集フローを確立していくことを目指し、現在も調査を進めています。
・LCA評価手法に関連する国際的な動向のリサーチ
Synfluxの本プロジェクトを繊維・アパレル産業の社会的・国際的動向の中に適切に位置づけるため、国内外、特に日本とEU諸国を中心に現在施行されている規則やガイドラインを収集し、チームメンバーで精読しました。
(先月の活動についての詳細はこちら)
今月の取り組み
引き続き、国際的な動向のリサーチ
国際動向リサーチを、今月も引き続き行いました。
まずは先月行った主要な資料の精読結果を踏まえ、欧州/米国/日本それぞれで、アパレル・繊維産業におけるLCA評価手法や資源循環に関連する政策動向を時系列に沿って概観し、理解を深めていきました。
たとえば欧州では、2024年3月に"Digital Product Passport in the textile sector (DPP)"が欧州委員会より公表されました。DPPは、2022年3月に欧州委員会が発表した持続可能な製品イニシアティブ(SPI: Sustainable Products Initiative)の一環として2022年3月に交付された、エコデザイン規則(ESPR: Ecodesign for Sustainable Products Regulation)が規定している項目です。
エコデザイン規則(ESPR)は、2009年12月に施行されたエコデザイン指令(ErP)の改正版です。エコデザイン指令(ErP)とは、エネルギー消費製品の環境への影響を減少させるため、製品設計段階でのエコデザイン要件を定めるものです。製品のライフサイクル全体にわたるエネルギー効率や資源効率を向上させ、廃棄物の削減や有害物質の使用を最小限に抑えることを目的としています。エコデザイン指令(ErP)ではその対象範囲がエネルギー関連製品(energy-related products)に限定されていましたが、エコデザイン規則(ESPR)はすべての製品カテゴリに適用されます。それに伴いエコデザイン規則(ESPR)では規定されるエコデザイン要件も、エネルギー効率に加え、耐久性や再利用性、炭素・環境フットプリント等の持続可能性など、多岐にわたり増加しました。
こうした背景から、製品のライフサイクル全体にわたる各プロダクトの詳細な製品固有情報をデジタルデータとして可視化することを義務付けるDPPが提案された、という流れがあります。DPPは製品ライフサイクルのあらゆる段階において詳細で透明性の高い情報を各ステイクホルダーが収集・利用できるようにするための情報開示リストを提示した上で、それらのメリットやリスクを踏まえ、実現のための3つのフェーズ(2027年までの短期的展開、2030年までの中期的展開、2033年までの長期的展開と達成)を提示しています。
リサーチでわかってきたこと
私たちは、SynfluxのAlgorithmic Couture事業におけるLCA評価手法を確立させることを目指すにあたり、国際的動向に準拠した形でシステムを構築することが必要だと考えています。そのため、上記のような日本と欧州を中心とした各国の動向についてリサーチを重ねてきました。その結果、全体の動向として、透明性を高めるという一定の方向性に向けて規律やガイドラインが整備され始めているということがわかってきました。
日本国内では、2022年5月に繊維産業政策の方向性を取りまとめた「2030年に向けた繊維産業の展望(繊維ビジョン)」が発表され、2030年を目標年とした資源循環ロードマップが作成されています。多岐にわたるステイクホルダーがそれぞれ具体的にどのようなアクションプランを踏んでいけば良いのか、まだ検討事項は残されているものの、こうした政策によって国内産業各社が動き出しつつあります。
とはいえ、時系列だけを考えても、やはり欧州各国の取り組みは先んじています。私たちがかれらの取り組みから参照すべきことは何でしょうか?そこに基準点を探すのではなく、シナリオプランニングやストラテジックな方法論を取り入れる、ということも視野に入れながら、今後も引き続きリサーチを進めていく予定です。
イベントの企画と準備
Synfluxでは、今回のプロジェクトにおける取り組みの一つとしてイベントの開催を予定しています。
プロジェクト当初は、SynfluxのAlgorithmic Couture事業におけるLCA評価手法を進めていくにあたり出てきた具体的な課題に対してヒントを得られるようなコンソーシアムの開催を思い描いていました。しかし、もう一歩踏み込んでSynfluxとしてできることとは何か?を考えた時、今ある具体的な課題への答えを探すだけではなく、課題を解決した先にある未来を見据えた広がりのあるイベントにする、という方向性が見えてきました。
社内チームメンバーで議論を重ね、いろいろな可能性を膨らませてメンタリングに臨みました。
メンターからのアドバイス
開催形態をレクチャー中心ではなく、参加者が手や頭を動かせるようなワークショップ形式にするのがいいのでは。
Synfluxだからこそできることとして、LCA評価手法とスペキュレーションやデザイン実践の応用があるのでは。
LCAはどうしても算定数値を追いかけることに終始してしまい、達成したいビジョンと乖離ができてしまう傾向がある。これまでにリサーチした国際動向を把握した上で、ビジョンとLCA手法を結ぶ道筋を作り出すことが重要なのでは。
メンターの方からは、以上のようなアドバイスをいただきました。
来月からは、ワークショップ形式のイベント企画に向けて舵を切り、内容を詰めていく予定です!
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