「良い文化」とは、「良い戦略」の裏返し。|カルチャーデザイン
「いかにすぐれたカルチャーをデザインするか。」
これですら、手段であって目的ではありません。
目的のレイヤーをもっと根本的なところまで遡れば、そもそも個人ではなくチーム・会社で何かをするということは、一人では成し遂げられない大きなビジョンやミッションを実現するため。
そのための現実的なスキームとして株式会社があり、そんな使命を実現するために社会に価値を提供し、代わりに売上・利益を獲得し続けるためには、常にライバルとの競争に勝ち続けないといけません。
故に、WHYからはじめれば
1. ビジョンやミッションを実現するために
2. 常に競争に勝ち続けて社会に価値と利益を得る
これがまず大上段にあります。
つまり、優れたカルチャーデザインとは自社の文化に根ざした「勝てる組織文化デザイン」であり、文化というのはハイレベルなデザインレイヤーであり、結局ローレベルで大事なのは「行動」のデザインです。
つまり、勝つための組織行動デザイン。
これがカルチャーデザインが持つべきローレベルな目的となります。
ここまで整理すると、経営において同様に「勝つための組織行動デザイン」に大きく影響を与える変数があるんですね。
それが、「戦略」です。
戦略も突き詰めれば勝つための組織行動デザインに他なりません。
つまり、
1. ビジョンやミッションを実現するために
2. 常に競争に勝ち続けて社会に価値と利益を得る
この目的のためにカルチャーデザインを深めるほど、その先の「行動」に影響を与えるもう一つの変数である「戦略」との相互作用を考慮しなければならないというこです。
したがって、カルチャーデザインをWHYに紐づけるほど、デザイン領域は「戦略」の範疇へと領海侵犯していかなければなりません。
文化が戦略を喰う。
企業文化は戦略に勝る
Culture eats strategy for breakfast
(ピーター・ドラッカー)
これは、文化という変数を無視した戦略立案は絵に描いた持ちである。という戦略立案においては割とコンセンサスになってきたドラッガーの言葉。故に、近年「企業文化」「組織文化」的な注目が実際高まっています。
これはあくまで「戦略・実行立案視点」から「企業文化」という物の本質を捉えた言葉ですが、逆に「企業文化」つまりカルチャーデザインの観点からどのように「戦略」というものにアプローチすれば良いのでしょうか。
一つ言える確かなことは、
・自社の文化を知ること
・自社の戦略を練ること
この2つのプロセスは
1. ビジョンやミッションを実現するために
2. 常に競争に勝ち続けて社会に価値と利益を得る
この企業の本質的で普遍的な目的に照らし合わせた時には、避けては通れない重要な最初のプロセスということです。
さらに言えることは、その重要プロセスにおいて、自社の「文化」と「戦略」を何度も往復することによって、初めて自社が持つべきリアリティのある「戦略」が出来上がるということだと考えています。
つまり、カルチャーデザインの旅路においては、「競争戦略」というものをより深く理解しておく必要があるということです。
良い戦略、悪い戦略。
以上の思考のプロセスもあり、最近は深く「戦略」について学んだり自社の「戦略 <> 文化」の相互作用を考えることが多いです。
ちなみに、「戦略」「競争戦略」という視座において今まで感銘を受けてきた戦略系の書籍は3つあります。
どれもここで詳細を語る必要も無いぐらい著名なタイトルなので詳細は割愛しますが、
・競争戦略論|フレームワークを通じた戦略の本質
・ストーリーとしての競争戦略論|自社のおかれた環境とコンテキストを通じた戦略の本質
・戦略プロフェッショナル|「戦略はただの道具」と言い切るチーム・組織との相互作用による戦略の本質
をそれぞれバランス良く学ぶことができます。
さて、これらの土台の上に、久々にこれらと同じレベルで学びの深かったのが、こちらのタイトルです。
メルカリの進太郎さんがブログで書かれていたり
メルカリ周辺の方々がおすすめしていたので読んでみたのですが、折に触れてこれは何度も読み返しそうなので、恒例の読書メモ(学びのチェックリスト)をiPhoneのメモに残しました。
読書メモ|良い戦略、悪い戦略。
・良い戦略は単純明快
・良い戦略はパワーポイントを使って延々と説明する必要がない
・良い戦略とは、死活的に重要な要素への経営資源の集中
・良い戦略とは、直面する難局を乗り越えるアプローチを提示する
・良い戦略はとるべき行動指針がすでに記されやることが明確になっている
・良い戦略は新たな価値を生み出す
・良い戦略は重要な一つの結果を出すための的を絞った方針を示し、リソースを投入し、行動を組織する
・良い戦略に必要なのは様々な要求にノーと言えるリーダーである
・良い戦略立案には何をするかと同じぐらい何をしないかが重要
・良い戦略は定石中の定石、組織が複雑になるほど、これを実行するのが難しい
・戦略の定石は相手の弱いところにこちらの強いところをあてること
・悪い戦略は良い戦略を立てようとするハードワークを避けた結果
・良い戦略は重要な課題にフォーカスする
・カリスマ的リーダーは人々心を動かすが、良い戦略を保障するものではない
・良い戦略はサブシステムを含めたシステムの全体設計でありコーディネート
・良い戦略は会社という複雑でバラバラに動こうとするシステムを強制的にコーディネートされた行動へ導く
・良い戦略は行動のコーディネートである
読後感として思うことは、「行動」の大切さ。
正しい戦略を描く、取捨選択をしてフォーカスする。この難しさは当然身に沁みるものがありますが、それ以上に結局は「正しい組織行動」をコーディネートできないと本質的に戦略は無価値になるということです。
これは企業文化のデザインでもやはり同様です。どれだけ素晴らしい(と思える)ビジョン・ミッション・バリューを掲げても、組織を正しい行動へと導き続けないと文字通り絵に描いた餅、額に飾った絵画になります。
良い戦略デザインを通じて、ロジック・理屈で組織を正しい行動に導く。
良い文化デザインを通じて、エモーショナル・情理で組織を正しい行動に導く。
企業組織を率いるとは、つまるところこの二つが自社独自のシナジーによって最もポジティブで力強い組織行動に繋がるポイントを探すことなんですね。
戦略 × 文化による行動デザインの旅は、果てしなく続くいばらの道でした。
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