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『マイ・エレメント』のエンバーとウェイドが尊すぎた

ディズニープラスでの配信も開始された『マイ・エレメント』。

韓国系移民の子として育った監督が自身の体験もふんだんに取り入れてるとのことで、
『私ときどきレッサーパンダ』が素晴らしかったのもありアジアンアメリカン的な背景も含めて楽しみにしていた作品。

備忘録として、視聴直後のフレッシュな好きの感情を鮮度優先でぶちまけていきたい。


移民としての経験や現実社会と鏡にして見てももちろん素晴らしい映画なのだが、予想以上にキャラに引き込まれてしまった。

火の移民はほとんどいないような時代に街にやってきた両親の期待に応えるために奮闘するエンバーの話…でもあるのだが、水のエレメントであるウェイドが物語の発端であり、個人的にいちばんの見どころであると思う。


兎にも角にもウェイドが魅力的すぎる。めちゃくちゃ泣き虫のウォーター・ガイかと思えば、人一倍共感能力が高いエンパスであるだけでなく他者の感情に語りかけることも上手く、何よりエンバーとのかけあいが最高。
エンバーが(本人曰く)生まれて初めて涙を流すシーンではこちらも泣いてしまったし、とにかくウェイドがエンバーに向けて言う言葉全てが思いやりに溢れているとともに水のように澄んでいて、水面に姿を映すように本質を優しく導き示してくれるようなものばかり。
ウェイドが理想のパートナーなのでは、、?と思わずにいられない。

社会的なコメントをするのであれば、「男なんだから泣くな」なんて言葉もきっとリップル家には存在しないんじゃないかと言うぐらい大泣き虫のウェイドがメインの男性役として描かれていて、従来のちょっと身勝手でマッチョな王子様役とは対照的な部分がありつつも理想的ないし現実的にも望ましい恋愛の対象として描かれていることが嬉しかった。
強くてぶっきらぼうで感情に疎いキャラだってもちろん魅力があるけれど、自分や相手の感情にきちんと目を向けさせてくれるような、ヘタレることもあるけれど真摯な男性をここまでがっつり魅力いっぱいに描いてくれて感謝しかない。いいぞもっとやれ。


家族もリップル家と映画を通して全ての人物名やセリフに各エレメントに沿った言葉遊びが織り交ぜられてるのも楽しいし、何度でも観たい。
化学的なことが好きな人なら映画の随所に散らばる設定や演出にも心踊らされると思う。


私は何より「ケミストリー」の言葉遊びが一番お気に入り。
英語圏ではしばしば、“love chemistry”といって、恋愛対象者間においてビビッとくる感覚のようなものの有無について、“we have chemistry.”などと言うことがある。
劇中でエンバーとウェイドが初めて触れ合った時、お互いのケミストリー(化学式)が変化した、というようなセリフがある。


つまり何が言いたいかと言うと、人外異種間恋愛がツボな人は絶対ハマる部分があるし、そうじゃなくても差異や社会的な壁を乗り越えたロマンスに弱い人は二人の関係性にグッとくるんじゃないかと思う。

だって火と水のカップルだよ?火のエレメントたちって水に触れたら消えちゃうの?だし、水のエレメントも熱すぎると蒸気になって消えちゃうかも、なエレメントならではの葛藤もあり、
本編ではほとんど水は水、火は火、木は木と同じエレメント同士で一緒になってて、社会的にも特に火は街が火のエレメントのことを考慮して作られていないこともあり他のエレメントとの隔絶が木・水・雲間よりも強い。
そんな中で共に過ごして行く二人……とくにビーチのシーンが尊いです。あとウェイドの家族を訪問するところも。あーでもずっとエンバーが子供の頃から溢れていた花を見るのを叶えてあげようとウェイドが奮闘するところも最高です。
とにかくいいので観てください。


余談として、現実世界の人間でもインターレーシャル・カップルとカテゴライズされる場合があるわけだけど、エレメントたちに比べて人間の場合はほんとに違うのは肌の色くらいなんだな…と思った。

エレメントたちの間で異元素間(?)のカップルから生まれた子供が描かれていないからどんな形になるのか分からないけれど、水に触れると体の一部が消えちゃったりと体の形や構造が根本的に異なるエレメントたちでもなんとか歩み寄れるのだから、結局人間なんて同じホモサピエンスなんだしそこまでの差異じゃないよね、と。
少し強がりかもしれないけれど、そんな希望を抱かせてくれる物語だった。


キャラや世界観を中心に言葉を並べてきたけれど音楽も最高だし映像美はさすが信頼のおけるピクサー。音楽は字幕では「フュージョン音楽」と時折書かれていて、いろんなエレメントたちが交差する世界にふさわしい、民族音楽のようななつかしい音と未来的な音が交錯していてサントラ垂れ流したいなと軽率に思うくらいには世界をとても楽しく鮮やかに補完してくれていた。

小ネタ満載のエンディングロールで見られるイラストでもエレメントたちはカラフルに描かれているけれど、太陽の光が水面に反射して水面のゆらめきが壁や天井、木々に映るのを綺麗だと思ったことがある人は見ていて癒される映像もてんこ盛り。


これからメイキング映像も見たいと思う。
エンバーとウェイドの後日譚もショートフィルムとかで待ってます!

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