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ゴーンの事件が対立軸が盛りだくさんすぎるので10分で理解できるよう整理してみた

もはや、007の映画の様な展開になっているゴーン事件


ゴーンが動くたびに新しい対立軸と論点が生れ(特に日本においてなあなあになっていた)根源的なテーマがひっちゃかめっちゃかに掻き回され議論が深まる。

会社とは何か?会社は誰のものか? 

国家とは何か?国家は誰のために働くか? 

法とは何か?法律は誰に対して誰によって執行されるべきか?

正義とは何か?真実は誰のもとにあるか? 

と、時間を追うにしたがって戦線はどんどん拡大しています。

論点1 :会社とは何か?会社は誰のものか?    

    NISSAN is owned by whom?<対立軸:プロ経営者 vs  生え抜き役員+従業員>

日産は当時有利子負債を2兆円抱えて放っておけば確実に潰れた会社です。
ルノーが8000億円とゴーンを投入して再生させたルノーグループの子会社です。

ただ、会社は従業員のものとして見がちな日本企業では、売上規模も社員数も多い日産が何故、規模の小さいルノーの支配を受けないといけないのか?という不満が業績が回復するに連れ高まります。


また、西川社長はゴーンチルドレンとしてゴーン流の経営判断と冷徹な人事を知り尽くした人です。業績不振の責任により(責任を押し付けられ?)次の取締役会で自らが解任されると確信した西川社長が取締役1週間前に本能寺の変に出たという流れです。

論点2 :国家とは何か?国家は誰のために動くか?       The nation serves whom?
<対立軸:政府 vs  グローバル企業 日本政府 vs フランス政府>

ルノーも日産も三菱も、歴史的に国家とは因縁があります。それぞれ創業以来、軍需産業として戦争とともに成長し自動車だけでなく航空機、戦車まで製造していました。日産の本社は戦前は旧満州新京です。

ルノーはドイツ占領下ではルノー兄弟の判断でドイツの軍需工場になりましたが、それを国家に対する裏切り行為としたド・ゴール大統領により戦後国有化され民営化後も大株主はフランス政府です。

マクロンは経済担当大臣の頃から、特別に法改正など布石を打ってルノーに対する政府の発言権を高め、雇用等政府の意に沿うように経営介入を深めていました。日産三菱を併合すると仏のルノーグループが、独、米を押さえ世界最大の自動車会社になれる

当初は国家による経営介入に反発していたゴーンが、自らの会長職の立場の保証と引き換えに2018年2月に併合に動き出した。そう感じた日産幹部が経産省と相談し、ゴーン外しに動いた。経産省の自動車課としても、日産三菱がフランス政府によって経営されるのは許容できないと判断したのだと思います。

そこで官邸と連動して司法取引制度を使って特捜が動くのが今の日本政府の怖さ。(司法取引制度は運用次第でいくらでも部下が上司を刺しに行ける)


また、ファーウェイ、VW等グローバル企業の経営者が、自国ではない政府によって、起訴され逮捕されることが実は近年頻発しています。

巨大化するグローバル企業と自国第一主義の政府の対立は激しさを増しています。

ちなみにカルロス・ゴーン氏はフランス政府に擁護を求めましたが、

前会長は、テレビ局TF1とLCIに対し「私は戦いを続けている。私は無実だ。つらいことは認めなければならない。フランス政府は私を擁護してほしい。市民としての私の権利を守ってほしい」と述べた。

ただでさえイエローベスト運動の対応に追われるマクロン大統領がフランス以外に2つの国籍を持つ金持ちの擁護に動くわけもありませんでした。

論点3 :法とは何か?法律は誰に対して誰によって執行されるべきか?                                                                     The laws exists for whom?                                               <対立軸:国内司法 vs  グローバル経営者と世論

孫正義氏始めグローバルの経営者を数多く見てきましたが、彼らはルールやコンプライアンスは遵守します。(元々ゲームに勝てる人達なのです)

ただし、その法律が合理的に考えておかしい、フェアではないと認識したときには徹底的に政府であろうと自分の持っている財力、人脈、胆力すべてをかけて戦う人達でもあります。世論にダイレクトに訴える力も持っています。

「そんなことで公正な裁判(a fair trial)は期待できるんだろうか?」彼はなんどもこの同じ質問をした。そのつど私は日本の実務について、自分の経験に基づいて説明した。憲法や法律の条文と現実との乖離についても話した。」
「「カルロス、とても申し訳ない。本当に日本の制度は恥ずかしい。一刻も早くこの状況を改善するために私は全力を尽くすよ。」返事はなかった。彼は私の存在などないかのように、次の予定を秘書と確認していた。

もちろん返事はないでしょう。

よくわからない戦争に巻き込まれよくわからない戦場で闘っているゴーン将軍が彼が雇った軍事専門家に、「この戦争はおかしい、こんな戦争のない世の中をつくるのに全力をつくすよカルロス」と言われても「は?今、武器よこせや」でしょう。

もう自分と仲間だけで戦うか、戦場を離脱するしかないと覚悟を決めていたと思います。客観的な事実関係を見るだけで、特捜の逮捕理由も勾留延長のロジックをみても有罪に持っていくには無理筋過ぎます。


論点4 :正義とは何か?真実は誰のもとにあるか?  The truth exists in whom?
<対立軸:富裕層1% vs 貧困層99%>

逃亡先レバノンの記事を読むと、世論は2つに分かれているようです。

「我々は盗んだ金を返せとは言ってきた。盗んだ男を返せとは言ってない」

政府に利権や不正がはびこるレバノンでは、カルロス・ゴーンは富裕層や政権中枢にはビジネスで成功した英雄でも民衆には、結局はお金ですべて解決できる「上級市民」に過ぎないという反発も強いようです。

またNetflixが独占契約を結んだとの報道もありました。
日産時代から、メディアを多用しメッセージを送ってきたゴーン氏はメディア発信に自信があるのだと思います。実際に記者会見で無実を積極的に訴えてきました。

死刑制度が残り、経済事件の被告が弁護士の立会も許されず、テロリストの様に15時間も尋問をうけるという人質司法、逮捕すると99%有罪に立件するために総力を上げる検察ファッショ、Post Truthの時代、映像による世界の世論を味方につけられると判断しているかもしれません。

ただし、「成功者のエゴと自己弁護の塊のような内容」では特に見たいと思う人も少ない気もします。(事実、その後報道は否定されました。)

ゴーン氏は常に、常に現れる新しい敵と実力で闘ってきた人です。もちろん、素手で闘ってきた人の常として強欲だったり自分中心だったりする部分もあったと思いますが、彼の戦いによって日本のみならず世界の歪みが正されたら良いと思って見守っています。

PS さらに図解し、今後どうなるかについて後編もあります。

後編:【記者会見の前に】改めてゴーン事件を10分で図解で復習〜全能ゴーンが陥った第4の対立軸〜


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