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対馬で過ごす古き良き夏休み

先日、対馬へ3日間の旅行に行ってきた。
穴場だが、とても魅力ある島だった。


なぜ対馬に来たのか


妻の両親が対馬に住んでいたことがあり、一家の里帰り旅行に同行させてもらった。

関東の人間である自分からすると、対馬は領土問題の島であり、旅行先としてもあまり聞かない遠い存在だった。


対馬って?


歴史の島

領土問題の島としての印象が強い対馬だが、日本史を語る上でも重要な存在だ。

1200年代にはモンゴル帝国と属国による元寇の舞台となった。
2回に渡って攻め込まれたことは歴史の授業でも習うが、いずれも最初に攻め込まれたのは対馬であり、その後の壱岐や九州本土への侵攻に繋がっていく。

1500年代の朝鮮出兵においても対馬は重要拠点であった。
戦時においては豊臣秀吉によって城が築かれ、戦後は朝鮮と交易のあった対馬藩が国交回復に大きな役割を果たしたと言われている。

近代史に目を向けると、バルチック艦隊を破ったことで知られる日露戦争の日本海海戦は、対馬沖であったことから海外ではBattle of Tsushimaと呼ばれている。

その立地上、何かと海外諸国との争いに巻き込まれてきた島だ。

意外と大きい

北海道、本州、九州、四国、沖縄という主要5島を除くと、対馬は3番目に大きい。
1、2番目はそれぞれ佐渡島、奄美大島だ。
中心地の厳原から北端までは車で約2時間もあるので、観光には数日必要だ。
こんなに大きいのに、対馬市で一括りなのも面白い。

東京からも近い

そんな対馬だが、実際は思ったより行きやすい。
東京からの直行便はないが、福岡と長崎からは直行便で行ける。
今月(2024年8月)の適当な日付で調べたところ、福岡発・長崎発共に1日8便ほどあった。

東京から乗り継ぎで行くにしても、朝発で午前中に到着する。
便数が多いため乗り継ぎ時間も短縮できる。

僕は福岡で乗り継いだが、福岡から対馬へは飛行機でたった30分ほどだった。
今まで相当な数の飛行機に乗ったことがあるが、これほど飛行時間が短い区間は記憶にない。

搭乗した飛行機

プロペラ機というのも、最近は珍しいのではないだろうか。

福岡発なら航路という選択肢もある。
フェリーで5時間弱、高速船で2時間強で航空券より安価だ。
欠航リスクが気になるが、次回はこちらを試してみたい。


ステレオタイプの夏休み


子供の頃の夏休みといえば何を思い浮かべるだろうか。
多くの人は田舎、セミ、川、海水浴、緑豊かな山などを思い浮かべるだろう。
おじいちゃん・おばあちゃんの家に遊びに行った人も多いかもしれない。

対馬はその情景を思い起こさせる場所だった。

船の玄関口である厳原はそれなりに栄えているが、他の街は大都市に比べればかなり小規模だ。
起伏が激しい地形のため、街を出ると山々に囲まれた緑豊かな道を走ることになる。
道中ではトンビやテンに遭遇したり、時折通過する集落では田んぼと古い家が連なっている。

いくつか海水浴場はそれほど混んでおらず、綺麗な海を楽しめる。
川遊び場もあり、とにかく自然豊かだ。

対馬には多くの人が思い浮かべる夏休みを彷彿とさせる光景が広がっている。
8月ということもあり、遊びに来ているのであろう小学生を沢山見かけたが、そんなステレオタイプの夏休みの思い出を作れる彼らが羨ましいと感じた。


対馬の見どころ


対馬の見どころを主観で紹介していきたい。

鮎もどし自然公園

公園の中心を流れるのは瀬川

自然景観の美しい国定公園。
川の両脇は天然の花崗岩だ。
夏は川遊びができる上、キャンプ場もある。

ただ気をつけたいのは、苔が多く非常に滑りやすいこと。
僕も滑って川に落ち、浅い川底も苔むしているため滑り台のように下流まで滑ってしまい、岸へ上がろうにも滑って中々上がれない。
おかげでスマホは再起不能になり、アフリカや中南米など数十ヵ国を共に旅したiPhone Xとは、ここで思わぬ形で別れを告げることになった。

川遊びの危険性を再認識したことはともかく、珍しい自然景観と川遊びを楽しめる、夏休みに最適な場所だったことは間違いない。

茂木浜海水浴場

対馬最大の天然の砂浜。
湾になっており、内側はどこまでも歩いていけるほど遠浅で透明度も高く、魚は殆どいないが素晴らしい景観を楽しめる。

海水浴場という視点でも充実している。
安心な遠浅で混雑もしておらず、シャワーや休憩スペース・トイレも完備され、見守りのおじちゃん達もいる。

地図を見るからに辺境の海岸だと思っていたが、予想外に整っていて驚いた。
対馬は街中でも現金以外の決済手段が豊富で、観光しやすいと感じた。
もちろんレンタカーは必須だ。

和多都美神社(わたづみ神社)

神社の正面
裏側には鳥居が連なっている

対馬の入り組んだ地形を車で走っていると、山陰に隠れていた神社が急に現れる。

神社の後ろには3つの鳥居が建っているが、満潮時には奥2つの鳥居は水に浮くように見えるそうだ。
1番奥の鳥居は2020年9月の台風10号で倒壊したが、クラウドファンディングで2,700万円もの寄付金が集まり、再建したそうだ。

ちなみに、倒壊した鳥居は上部が神社の脇に置かれており、非常に低いが潜れるようになっている。

残念だったのは、韓国人立ち入り禁止と書かれたサインが置かれていること。
対馬はその立地から韓国からの観光客が非常に多いが、マナー違反に該当する行為が横行し、対処しきれなくなり設置したそうだ。

日本人にとっては神聖な場であるが、外国人がその価値観を理解するにはハードルがありそうだ。
これらは他人事ではなく、多くの観光地で起こっているオーバーツーリズムが引き起こす問題の一つとも言え、自分も加担する側になり得る。
自分自身も旅行先の文化・価値観を尊重するよう、気をつけたい。


リアス海岸

対馬観光物産協会ホームページより拝借
飛行機の窓から見るリアス海岸

僕は旅程の都合上訪れる機会がなかったが、対馬の絶景といえばリアス海岸だろう。
飛行機の窓からもよく見えたが、とても美しかった。

1枚目の画像は観光スポットである金田城跡の山頂の景色で、登山ルートを登っていけるようだ。


島のアイコン、ツシマヤマネコ


対馬野生生物保護センターの「かなた」
画像は環境省ホームページから拝借

対馬といえば真っ先にツシマヤマネコが思い浮かむ方もいるだろう。

名前の通り対馬にのみ生息する種で、対馬がまだ陸続きだった頃に大陸からやってきたベンガルヤマネコの亜種とされている。

現在、野生での生息数は約100頭(70頭とも)。
交通事故で毎年何頭か亡くなっているとのことで、道路を走っていると至る所で「ツシマヤマネコ注意」の看板を見かける。

そんな状況なので通常はツシマヤマネコには出会えないが、対馬野生生物保護センターでオスのツシマヤマネコ「かなた」に会える。

実は都内でも、吉祥寺の井の頭恩賜公園にある動物園でツシマヤマネコに会えるので、都内在住の方は訪れると良いだろう。

僕は都内でも対馬でも会いに行ったが、明け方と日没頃に活発に動く性質のためか、いずれも眠っていた。

ちなみに対馬には他にも固有種が多く生息しており、ツシマテンやツシマジカを始めとしてツシマ〇〇という動物がたくさんいる。


絶品!あなご亭


当然、対馬にも名物料理はたくさんあるが、一番お勧めしたいのは穴子だ。
というより、あなご亭という穴子専門店だ。

特段穴子が好きでは無かったが、ここの穴子はとにかくフワフワで柔らかく、今までの穴子の常識を覆される。

僕は穴子寿司を注文
白い方は生の穴子だ

辺鄙なところにあるが、予約客で一杯だった。
先に紹介した和多都美神社のすぐ近くにあるので、合わせて訪問すると良いだろう。


市街地の暮らしと集落の暮らし


厳原は栄えている

出店して話題になった厳原の無印良品

対馬最大の市街地は厳原だが、広く無いエリアに約1万人が居住しており、それなりに人通りも多く活気がある。
コンビニは数軒あり、マツモトキヨシや無印良品もあった。
スーパーも品揃えは十分あり、生活するのにあまり不便はしなそうだった。

ただ対馬全体で年々人口は減っているようで、厳原も1970年には2万人いたが、現在は半減している。

集落の暮らし

僕はといえば、厳原からは離れた集落にある親族の空き家で過ごしていた。
当たり前なのだが、土地がある分家が恐ろしく広く、都内のアパートの1室に暮らす僕にとっては豪邸だった。

集落の近くの光景

山と緑に囲まれた集落なのでスーパーやお店も無く、自然に囲まれて穏やかに過ごせる。

人の手が入っていない自然に囲まれているためか、とにかく虫が多い。
家ではコアシダガクモと呼ばれる、アシダカグモに類似したクモに頻繁に遭遇した。
虫が嫌いな人には厳しい環境だろうが、個人的にはこれもステレオタイプの夏休みを思い起こさせてくれるものであり、楽しい思い出になった。

ノスタルジー溢れる夏休みを過ごしたい方は、対馬旅行を検討しても良いだろう。


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