戦略的入浴計画
風呂に入りたくない。本当に風呂に入りたくない。入りたくないと言いながら結局入るのだが、出来ることなら入りたくない。平日の夜は家のどこかで横になって「こいつ(自分)いつ風呂入るんだろ...」と思いながら寝落ちしたり、「一週間の日数が5日で、一日が約34時間だったとしても、恐らく一日に入浴する回数は1回だから、やっぱり週に7回も風呂に入るのっておかしいよな~」などと考えている間に寝落ちしたりしている。そして翌朝慌てて風呂に入る。大体そんな日々を過ごしている。
風呂が苦手だと言うと「入浴剤入れると楽しいよ🎶」「キャンドルを焚くのがおススメだよ🎶」などとアドバイスをもらったりする。そのような意見についてこの場を借りて言わせてもらうが、私はそういう話をしているんじゃない。何故なら私にはそもそも「風呂を楽しもう」という気が全くないからだ。エンタメ性を高めたところで風呂は風呂。クソダルい存在であることに変わりはない。つまり、やれ入浴剤だキャンドルだと言って闇雲に風呂の魅力を上げようと躍起になるのはお門違いなのだ。
私にとっての風呂は湯に浸かる前の段階から始まっている。おおまかな流れは以下の通りである。
風呂嫌いにも様々なタイプが存在するが(濡れるのNGタイプ、ドライヤーアンチタイプなど)、上記の絵を見ていただいてわかる通り私はとにかく風呂に入るまでの足掻きが長い。そもそも座っている状態から立ち上がることが嫌で嫌で仕方がないのだ。服を脱ぐのもダルいし、マスカラは全然クレンジングで落ちないし、風呂から出たら出たでスキンケアしてドライヤーして、ていうかつい24時間前にもこのくだりやったし.....................。そんなことを考えると一気に心に暗雲が立ち込める。...本当に...入りたくない.........。
そして「汝、入浴すべし」という風呂からの無言の圧に屈した頃、身体はすでに泥のように重くグチャグチャになっている。もはや人の形をしているのかも怪しい自分の身体をなけなしの社会性でずるずると引きずり、なんとか浴室へ向かう(前述したように寝落ちすることも多い)。思えば人生ずっと風呂に負けっぱなしである。
しかし、入浴前はこれほどまでに長々と駄々をこねている私だが、風呂に入ってからはなるべく早く決着が付くように努めている。なぜなら、ひとたび水を浴びると「さっさと終わらせて一刻も早くこの場から去らねば」という気になるからだ。そして、入浴後は頭が濡れた状態だと風呂の外に半分風呂を持ち込んでいるみたいで最悪なので爆速で髪を乾かす。
...これが何を意味するかわかるだろうか。
単刀直入に言う。つまり、服を脱いで風呂場に入ってしまえばほぼこちらの勝ちなのだ。風呂VS私の戦いはいつも入浴する前が山場であり、場外乱闘(入浴前の精神的苦痛)で一方的にボコボコにされるのがお決まりのパターンである。
ということは、裏を返せば風呂からの圧力で大ダメージを食らう前に先手で攻撃を仕掛ければこちらにも勝算は十分にあると言えるのではないだろうか。
ーそう、真に私に必要なのは入浴剤でもキャンドルでもない。「自分の身体を風呂場まで誘導する作戦」だ。
以下に私が「VS風呂戦」で勝利を収めるべく試行した己の身体を風呂場まで誘導するための策をいくつか記す。なるべく誰でもできるようなものにしたため、私と同じように風呂が苦手な方々の参考になったら幸いである。
①お風呂入れたねシート
子どものトイレトレーニング用のシールシートがあるんだったら、大人のお風呂入れたねシートがあったっていい。とりあえず10日連続で入浴することを目標にする。成功体験を得るためにも、最初はハードルを低く設定して自分に甘くすることが好ましいだろう。
風呂に入れたらシールを貼る
ついでに目標達成できたら欲しいものを一つ買ってよいこととした。10日間の入浴が確約された瞬間である。
ついでにこのようなものも掲示してみたのだが、
すぐに嫌になったので剥がした。
②友達に応援要請する
とは言っても一人でモチベーションを保つのは難しい。そんな時は友達に応援してもらおう。
しかし毎日友達に応援のカツアゲをしていたら流石にキレられる可能性があるため、よきところで次の作戦に移ろう。
③アイドルパワーを借りる
突然だが、私はアイドル(主にジャニーズ)が好きだ。彼らは頻繁に「胸キュンセリフ(ファンに対して述べる甘い言葉)」なるものを口にしてくれる。そして私はそれについて常々思っていることがある。「オタクの入浴を応援するセリフも頼む...............……!!!!!」と。
そう願ったところでそんなこと言ってくれるわけがないので、
(※ジャニーズなので塗りつぶしでお送りします)
自力でなんとかした。
アイドルの写真の隣に吹き出しを添える。安直な発想だが、好きな人に言われたら「仕方ない、入るか...…」という気持ちになるのも確かだ。ただこのような掲示物というのは往々にして時の流れとともに風景と同化して存在感が薄れるため、効果は長続きしないだろう。
④アイドルになる
アイドルから応援されたら、次は自分がステージに立つアイドルになって応援される番だ。どういうことかと言うとつまり
こういうことである。
これで寝落ちでもした日には大炎上確定だろう。アイドルとして、ファンからの熱い声援には応えたい。脱衣所で円陣を組んで「頑張って行きま~~っしょいッッ!!!!!!!」と気合を入れたくなること間違いなしだ。
ちなみにカメラのレンズを黒い布で半分隠してステージの端からシャッターを切ると
「出番前に舞台袖からこっそりファンの様子を伺うアイドル」の視点が撮れる。
ここまで読んだ風呂嫌いの皆さんはこう思っただろう。「手間かかりすぎダル~~~~~~~~~~~」「んなことする時間があったら風呂入るし......」と。ご安心あれ。ここからは用意するものを最小限に抑えた策を提案していく。
⑤立つ
立とう。帰宅しても座らずに、立つのだ。風呂に入るまで座らないという制約を己に課そう。これで立ったままツイッターなどを始めてしまうと「風呂の待機列に並ぶ人」みたいになるが、その列は自分が風呂に入らない限り永遠に続くのでさっさと諦めて入浴するのが吉である。
「絶対に座らない!!!!!」という強い意志が必要だが、己の身一つで簡単に出来るので実現可能な環境にいる人は是非やってみてほしい。
⑥タイマーを使う
「いや、家に帰ったら座るし」「先にご飯食べたいんだけど...」という人は、帰宅即「この時間までに風呂に入るぞ」という時間にアラームが鳴るように設定したタイマーを脱衣所(風呂場)に投げ込もう。アラームが鳴るまでは風呂のことは忘れて存分に他のことをする。だが、ひとたびアラームが鳴ったら風呂場まで走る。あくまでも「風呂に入るため」ではなく「アラームを止めるため」に走ることがコツである。「アラームを止めに来たけど、丁度風呂に入りたい時間に風呂場に来てしまったな......タハハ………」という状況を作り上げるのだ。
⑦腕に書く
帰宅したらまず顔や腕などに己への誓いを書く。そうすると鏡や腕を見る度に風呂のことを思い出して最悪なので、必ずやこの文言を消すべく風呂に入る必要が発生する。
肌にはあまり良くない気がするのでご注意ください
さて、ここからは「家に着いてから小細工なんてできるわけないだろ」という人のために、帰宅中に伏線を仕掛ける作戦を提案していく。
⑧走る
帰り道で走ろう。転んだり攣ったりしない程度に走ろう。自宅に着く数十m前からでもいい、とにかく走るのだ。走って、その勢いで風呂場まで駆け込む。
バカかよとかもしれないが、この作戦はかなり効果的だ。全力で走ると風呂場へ転がり込む勢いがつく他に、(私は日頃全く運動をしないため)ちょっと走っただけでもの凄く運動した気分になる。すると一丁前に「運動したしシャワーでも浴びるか~」などと思うのである。
高跳びや槍投げなどのスポーツにおいて好成績を出すために助走が重要な役割を担っているように、入浴を成功させるための助走もまた有効性が高いと言える。
風呂に入るためには、このくらいの大胆さも時には必要だ。
⑨アイスを買う
ダッシュで帰ったらベッドにダイブしてしまいそうで怖い...と言う人もいるだろう。そういう場合はアイスを買ってダッシュで帰ろう。家に着いたらアイスを持って風呂場に駆け込み、服を脱ぎ、脱衣所でアイスを食べる。走って帰ってきたため、身体は熱を帯びており、最初の3口くらいは意気揚々と食べられるだろう。しかし、そこからが辛い。冷たい塊を全て胃に押し込めた頃には、身体はすっかり冷え切っている。しかも服も着ていない(さっき脱いだから)。そして数十cm先には風呂がある。…………もう、入るしかないのだ。
身体に対するダメージは大きいが、私はこの方法で100%入浴に成功している。この「ガンダアイス戦法」は私の一押しでもあるので是非やってみてほしい。しかし、実行する度に風呂に対する憎しみが増幅しているので頻度は控えた方が良いかもしれない。
⑩寝る
いやだいやだと言いつつも、人と会う前は必ず風呂に入っている。これは私が社会人だからでも、ましてや大人だからでもない。私がマジでめちゃくちゃ偉いからだ。私がたまたまめちゃくちゃ偉いから、私と風呂の関係は成立している。
声を大にして風呂嫌いに伝えたい。ジタバタうじうじしながらも結局はちゃんと風呂に入っているあなたはすごい。
これだけ科学が進歩した現代で、どうしてこうも毎日毎日風呂に入らねばならぬのか納得いかなくてイライラする日もあるだろう。職場から家まで帰還できたのに、ソファから風呂までは辿り着けなくて、横になったまま行き倒れる日もあるだろう。そういう日は「今日はもう無理だな」と割り切り、きっぱりと諦めて寝てもいいのではないだろうか。だって、なんと言ってもあなたには「なんやかんや言ってめっちゃいっぱい風呂に入ってる」という生まれてから今までコツコツと積み上げてきた実績がある。
一体人生で通算何回風呂に入ったのだろう。きっとうんざりするほど入っている。そしてこれからもずっと入り続けるのだ。
...…できる。必ず入浴できる。明日の朝冷や汗を垂らしながら大慌てで風呂に入って爆速で出勤・登校(絶対間に合う)する未来が私には確かに見える。
きっと大丈夫。過去の自分と明日の自分を信じて、今日はもう寝よう。
どうだろう、参考になりそうなものはあっただろうか。
あまり無責任なことは言うべきではないかもしれないが、それでもやはり私は全国の風呂苦手人間たちに「大丈夫、きっと入浴できますよ」と伝えたいのだ。風呂に入ることは当たり前ではない。紛れもない日々の努力があってのものである。あなたがほぼ毎日自分に対して下しているであろう「風呂に入る」という英断、これは称えられるべきことなのだ。
あと、「なんか今日無理😭(涙)」は正当な理由なので、なんか無理な日はなんか無理のまま寝て良いと私は思う(その時はメイクを落として歯を磨けたら最高である)。
…さて、私はというと、あの手この手で自分のケツを叩きながら風呂強化週間を終え、
無事「10日間連続で入浴」の目標を達成することに成功した。
よって、当初立てた自分との約束通り今一番欲しいものを購入した。是非皆さんにも見ていただきたい。
くす玉である。小学生の時に初めてその存在を知った日からずっと憧れていた。しかし、最近になってやっと「自分の人生ってくす玉を割るチャンスが回ってくる感じじゃないかも...…」ということに気付いたので、自主的に買った。
これでくす玉割り放題である。もし今後突然くす玉割りを依頼されても完璧な「割り」を披露できるだろう。
この状態でも十分魅力的だが、あまりにも煌々と光り輝きすぎていて一向に部屋に馴染まないため少しアレンジを施し、
LUSHのバスボムにした。
では、最後にこのLUSHのバスボムのくす玉を割って締めさせていただきます。
いきますよ〜〜〜〜〜
せ〜〜〜〜〜〜〜の
風呂場で寝るの禁止(死ぬから)。