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それでも、もう一度起業するしかない、人を信じるしかない

 かつて、僕は起業に失敗した。それは、もちろん代表取締役であった僕の失敗そのものなのだけれど、究極的なところ何に失敗したのかといえば「人を上手に使うことが出来なかった」この一事に尽きる。当時僕は26歳で、人は話せばわかると思っていたし、払ったお金の分だけ働いてくれると信じていた。そんな人間が会社を大きくしたのだ、どんな形であれ事業破綻以外の未来があり得たはずもない。あれから10年経って、僕は36歳になった。あの経験について、「失敗して当然」だと感じるくらいの時間が過ぎた。 

 30歳を過ぎてから現在に至るまで、僕の仕事における方針は「自分で全てやる」の一語に要約出来る。文章を書くこの仕事を選んだ理由も(機会がたまたまやってきたからというのも大きな理由だけれど…)、「独りでやれるから」だった。もちろん、これは厳密にいえば事実と異なる。物書きだって、書籍を書くなら担当編集者がつくし、デザイナーさんやイラストレーターさんとの共同作業も必要になる。でも、おおよそのところをいえばやはり作家というのは孤独な仕事で、それは「他人なんか信用するから痛い目にあうのだ」と心に決めていた僕にとって心地よい働き方ではあった。不動産営業もやはりそうだ。一定の協力はするけれど、やはりあれも心地よい孤独とともにあれる素晴らしい職業だと思う。

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