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豚のやわらか蒸し、低温調理機の次に行くために、あるいはご家庭で今すぐできる蒸しの極意

 表紙画像、わりと謎ですよね。

 これは、水を張った大鍋の上に「写真で見たら良さそうだったけど、届いてみたらちょっとアレだった分厚い陶器の皿」をスポっとセットしたものです。このメーカーはトップブランドを追いかけ、必死で「良い青」を出そうと頑張っているのが愛おしいのですが、セールで叩き売られていただけあって料理を盛るにはちょっとキツい。でも、しっかり厚みがあり陶器としては良い。そんなわけで、彼には今後調理器具として活躍していただくことになりました。熱伝導が悪いので下からスチームで加熱すればゆっくり温度があげられるし、慣れれば60度や70度といったビビットな温度コントロールができます。土鍋の進化形、あるいは原始的なスチームコンベクションです。

鍋に皿をハメただけ

 数年前、低温調理機が驚くべき速さでご家庭に普及した時期がありました。あれによって、「ステーキはまず表面を焼いて肉汁を閉じ込める」みたいな迷信は消滅しましたし、人々は「火入れ」にこだわるようになった気がします。肉は60度台で十分「火が入っている」ことを多くの人が知る機会となったエポックメイキングと呼ぶべき出来事でした。実際、低温調理機はめちゃめちゃ便利です。特にイベントで100人前を越す料理を独りで作らなければならない時なんかに、彼らは大活躍してくれました。一方で、「温度を1度単位で調整できる」利点を持つ代償として、多くの欠点を抱え込まざるを得ない調理器具だったことも否定できません。

 一番大きい欠点は、「食材の密封が必要」だということ。当然ですが、加熱すれば食材からさまざまなものが揮発していきます。「魚のアラスープが臭ければボコボコに炊け」なんて秘伝もありますが(本当です。魚のアラを丁寧に掃除なんてしなくていいです、ボッコボコに沸かして煮詰めれば大体飛んでいきます)、低温調理機はまさしくその逆を行く調理。真空パックで閉じ込めて加熱すれば、食材の臭みは全て残ることになります(これは「香りが飛ばない」利点にもなるんですけどね)。そういうわけで、「真空低温調理した豚肉」は火入れジャストを簡単に実現するものの、いうほどウマいもんじゃありませんでした。表面に藁焼きの香りをつけるとか、あるいは味噌ダレをかけるなどの「臭み消し」をしなければあれは結構キツい。なので、みんな仕上げに炙ってましたね。

 そしてもう一つ。低温調理機は場所を取ります。正直、「晩飯のおかずを作る」ためにわざわざ低温調理機を出してくるなんて誰もやりたくないでしょう。あと、真空パックもマジかったるい。本日の料理のように、「1センチ厚にカットした豚肉をジャストに火入れしたい」時はどうすればいいか、しかも食材の香りをほどよく残し余計なものは吹っ飛ばしてしまうベストな形で…。どうしたら…。

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  そこでこう!!(断言)「あー、ハイハイ全部わかった」って人はここで終わって大丈夫です。これ、超便利なんですよ。

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