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そうだ、カモ焼こう

 素早く用意できるちょっとしたご馳走、そういうものがいくつかあると人生が豊かになる気がする。例えば、急に誰かが家にやってきて「こんなもんしかないけど」と謙遜しつつ作れたらサマになる、そういう料理。でも、実際問題としてそういう料理は難しいですよね。美味しくて珍しい料理というのは当然の帰結として飲食店のそれに近いものが要求されるし、そういう料理は往々にして仕込みの手数が必要で、そんな材料を冷蔵庫に常備しておくわけにもいかない。「素早く用意できるちょっとしたご馳走」には少なくとも下記三点の要素が必要になってきます。

・材料の保存が効く(少なくとも数か月くらい)
・思い立ったらすぐ作れて、それほど手数も食わない
・ちょっとプロっぽい雰囲気が出てうれしい

 この三つを同時に満たす素材として、カモを冷凍庫に入れておくのはとてもオススメ出来ます。どんなカモかはお好みに任せるけれど、個人的にオススメしやすいのは冷凍のマグレ鴨。これはフォアグラを取ったあとに残るカモ本体の方で、楽天とかで調べると「ちょっといいお値段だけど、外食で食べるのを考えたらお安い」くらいの値段で売ってます。たまに仕入れを間違った業者がまとめて吐き出して値崩れを起こしていたりしてうれしい。冷凍保存で半年くらいは軽く保つので、とりあえず冷凍庫に転がしておくといざというときにとても便利。味わいとしては、「赤身肉が大好き」みたいな人の要望からはちょっと外れるけれど、たっぷりした脂とフォアグラの風味があって、「酒のつまみやちょっと豪華な晩飯に最適」という感じ。国産の良い鴨は焼き加減をトチったら食えたものではないけれど、マグレ鴨ならワイン片手に適当に焼いてもそこそこ美味くなる。そういう意味でオススメ出来ます。

マグレ鴨にしては脂が少ない方かもしれない

 それじゃあ、カモの調理に入っていきましょう。もちろん冷蔵庫で12時間くらいかけてゆっくり解凍した方が味はいいけれど、突発料理にそんな時間があるわけがないので、これは電子レンジの「解凍」で芯がなくなる程度まで解凍したものです。これがマグレ鴨の良いところ。それこそ、60度くらいのお湯に投げ込んで無理やり解凍しても、それほど味が落ちません。

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