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負けるために戦わなければならないこと


 みんなもう読んだだろうけれど「ルックバック」は本当にすごかった。いや「チェンソーマン」の時点ですっげえなぁとは思っていたけれど、「ルックバック」はまさしくある種の時代を決定づけた一作だと感じた。かつて、たぶん小学生か中学生の頃"EDEN 〜It's an Endless World!〜"を読んだ時に感じたものと同じ。本当に優れた表現は予言性を帯び、同時に歴史を包括する。EDENも読んだことのない方は是非読んでみて欲しい。1巻だけでいい(どうせ全部読むことになるだろう)。現在読むからこそ、その予言的かつ歴史的な(ウィルス、AI、ドラッグ、セクシャルマイノリティ…)すごみは理解しやすいはずだ。

 「ルックバック」もまさしくそういった作品だった。「詩は歴史性に垂直に立つ」、足穂の言葉だったと思うのだけれど原典を忘れてしまって、僕は実にしばしば大事な言葉の原典を忘れてしまう。カニを連れて散歩した詩人はネルヴァルだったな、そういえば。正確に言えばエビというかロブスターだったけれど。ロブスターは寡黙な上に海の神秘を知っているから散歩のお供に最適だそうだ。「間違った群れからは石を投げられて去りなさい」は誰の言葉だっただろう? まあいい、中島らもだってカニとエビを間違ったんだ。僕だって聖書とドストエフスキーくらい間違うだろう。

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