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丘の上のキチガイ病院、高い窓、そして救いのこと

 子どもの頃、閉鎖病棟に放り込まれたことがある。それはまぁ、僕に大きな問題が色々あったということで、その措置について特に不満はない。あの頃の僕は誰がどう見ても加療を必要としていたし、閉鎖病棟がそんなに悪い環境だとも思わなかった。いや、とてもいい環境だったと思う。人生で一番安らかな時間がそこにあったと言ってもいいかもしれない。

 その病院に入る前は大学病院の小児科に入院していた。そこは躁鬱病なんて生ぬるい病気で入院しているのは僕だけというありさまで、一か月ちょっとの間に同室の子どもが二人いなくなった。たぶん、退院できたわけではないだろう。怖くて確認は出来なかった、昨日までポケモンの話をしていた幼い隣人は不意にいなくなってしまった。そうしたことが二度も起きると、僕の精神はむしろ悪化に向かっていった。今思えば当たり前だ。

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