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にしんを漬ける、いずしは漬けない。
地元が嫌だ、二度と戻りたくない。その気持ちに嘘偽りはないのだけれど、こと食い物に関してだけは「確かに北海道の食い物はうまかったな」と思うことがある。もちろん、東京の食べ物も沖縄の食べ物も美味しいし、僕はわりと世界中どこへ行っても食に困ったことはないのだけれど、たまに「北海道の食い物はうまかったな」と思い出すことが、ないとは言えない。みんなでパチスロに勝った帰りにいつも食べていたあの回転ずしとか、明け方まで開いているので重宝した飲み屋とか、そういうもののことを時々思い出す。
「身欠きニシン」は煮つけて食べるものだということを、僕は東京に来るまで知らなかった。蕎麦屋で「にしん蕎麦」を見る機会があっただろうとは思うのだけれど、まったく記憶にない。なにしろ、釧路なんかの例外はあるとしても(あのあたりはそば粉の一大産地なので名物の蕎麦がある)基本的に北海道は蕎麦もうどんもあまり美味しくない土地なのだ。
代わりにといってはなんだけれど、ラーメンとかスープカレーみたいな名物がある。札幌で食ったラーメンは大体うまかったな、と今でも思い出す店が何軒もある一方で、「お、この店はなかなか美味いじゃないか」と思った店が、3か月もしたら「テナント募集中」になっていたりもした。みんな車で移動するので「人気店の独り勝ち」が起きやすい土地なのだ。逆に、流行っている店は「駐車場が足りない」ことに悩んでいたりもした。まぁ、そんなわけでどこにでも土地柄というものはあり、馴染みのない食べ物も出て来る。それが僕にとって「身欠きニシン」だった。
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