「これが福田でしょ」
各社一面が新幹線で勢揃いするのはわかっていた。
未来永劫、残る紙面の一面。
「どうしたら福田を出せるんだろう」
1年間ずっと考えてきました。どう表現したら、福井の未来を感じさせる一枚になるのだろうか。
外せないのは、午前6時11分敦賀発一番列車「かがやき」。
そして、敦賀駅、旧駅、敦賀市街地を含めた敦賀の風景。
この四つで未来をイメージさせる一枚。こんなことができるのだろうか。
兎に角、現地取材繰り返すしかない。敦賀詣が始まった。
一年かけて見つけた撮影ポイント。
地元の人から「御山」と呼ばれている深山。森の中を登ることほぼ直登の急登を30分。そこは突然現れる。
遮るものは何もない。眼下に敦賀市内が広がっている。遠く野坂山、敦賀半島、気比松原まで臨む。
敦賀駅から続く新幹線の線路が向かってくる。
「此処しかない。あとは未来をどう表現するかだ」
この時即座に浮かんだのはヘッドライト。夜明け前の薄暗い敦賀市内を〝旅立つ〟一番列車の〝かがやき〟
で未来を表そう。
一番列車の出発と同時刻に、何度も何度も急登を繰り返す。走る新幹線はいない。イメージ撮影するしかなかった。
最後に3月15日最終確認。99.9%仕事は終わった。あとは当日シャッターを押すだけの0.1%の作業を残すのみ。
そして臨んだ同16日午前6時11分、2キロ先の敦賀駅からヘッドライトを輝かせてゆっくり出発する敦賀発東京行き一番列車「かがやき502号」がファインダーの中に確認した。
一年間準備してきた自信がシャッターを押す指の力を抜いてくれた。
「まだだ」
一番ヘッドライトが輝く位置。
「ここだ」
すっと少しだけ指に力を入れた。
わずがコンマ何秒かの仕事が終わった。
「これが福田でしょ」
4月いっぱいで43年の報道カメラマン人生のにピリオドを打つ。
3月17付日刊県民福井一面に記された「福田正美撮影」。50年、100年、200年後…未来永劫残ることになる。
これでやっと、カメラを置くことができる。