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人生の転落を招いた、学生麻雀大会

大学時代の話にさかのぼる。携帯が鳴る。

池戸「S也さん、来週の土日ひまやろ。麻雀大会出ようや」

おれ「おー池戸。いいよ」

当時、最寄駅から二つ移動した駅前にウェルカムがあった。そこでは毎年、学生限定で麻雀大会が開催される。

その麻雀大会はソロではなく、ペア出場が必須条件だった。

池戸は俺より一年早く生まれた人間らしく、大学内では一応「先輩」の立ち位置になるらしかったが、特に尊敬すべき点はないことから呼び捨てにしていた。それを察したのか、彼は俺を"さん付け"で呼んでいる。そういう謙虚な面だけは評価していた。

それにしても、彼は相当友達がいなかったんだろう。大して仲良くもない後輩の俺を誘ってきたのだから。ちなみにノータイムでOKの返事を出した。俺も友達がいなかった。

さて、大会当日を迎える。

大会のルールはいたってシンプルだ。4人打ちの東南戦(10-20)を、ペアそれぞれが3回行う、というもの。ただし3回戦目だけは馬が倍(20-40)になる。合計得点の一番高いペアが優勝となる。赤3のアリアリのオーソドックスルールだ。※ペア同士で同卓することはない。

優勝賞品は、なんと「1ヶ月間、フリーとセットのゲーム代が"タダ"券」

麻雀打ちにとって常につきまとう死活問題「場代」が解消される、魔法のチケット。たぶん人によっては、海外ペア旅行券よりも優れた景品である。

(これは優勝するしかない..)

だがその意気込みは空ぶるがごとく、池戸も俺も、1回戦目2回戦目ともに逆連対。参加総数は確か15チームくらいだったが、2回戦が終わる時点で10位ほどに位置していた。

「これは目なしだな..」と二人で肩を落としながらも、しぶしぶ3回戦目に出場する。しかしここで面白いことが起きる。

「3回戦目が始まる段階でトップに君臨しているペア」と、それぞれが直対になったのだ。つまり池戸の卓と俺の卓、それぞれに現状トップ目の人間がいる状況。

ーーーやつらをラスに落とし、俺らがトップを取れれば、あるいはーーー。

そして3回戦目がスタート。気がつけば俺は8万点を持っていた。噴きが吹き荒れていた。他の卓がぽつぽつとゲーム終了し始めてきている中、こちらはまだ東3局。俺の親番続行中だった。

その波に乗るように、池戸もトップで終了した模様。

「S也さん、あとは任せたで」と肩に手を置かれる。汚い手で触られたことは置いといて、一応、彼も最低限の役目を果たし先輩としてのメンツは保てたということか。そうして、猛攻を続ける俺の闘牌を後ろから見ることに。

ギャラリーが徐々に増え、余計に増す緊張感。どんなに金がかかっている麻雀よりも、あの時の高揚を超えるシーンはいまだに現れていない。

さて、道中、6巡目にこんな手が入った。

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「リーチ」

(いつまで手が入っているんだ..)と言わんばかりの表情をする他3名。

一発目のツモは7p。裏も乗って8000オール。

その後も手が入り続け、10万点超えでゲーム終了。2位と圧倒的な差をつけて優勝を果たした。

ーーーーーー

「乾杯!」

帰りに池戸と祝杯を交わす。麻雀後の飲みの名目が「反省会」ではなく「祝勝会」だったのは後にも先にもこれが初めてだった。※常に刺さり続けている。

池戸「それにしてもS也さんのあの、見逃しからのパツヅモは見事やったな」

おれ「見逃し?」

池戸「あれ、見逃しじゃないん?」

どうやら俺は、リーチ後にあがり牌を見逃した局面があったらしい。詳しく聞くと、前述した7pパツヅモの局面の話だった。

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このリーチ後、実は手詰まった下家から一発で9pが出てたという。

恐ろしいことに俺は、この待ちが「7p単騎」のみだと思っていたのだ。


「まぁでも、形に弱くたって結局勝っちまうんだからなぁー!噴きの前には誰も抗えないっていう話よ!」

このように、大した努力もせずに栄光を勝ち取ってしまった成功体験をいつまでも引きずり、ろくに勉強もせず麻雀を打ち続けると、以下のような結果を招く。どうか気を付けて欲しい。

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お財布の中身がたりんちゅしていて死にそうです