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地雷原でタップダンスを踊ったクラブ

まずは冷静に事象を書いてくださっているちょっつさんに感謝。必読なnoteです。

1.避けられない地雷原

残念ながら広島の資金力は大きくはありません。広島市近郊は100万人都市と言うポテンシャルがありますが今年のJリーグの観客数は17位と低迷しています。ユニフォームスポンサーも同じユニフォームの鹿島・浦和が両肩に存在しますが、広島は片側にしかありません。

この様な状況でユニフォームサプライヤー料は大きなものであることは容易に想像できます。またナイキは世界的な大企業であり、他の契約しているクラブと比べると広島は小さいクラブであると言わざるを得ません。世界的なビッグクラブに比べて吹いて飛ぶようなチームが大きく重視されることはないと考えられます。その様な立場でナイキの提案する案件を容易に蹴り悪い印象を与えてしまうことは難しく思われます。

またスタジアムの建設に対して政治的な配慮を行う必要もあると思います。強化部長が広島愛と答えていたり、新社長の仙田氏の会見で広島出身をアピールしたり広島と言う単語を前面に出しているのも関係があるのかもしれません。あまり大きな企業ともめることはしたくないのかもしれません。

これらのことから今回の地雷が明らかに埋まっている2ndユニフォームにクラブが大手を振って反対することは難しかったと想像します。

2.赤の採用理由の説明

広島で赤バスと言えば広島バスですね。(画像は公式ホームページより)

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広島で赤のスポーツチームと言えばメイプルレッズですね。(画像は公式ページより)

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嘘です。広島で赤のスポーツチームと言えばカープが強いです。流石にコカ・コーラレッドスパークスまで入れると天丼なのでやめておきました。

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まず最初に断っておきますが、自分はカープも応援しています。なのでカープが嫌いだから赤を使うなと言う立場ではありません。その上で赤の説明にスポーツチームとして被るカープをなぜ使ったのだと言う思いが強く残ります。

広島としてチームなどを使わずに赤を示すのならばモミジがあったはずです(広島県は県の木はモミジ)。秋のモミジは鮮やかな赤に色づきます。黄色などもありますが、古くから色として紅葉色と言う鮮やかな赤を示す語句に付けられるほど赤のイメージがある存在です。(画像は宮島紅葉谷公園のホームページより)

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こじつけと言う人やカープへのあこがれ隠しと心無いことをいう人も居るでしょうが、直接的にカープと名前を挙げるよりかは広島であることを示せたと思います。

3.コラボを甘く見ていた?

コラボに関して言えばクラブは昨年の長崎とのピースマッチでのユニフォームが成功したことで、他のクラブとコラボのコンセプトが同じであれば大丈夫と判断したのかもしれません。(欲しかったなこのユニフォーム…)

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このコラボが成功したのは「両チームのデザインコンセプトを損ねていない」「両都市が平和を願うのに同じ理由を掲げられる」と誰も傷つけることもない上に互いのアイデンティティが重なり合うことが大きかったはずです。

一方で今回の五輪コラボではどのクラブに対しても日の丸イメージのデザインとして共通でユニフォームを提供しています。五輪なので日本を盛り上げたいとして日の丸がデザインコンセプトは良いと思います。どうやらナイキはブラジルW杯の際にブラジル国内のチームのユニフォームをブラジル代表を元とした経験があるようです。しかしあくまでもクラブのユニフォームである以上はクラブも五輪を盛り上げようとしている形にするべきだと思います。拝見したブラジルW杯ユニフォームにはその意図を感じましたが、今回のユニフォームではそれを感じません。

他の2チームはクラブカラーと説明できました。しかし前記の通りサンフレッチェは赤を採用した説明で用いられた理由がカープでした。このユニフォームには都市としての広島やサンフレッチェとしてのアイデンティティがないのです。更に言えばカープの名前を出したのならばカープを巻き込んでやるべきですし、巻き込んでいたのなら同時に話を出せるように詰めておくべきでした。色々な方面で甘すぎると言わざるを得ません。

4.最後に

今回の件は各々が共感するクラブのアイデンティティを毀損してしまったことで多くのサポーターの怒りが爆発した形だと考えています。前記の通り地雷原に足を踏み入れなければならないことはユニフォームを決定する今年の夏頃には確定していたことになりますが、短いながらも時間があったのにおざなりな対応であったと思います。

J-CASTがどの様な取材を行ったかや内容がどれくらい正しいかは自分にはわかりませんが、記事の中で出た「赤に対する嫌悪感」や「心配する声は多少はあった」などの認識であったのならクラブの内側と外側での価値観に大きな差が生まれていると考えます。炎上直後なので理由を分析する時間などもなく回答を行うことは簡単ではないでしょう。しかし「ここまで温度差があったとは」などはクラブとサポーターの意識の差を明確に見せつける形になってしまい爆弾を投げる形になってしまいました。

サポーターはクラブのアイデンティティや方針に共感して、商店に並んでいる同質の量販品よりも高いグッズなどを買ったりスタジアムへ足を運ぶわけです。下のセリフの情報がアイデンティティであり共感ではないかと主張します。

ヤツらはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!
出典:ラーメン発見伝 第一巻 芹沢達也のセリフ

退任した山本氏の「試合ではなくてスタンドを見ろ」と言う発言は、スタジアムで落ちている情報を見つけろと言うことを示していたのならば正鵠を得ていると思います。そこを軽視していることが観客の伸び悩みの要因の一つだと考えています。

年明けにサポーターズカンファレンスが開催されますが、その場やそれ以前にクラブにはもう一度自分たちの全てのアイデンティティの再認識とそれに沿った方針の宣言を行って欲しいものです。

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