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ずっと意思がなかった僕が法人化を決意するまで

気づけばフリーランス6年目、会社を作ることにした。

色々な人に支えられながら密度の濃い時間を過ごし、無事にフリーランス6年目に突入。意気揚々と独立した直後に詐欺・軟禁に遭い、600万円の借金をかぶったのが前世かそこらの記憶のよう。

出鼻こそ挫かれたが、その後5年間、大変なことはありながらも周囲に恵まれ、多くのプロジェクトに関わりながら個人事業を継続してきた。このままフリーランスでぬるぬるやっていくのも悪くはないが、それじゃなんだか面白くない……。とはいえ、「法人化したところで何か変わるのか?」という疑問は拭えず、数年が経過していた。

そんなある日、大尊敬するビジネスパートナーと僕と僕のパートナーの3人で食事をする機会があった。その食事中に、大尊敬するビジネスパートナー(我々2人にとって頭が上がらない存在なので”神”と呼んでいる)がこんな事を口にする。

「一緒に会社作ったら?」

まさに鶴の一声、ならぬ神の一声。これを機に、現実は大きく動き始めた。

これまでの僕

23歳で独立して以来、これまでの僕は、自分の持つ強みやスキルを元に様々なプロジェクトに参画する形でスキル&キャリアアップを重ね、同時に仕事の幅を広げていった。最初はコピーライターとしてライティング案件を請負い、その内にとある会社の社長に声を掛けてもらい、専属プロモーターとして企画、プロジェクトの動かし方、プロモーションの回し方などを学び身に付けた。その後は、東京に拠点を構えるセミナー・コンサルティング会社のマーケティングチームメンバー&マーケティング講師となり、マーケティングの基礎から実務、少人数のマネジメントなど多くのことを経験させてもらった。

ほぼ専属での働きを2社で経験した僕は、自分1人で働くよりもチームで何かを成すことに魅力を感じるようになっていた。とはいえ、組織に専属で関わる働き方は向かないと感じた僕は、フリーランスとして無所属な働き方をする道を選ぶようになる。プロモーション代行、セミナー・研修などのプロデュース、マーケ人材の育成、マーケティングチームのマネジメント、新サービス販売のディレクション、超ニッチ事業のプロデュース、コラボでコミュニティ構築など、それまでに身に付けたスキルや実績を元に、更に自分の可能性を広げてくれそうな仕事を次々に引き受ける。ありがたいことにこれらの仕事のほとんどは、それまでに繋がった人たちがご縁で運んできてくれたものだった。

1つの仕事がまた次の仕事を呼ぶ。順調にスキルや実績、キャリアを重ねていく内に、周囲の人たちから「会社にしといた方がいいよ」と言われるようにはなっていた。だけど、具体的なことは考えずに先延ばしにして、何か形にしたいことがある人の応援をずっと続けてきた。そして個人〜小規模事業に必要な工程のほとんどのことができるゼネラリスト、ディレクターとしての立場が作られた今、少しだけ法人化を意識するようにはなってきた。けれどまさか、パートナーと一緒に会社を作る提案をもらうとは。

パートナーとの協働

僕のパートナーもフリーランスで仕事をしており、これまでに一緒に仕事をする機会も何度かあった。そしてそれらの仕事を通じて、パートナーと僕の仕事上の役割の相性の良さも感じていた。

例えば、僕は企画やコンセプトを生み出すことが得意だが、認知拡大やプロモーションはそんなに得意じゃない。対してパートナーは何かを作ることにはそこまで興味を示さないが、プロモーションは息を吸って吐くようにやりきってしまうし結果も自然とついてくる。優れたコンセプトとプロモーションがかけ合わされば、それぞれの得意に相乗効果をもたらすことができることは想像に難くない。

また、僕は構想など大枠を作ることは得意だが、細部までの調整は得意じゃない。対してパートナーは構想にはそこまで強くないが、バックオフィスの効率化、マニュアル作りなど微調整もさらっとできてしまう。僕にとって細かくてしんどいところが苦にならないようだ。正直意味が分からない。

そしてもう一つ。僕はその人そのものの魅力を価値に置き換えるなど”コト”には強いが”感情”や”想い”には強くない。というか、人の感情に簡単に振り回されるくらい感情そのものが得意ではない。対してパートナーは想いを汲み取る力とそれを表現する力がかなり強い。

考えれば考えるほど、僕とパートナーの2人で会社を立ち上げることは悪くない案だと思った。パートナーと一緒にやれるのは(能力的な面でも心理的な面でも)心強いし、中々自分のためだけには頑張れない僕に火がつく要因にもなる。結局、その食事会の場では結論は出さなかったが、その後パートナーと話合った結果、タイミングを見計らって2人で法人化を進めることが決定した。決まれば後は進めるだけなので、早速、法人化するための手続きを税理士さんや司法書士さんにお願いし、7月の登記に向けて本格的に準備を開始した。

せっかく法人化するなら、これまで個人で届く範囲だけに留めてきた活動とは違って、積極的に社会にメッセージを発信していきたい。そのためにはWEBサイトがあった方が便利だし、これまでにもWEBサイトがないことで機会損失した場面があったので、パートナーが紹介してくれたデザイナーの方にWEB制作をお願いすることにした。そして、僕はその制作の過程でこれまでとこれからのことを深く考えることになる。

社会への意思表示

僕がしてきた仕事については先ほど少し触れたが、事業についてはぬるぬるやってきた自覚がある。その時の市場や時代の状況に合わせて自分の中で最適だと思える道を選択し、柔軟に働き方を変えるスタイルを取ってきた。自力で何かを構想するよりも、誰かの想いを形にするべく様々なジャンルの仕事に足を踏み入れ、それぞれの場所で必要とされる業務を担っていた。形にとらわれず、どんな形にもなれる。そんな自分の働き方に「スライムキャリア」と名前をつけていたこともある。それはそれでフリーランスとして生きていくにはとても便利だったのだけど、この働き方だけじゃ物足りない。

しかし、僕には意思がなかった。

僕はWEBサイトを作るということは一つの社会への意思表示だと思っているのだが、その意思をこれまで持ったことがなかったのだ。もちろん、どんな事業を作りたいかを本気で考えたこともなかった。だからこそ、スライムのようにクライアントやプロジェクトに合わせて自分を柔軟に変化対応させて仕事を継続させて来れた事実もある。けれどこれを機に、初めて本気で「自分の事業」をどうするか考えた。

自分が世に打ち出していきたい価値は何か?成果貢献できるものは何か?僕自身の価値観は?どんな人(企業)の力になりたいのか?それらに内包されている社会的メッセージは何か?

尊敬できるビジネスパートナーたちからも意見をもらい、パートナーとも対話を繰り返す中で、思いのほか構想はどんどん膨らんだ。そして、僕はあることに気づく。

”見る世界を変えなければいけない”

フリーランスでぬるぬるやっているときは常にプレイヤー目線で目の前の仕事に向かっていればよかったが、これからはプロデューサー、そして経営者としてより俯瞰して世界を捉えながら事業を構築していく必要がある。これまでの活動の中で、僕は自分一人である程度のことはこなせるようになっていたのだが、それでは結局個人の延長。事業がスケールすることはないということも、この段階で初めて腑に落ちた。これからは一人ではなく、信頼できる人たちと繋がって事業を構築していくんだ。

社名はEXSENSE

それに合わせて社名も検討した。僕とパートナーを象徴するキーワードをいくつか集めて、最終的に決めた社名はEXSENSE(エクスセンスと読む)。これから僕らが作る会社は、非言語の感覚、感性などの目に見えない領域を可視化・表現することで、事業の価値を高めるプロデュース会社だ。僕とパートナー、2人のあり方をそのまま表現した形。

"非言語の感覚、感性などの目に見えない領域を可視化・表現することで、事業の価値を高める"

このテーマを選んだ理由は、今の時代、多くの人が"機能的に役に立つもの"よりも"意味があるもの"を求めるようになり、意味があるものの価値が上がっていることが背景にある。僕はこれから先はしばらく、機能的に役立つものよりもユーザーに意味をもたらすことできるものが世の中のスタンダードになると予想しているが、そうなると、ヒトやモノのリブランディングの重要性が増してくるはずだ。そんな状況の中で、僕自身がヒトやモノの"再定義"を得意としているということもあり、このテーマを選んだ。

便利で役に立つものは確かに僕たちの生活を豊かにしてくれるが、”役に立つもの”は”それよりも役に立つ新たなもの”が生まれた日から価値が損なわれていってしまう。これには携帯電話の変遷が分かりやすく、軽くてハイスペックなスマホが溢れる中でショルダーフォン(もはや知らない人も多いだろう)を持ち運びたい人はほぼいない。ショルダーフォンは発売当時は革命的商品だったかもしれないが、大流行を起こすことなく淘汰されてしまった。また、最新のスマホですら1年も立てばよりハイスペックな商品が現れるので、1つの商品がロングセラーになることはない。このような事例はその他の市場でも多く起こっている。

機能的に役立つものを否定するつもりはない。しかし今は世の中が圧倒的なスピードで進化しているので、仮に新たに役立つものを生み出したとしても、すぐにそれよりも役立つものが登場し、終わりのない競争が続くばかり。そしてその競争に負けてしまったが最後、淘汰されるしか道はなくなるのだ。

「そんな土俵で勝負するビジネスに意味はあるのか?」と問うた時、少なくとも僕たちがやるべきことではないだろうと考えた。それよりも僕たちは、人の心に刺さり続ける意味があるものを生み出していきたい。

その意味を生み出す根源となるのがSENSE(非言語の感性・感覚・意思などの目に見えない領域)であり、その意味をEX=外に出す→表現することで、競争に巻き込まれず消費されにくい新たな価値を生み出せると僕たちは信じている。

さいごに

社会的には法人化自体は大したことはないことかもしれない。そしてEXSENSEの事業はまだこれから始まるところで、現実は追いついてきていない。だけど僕は法人化をきっかけに、これまで向き合ってこなかった世界に足を踏み入れることができた。

「SENSEを表現し、それを形にしていく世界。」

これを掲げEXSENSEは、僕は、社会に打って出る。

意思を持たなかった男の一大決心。

未来がどうなるかは分からないけれど、この意思こそが、僕に新しい未来を運んできてくれるだろう。

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