見出し画像

「左翼運動と性自認至上主義」に関して紹介します。-イギリス共産党が変わった&森田成也氏の紹介-


イギリス共産党

1、ことここに至ってからですが、イギリス共産党は先日、性自認主義が性別(セックス)と、時代や地域で変わるジェンダーとを混同していることの危険性を指摘し、正常化への道を支持する声明を出しました。(後半でその声明の「要約と結論」の部分の仮訳を紹介します。)

https://www.communistparty.org.uk/the-gender-recognition-bill-and-equality-law/

2、このことの意義については、森田成也氏(大学非常勤講師、マルクス経済学、翻訳家)が丁寧に論述されているので、それも紹介します。

https://www.facebook.com/seiya.morita.758/posts/738551624584572

---------------
イギリス共産党がトランスイデオロギーに反対して女性の権利の擁護を訴える声明を出したことを受けて、ブレンダン・オニールは「なぜ資本主義はトランスジェンダリズムを愛するのか」という記事を発表した。

https://www.spiked-online.com/.../why-capitalism-loves.../

オニールはこの記事で、皮肉たっぷりに、左翼の仮面をかぶっているトランスイデオロギーが実際には資本主義、とりわけ新自由主義と実に相性がよく、現代の左翼たちが、大企業や国家権力と一体になってトランス旗やレインボー旗を振り回していることを取り上げている。

男は女になれないという生物学的真理を言っただけで「ファシスト」だの「ナチス」だのという恐ろしい称号をちょうだいするのが、現代のいかれた欧米社会だが(日本では「統一教会」と言われる)、イギリス共産党がトランスジェンダリズムを批判する側に回ったことで、この真理を言うものには「スターリニスト」というもう一つの恐ろしい称号が付け加わった。

しかし、実際に、女性の集会を襲ったり、高齢者を殴りつけたり、学校に侵入してアサルトライフルで無実の人々を何人も撃ち殺したりしているのは、トランスイデオロギーに染まった連中である。彼らの所業こそ、これらの称号にふさわしい。そして彼らはツイッターで、「ターフを強制収容所に送れ」とか「ターフをガス室送りにしろ」と言っている。どちらが、ナチスやスターリンに近いかは明らかだろう。
---------------

なお、森田氏が新社会党の機関紙『週刊新社会』2023年2月15日号に寄稿した文章も、本人の許可を取ったうえで、ここに併せて紹介しておきます。

森田成也「トランスジェンダー問題に関する少数意見」

 現在、トランスジェンダー問題をめぐって、左派の中で深刻な対立が生じている。多数派の側は、「性自認」(生物学的性別とは別に、自分をどの性別だと認識するか)は「人権」であり、他者の性自認をその自認の通りに受け入れ、そう扱い、法律や制度もそれに沿ったものにするべきだと主張している。現行の性同一性障害特例法においては、戸籍上の性別を変更するためには、専門的な医師による診断のうえで、生殖腺を切除し、外性器を異性に似せることが必要だとする「手術要件」が存在している。ほとんどすべての野党はこの手術要件を人権侵害だとして、その撤廃を主張している。
 もう一方の少数派は、まったく異なる立場に立つ。性別とは生物学的・客観的に決定されたものであり、「性自認」は主観的なものにすぎず、その「自認」が正しいかどうかを科学的に判定する手段は今のところない。そうした状況の下で、特例法から手術要件を撤廃すれば、それを悪用する男たちは後を絶たないだろうし、それは生得的女性の人権と安全を深刻に脅かすと主張する。
 多数派はこの少数派の意見を、保守派と同じだと言い、とくに最近では「統一協会と同じ」だと言うことで、少数派の意見を封じようとしている。また、野党の機関紙誌でも、『朝日』『毎日』『東京』などのリベラル系メディアでも、多数派の見解だけが掲載され、少数派の意見は「トランス差別」扱いされ、いっさい掲載されない。
 ほとんどの人は、トランスジェンダーとは、小さい頃から強い性別違和と身体違和に苦しんで、異性の身体になろうとしている性同一性障害の人々のことだと思い込んでいる。しかし、実際には、「トランスジェンダー」というのはアンブレラターム(包括用語)であり、その中には、性別違和はあっても身体違和のない人や、女性の格好をしたり女性の身体的特徴を自己の身体に再現することに性的興奮や満足感を覚えるオートガイネフィリア(自己女性化性愛)の人も含まれる。そしてその多くは女性を性愛の対象としている。こういう人々がペニスを備えたまま法的に「女性」になれば、生得的女性の人権と安全が脅かされるのは明らかであり、実際、すでに手術要件を撤廃した諸国では、深刻な問題が生じている。
 性犯罪者が、「自分の性自認は女性だ」と主張して、しばしば女性刑務所に移送され、そこで再びレイプや性虐待を犯した事件があいついで起きている。トイレや更衣室に、明らかに男性に見える人が入っていても、問題にできなくなっている(問題にした側が差別者と非難される)。テストステロン値を下げただけの男性が女性スポーツに参入し、女性の記録を塗り替えて、メダルを獲得している事例も多数存在する。二年前、自民党の山谷えり子参院議員がこの事実をメディアに語ると、いっせいに差別だとしてバッシングされたが、右派が語ろうが、左派が語ろうが、それが事実であることに変わりはない。
 そもそも、客観的に存在する構造的な差別と抑圧が、自認によってトランスできるというのは、危険な考えである。たとえば、白人として生まれ育った人が、自分の心は「黒人」だと主張し、黒人を自認したら、黒人として扱うべきだろうか。ましてや、その「トランス黒人」は、黒人として生まれ育った人よりも少数派だから、より差別され抑圧されたグループだと言えるだろうか。誰もがそれはナンセンスで不当だと思うだろう。だが、まさにそういうことが女性に対してなされているのである。
 被抑圧集団としての女性の権利を守るためには、少なくとも、特例法の手術要件を堅持しなければならない。その上で、女性の権利とトランスジェンダーの権利とが両立しうるような方策が模索されなければならない。そのためには、一方の意見を「差別」だとレッテル貼りして封じるような態度は厳に慎まれるべきである。諸外国の事例に学び、最大の当事者たる女性たちの声に耳を傾け、民主主義的な討論を通じて解決策が探られるべきだ。


 ---------------

イギリス共産党宣言


イギリス共産党の下記ホームページから。
https://www.communistparty.org.uk/the-gender-recognition-bill-and-equality-law/
この声明の「要約と結論」部分の仮訳

In summary and conclusion
要約と結論

The UK government’s veto of the GRR (Scotland) Bill was entirely predictable. The real issue here is self-ID and the impact of legislating for it.
If the aim of this Bill was to make the lives of trans people easier then it has not only been a failure; it is also proving to be counter- productive.

 イギリス政府が、スコットランドで可決されたジェンダー承認法(GRR)に拒否権を発動することは完全に予測可能なものだった。ここでの本当の問題は、セルフIDとその法制化がもたらす影響である。同法の目的がトランスの人々の生活をより快適なものにすることであったとするなら、それは単に失敗であっただけではない。それは、逆効果であることが証明されている。

Anyone gaining a GRC under this Bill would have no certainty about the rights it confers. This is because of the fundamentally flawed approach taken by the Scottish government which, among other things, has meant that specific measures in its Bill have not won broad public support.

 同法のもとでジェンダー認証(GRC)を取得した者に、どのような権利が与えられるかはまったく不明確だ。これは、スコットランド政府がとった根本的に欠陥のあるアプローチのためであり、とりわけ、同法の特定の措置が幅広い国民の支持を得ていないことを意味している。

The real innovation of this Bill is to legislate for the self-ID of someone’s legal sex, embedding self-declared ‘gender identity’ in law. But when pursued to the exclusion of such considerations as the sex-based rights of women, and the fragmentation of equality legislation across Britain, it undermines the drive to build unity within and between the working class and the oppressed and disadvantaged groups in our society.

 同法の真に画期的な点は、国民の法的性別に関する完全なセルフID制を法制化し、その人の自称する「ジェンダー・アイデンティティ」を法律に盛り込んだことだ。しかし、生物学的性別に基づく女性の権利(sex-based rights of women)のような重要な懸念事項が排除されたり、英国全体の平等法が〔スコットランドとそれ以外とで〕分断される事態を招くならば、それは労働者階級と、抑圧され不利な立場にあるグループとの間およびそれぞれの内部における団結を構築しようとする努力が台無しになってしまう。

The Communist Party is the only political party with a coherent political analysis of sex and gender. Gender as an ideological construct should not be confused or conflated with the material reality of biological sex. Gender is the vehicle through which misogyny is enacted and normalised. Gender identity ideology is well- suited to the needs of the capitalist class, focusing as it does on individual as opposed to collective rights, enabling and supporting the super-exploitation of women.

 われわれ英国共産党は、性別(sex)とジェンダーに関する首尾一貫した政治的分析を有する唯一の政党である。イデオロギー的構築物としてのジェンダーは、生物学的性別の物質的現実と混同されたり、いっしょくたにされたりしてはならない。ジェンダーとは、それを通じてミソジニーが発動され正常化される手段である。t資本家階級のニーズによく適しており、集団的権利ではなく個人的権利に焦点を当て、女性の超過搾取を可能にし、それを支えている。

For these reasons, the Communist Party rejects gender self-ID as the basis for sex- based entitlements in law to women’s single-sex rights, spaces and facilities. The Party will continue to oppose any proposed legislation $2013 whether at Scottish, Welsh or British level $2013 that seeks to enact such a provision. We call for ‘sex’ as a protected characteristic under the 2010 Equality Act to be defined as ‘biological sex’.

 これらの理由から、共産党は、ジェンダー・セルフIDを、女性向けの権利や女性専用スペース・施設に対する法律上のアクセス権の基礎とすることを拒否する。党は、スコットランド、ウェールズ、グレートブリテンのいずれのレベルであっても、そのような条項を制定しようとする法案に反対し続ける。われわれは、2010年の平等法のもとで保護されている特性としての「性別」を「生物学的性別」として定義することを求める。

At the same time, Communists are clear that efforts must continue to improve the resourcing of the current system for transgender people to access services and to transition legally, not just in Scotland but across Britain. Together with the defence and improvement of women’s sex-based services and facilities, this is part of the broader struggle for democratic rights, social justice and socialism.

 同時に、共産党は、トランスジェンダーの人々がスコットランドだけでなく英国全土で必要なサービスにアクセスし、法的に性別移行するための現在のシステムのリソースを改善する努力が継続されなければならないとする立場を明確にしている。生物学的性別に基づく女性のサービスと施設を擁護しそれを改善することと併せて、これは民主主義的権利、社会正義、社会主義のためのより広範な闘争の一部である。

🏡noteの TOPページへ戻る
https://note.com/sws_jp
🏠「女性スペースを守る会」サイトへ戻る
https://womens-space.jp

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?