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ニューヨークタイムズからJ.K.ローリング擁護記事が出ました(日本語訳を掲載)

 2023年2月16日、ニューヨークタイムズで、トランス活動家・アライから苛烈なバッシングを受けてきた『ハリー・ポッター』原作者のJ.K.ローリング氏を擁護する記事が出ました。

 ローリング氏は2019年に、マヤ・フォーステイター氏が「生物学的性別は変えられない」という趣旨のツイートをして職場を解雇されたことに抗議して連帯したことから「トランス差別者」のレッテルを貼られ、多くのトランス活動家・アライから苛烈なバッシングや、バッシングという言葉では収まらない酷い迫害を受けてきました。
-殺害予告やレイプ予告などの脅迫、住所の暴露、『ハリー・ポッター』記念イベントから排除されるなど-
 しかしローリング氏を擁護する声も徐々に出るようになり、ついにニューヨークタイムズも擁護記事を出すに至りました。

 ニューヨークタイムズは、部数は米国の2大全国紙のUSAトゥデイ(227.8万部)ウォール・ストリート・ジャーナル(206.2万部)の半分程度ですが、ワシントン・ポストと並び著名、地方紙でありながらも米国を代表するメディアであり、リベラルな論調とされています。LGBTについても肯定的で、なんと2020年にはローリング氏をバッシングする広告さえ出していました。

「Liannaは作者のいないハリー・ポッターを想像している」と書かれたNYT広告

 また、ハフポストのLGBTQコラムニストであるEJロゼッタも、2022年11月23日、ローリング氏に対して、「集団思考、洗脳、批判的思考、自分で調べたり考えたりすることよりも、LGBT仲間の声を疑うことなく聞くこと。JKが埋もれている間、私はうなずきながら5年間を過ごしてきた、そのことを謝りたい。」と語りました。
https://www.foxnews.com/media/huffpost-writer-defends-jk-rowling-no-evidence-transphobic-quotes-burning-wrong-witch

 さて、以下は、ニューヨークタイムズ記事の翻訳ツイートをされていたMasaru様にお願いし、当会note掲載用に加筆修正をして頂いた日本語訳です。
 皆様、是非ともお読みください!

J.K.ローリングを擁護する
(日本語訳)


by Pamela Paul


「トランスの人たちは保護に値する」「トランスを自認する人のほとんどは他人の脅威には全くならないだけではなく、弱い立場にある」「どんな生き方であっても真に自分らしく、安心できる人生を全てのトランスが生きる権利を尊重している」「男に虐待されてきたトランス女性たちには共感と連帯感しか覚えない」


『ハリー・ポッター』シリーズの著者で人権活動家、そして――騒々しいインターネット上の過激派や影響力あるトランス活動家やLGBTQ団体によればトランス差別者――J.K.ローリングによってこの声明は書かれた。


ローリングの熱烈なファンの多くでさえ彼女を非難した。2020年、最大の『ハリー・ポッター』のファンサイトの一つLeaky Cauldronは、ローリングが「トランスであることについての、有害かつ反証された信条」を推進したと主張し、彼女の写真や文の引用を避けるとメンバーに告げた。


他の批判者は書店に彼女の本を撤去するよう求め、いくつかの書店は従った。言葉による攻撃や住所特定、性暴力や殺害予告を含む身体的暴力の脅しにも彼女は晒されてきた。


来週開始されるポッドキャストシリーズ、『J.K.ローリングの魔女裁判』のために行われた希少なインタビューで彼女は自身の経験を語っている。「直接的な暴力の脅しを受けてきたし、子供と暮らす家に押しかけられてきたし、住所をネットで晒されてきた」。


ローリングに対するこのキャンペーンは危険であり、同じくらいバカげてもいる。昨年夏に起こったサルマン・ラシュディへの残虐な刺傷事件は、作家が悪魔化されるとき何が起こり得るかを否応なく思い出させた。ローリングに関しては、トランス差別者という括りは実際の彼女の考えと一致しない。


ならどうして誰もが彼女を非難するのか?ローリング自身にいくらかの問題があるはずだと思うかもしれない。


答えは単純だ。
彼女はDVシェルターや女性刑務所など生物学的女性専用のスペースを持つ権利を主張してきたからだ。
人の法的ジェンダーを決定するにはself-IDは不十分だと主張してきたからだ。
生物学的な女性の言い換えとして使われる「月経のある人」という言葉に疑義を表明してきたからだ。
トランス活動家から攻撃に遭った時には彼女自身と、脱トランス、フェミニスト学者含む他者を擁護してきたからだ。
トランスジェンダーについて煽情的なコメントをしたレズビアン・フェミニストのマグダレン・バーンズをtwitterでフォローし、その活動のいくつかを称賛したからだ。


あなたはこうしたローリングの考えや行いには同意できない――あるいは強く反対――するかもしれない。蔓延するトランスへの暴力を思えば、声高なトランス活動家に反する意見を公表することは脆弱な人々に対する敵意を悪化させると考えるかもしれない。


しかしローリングはトランス差別的なことは何も言っていない。彼女は性別不合の存在に異議を唱えてはいない。証拠に基づく治療と医療のもとで性別移行が認められていることに反対したことは一度もない。トランスジェンダーの賃金や住居の平等を否定していない。彼女がトランスジェンダーを「危険にさらしている」という証拠はなく、彼らが存在する権利を否定しているわけでもない。


彼女のかつての批判者の一人を例にしよう。以前ローリングをトランスフォビアだと非難したジャーナリストのE.J.ロゼッタは、昨年 『J.K.ローリングによる20のトランス差別発言』という記事を書くよう依頼された。12週間の調査の後、ロゼッタは 「真にトランスフォビックなメッセージは一つも見つからなかった」と書いている。そして「人々は間違った魔女を燃やしている」と宣言した。


私もロバート・ガルブレイスというペンネームで書かれた犯罪小説を含め、ローリングの本をすべて読んだが何の証拠も得られなかった。ガルブレイスの小説にはトランスジェンダーのキャラクターが登場し、別の小説では殺人者が時折女に変装する。言うまでもなく、これを偏見の証拠と見なすのはよっぽどの人間でないと無理だろう。


ローリングとその作品がイデオローグから非難されるのは初めてではない。『ハリー・ポッター」シリーズは何年もの間、アメリカで最も発禁にされた本の一つだった。多くのキリスト教徒はこの本が魔術や魔法を肯定的に描いていることを非難し、ローリングを異端者と呼ぶ者もいた。ウェストボロ・バプティスト教会の元信徒で『アンフォロー」の著者であるミーガン・フェルプス=ローパーは子供のころ「ハリー・ポッター」を愛していた。しかし過激さと偏見で悪名高い教会信者の家庭で育ったために、ローリングはゲイの権利の擁護者だから地獄に落ちると信じるように教えられたと語る。


フェルプス=ローパーは、時間をかけて自分の偏見を見つめ直した。彼女は現在、『J.K.ローリングの魔女裁判」の司会を務めている。このポッドキャストはローリングとの9時間に及ぶインタビューに基づいている。ローリングが自身の主張についてこれだけ長く語ったのは初めてだ。この番組は、はぐれ者であることの美徳、敵に対する共感力、友人に対する忠誠心を包含する作品群にもかかわらず、なぜローリングがこれだけ幅広い中傷にさらされてきたのかを探っている。


これにはローリングを批判する人々のインタビューも収録されており、ジェンダー・イデオロギーと呼ばれる特定の主張、たとえばトランス女性は事実上いかなる法的、社会的状況においても生物学的女性と区別されずに扱われるべきであるという考え方になぜローリングが異議を唱えてきたのかを掘り下げている。彼女のファンと最も激しい批判者の両方が、なぜ攻撃されると知りながらわざわざそんな立場を取るのかと問いかける。


「よくあるのは『あなたは金持ちだ。セキュリティ費を賄える。沈黙させられてなんてない』というもの。全部事実だけど的外れだと思う。私を脅し黙らせようとする企ては同じような考えを持ち、声を上げたがっている他の女性たちへの威嚇になるから」と、ローリングは語る。


「威嚇として使われているのを見てきたからこそ発言している」とローリングは続ける。他の女性たちも警告を受けたと彼女に言ってきたという。「J.K.Rがどうなったか見なよ。あなたも気を付けてよ」と。


例えば最近、レズビアンでありフェミニストでもあるスコットランド国民党の議員ジョアンナ・チェリーは、トランス女性としてたった3ヶ月生活すれば性別違和の診断を必要とせず、申告だけで女性であることを法的に証明できる「self-ID」法のスコットランドでの可決に公に疑問を投げかけた。彼女は職場でのいじめや殺害予告に直面し、国会での最前列議員連から外されたことも報告した。「この議論に参加することを恐れている人もいると思う。発言すればトランスフォビアの烙印を押されることが多いから」とチェリーは言う。


ローリングの率直さは、まさにこうした目的のためにあるのだとフェルプス=ローパーは言った。「多くの人がローリングは自分の特権を利用して弱い立場の人を攻撃していると考えている。しかし、彼女は弱者の権利のために立ち上がっていると考えている」。


発言することは責任であり義務だとローリングは考えているとフェルペス=ローパーは言う。「他の人が声を上げられずに自己検閲していることに彼女は気づいている。でも正直でなければならないと感じ、権威主義的な戦術を使用していると彼女が考える運動に対して立ち向かった」。


ローリング自身がポッドキャストで指摘しているように、彼女は「最初の1ページ目から、いじめや権威主義的な行動は人間の悪の中でも最悪のものの一つ」とする本を書いている。ローリングが批判者に対して殴りかかっていると非難する人々は、ジェンダー正教を批判した人たちが被った失業や中傷、身体的安全への脅威を避けるために沈黙してきた人々のために彼女が立ち上がっているという事実を無視している。


SNSはこうした攻撃を増幅するために活用される。これはフェルプス=ローパーがウェストボロ教会での経験からも認識している戦略だ。「私たちは自分たちが最も注目されるなら何であれのめり込み、信条を最も過激で攻撃的に表現することが多かった」と彼女は振り返る。


フェルプス=ローパーと並んで、志を同じくする何人かのクリエイターも――たいていは富による保護や雇用主からの強力な支援がある人たちではあるが――ついに勇気を奮い始めているのは潮流が変わる兆しかもしれない。ここ数ヶ月、ローリング作品のおかげでキャリアを積んだ若い俳優たちが沈黙を守ってきた後、ヘレナ・ボナム・カーターやレイフ・ファインズといった「ハリー・ポッター」作品の俳優たちが公にその著者を擁護するようになった。


ファインズは「J.K.ローリングは力づけること、子供たちが人として自分を見つけることについて素晴らしい本を書いた。より善良で、より強く、より倫理ある人間になる方法について書いた」と述べる。「彼女に向けられた罵詈雑言は酷い。おぞましい」。


ローリングへの告発となると恥ずかしいほど騙されやすいメディア報道にも関わらず、影響力ある少数のジャーナリストも彼女を擁護し始めている。ここ米国ではThe Atlantic誌のケイトリン・フラナガンが昨年ツイートした。「最後には彼女が正しいことが証明され、信念を貫くために払った高い代償は道義的な人間の選択として見なされるだろう」と。


イギリスでは、リベラルなコラムニスト、ハドリー・フリーマンがガーディアン紙から去った。ガーディアンではローリングへのインタビューが認められなかったという。その後はThe Sunday Timesに入社し、最初のコラムでローリングのフェミニストとしての立場を賞賛した。ガーディアン紙の別のリベラルなコラムニストも同様の理由で辞めた。テレグラフ紙に移った後、彼女とその子供たちをレイプするという脅迫があったにもかかわらず、ローリングを擁護した。


何百万人ものローリングの読者は彼女が悪魔化されていることは間違いなく知らないだろう。とはいえこの告発が「大きな嘘」や「Qアノン」など、他の異様な主張ほど陰湿でしつこいわけではないとは言えない。ローリングの本が好きなのは何か問題がある、彼女の本には「問題がある」、彼女の作品を評価するのは「複雑」だと若者が感じるべきだという種が文化の中に蒔かれている。ここ数週間、「ハリー・ポッター」の新作ゲームをめぐって騒動が起きた。これは非常に残念なことだ。子どもたちは『ハリー・ポッター』を素直に読んで、その教訓に浸ることができるはずだ。


なぜならローリングが実際に言っていることこそが重要だからだ。2016年、PEN/Allen財団文学賞を受賞した時、ローリングはフェミニズムへの支持、そしてトランスの権利についても言及した。彼女が語ったように「批判者は、私が子供たちを悪魔崇拝に改宗させようとしていると主張する自由があるし、私には自分が人間の本質と道徳を探求していると説明する自由もある。あるいはベッドのどっち側から出たか次第で、気まぐれに『お前はバカだ』と言ってもいい」


ローリングはベッドで寝ていることもできた。自分の富とファンダムの世界に避難することもできた。「ハリー・ポッター」の世界ではヒーローは勇気と思いやりに満ちている。登場人物はいじめっ子や、濡れ衣に立ち向かうことを学ぶ。そして世界が自分に敵対していると思われるときでも何が正しいか、自分の信念を貫き通さなければならないことを学ぶ。


蔑まれた人々を擁護するのは簡単ではない。若者にとっては特にそうだ。『ハリー・ポッター』読者なら誰もが知るように、いじめに立ち向かうのは怖い。だから大人が道を示そう。もし多くの人がJ.K.ローリングのために立ち上がるなら、それは彼女のためになるだけではない。人権、特に女性の権利、同性愛者の権利、そしてトランスの権利のために立ち上がることにもなる。それはまた真実のために立ち上がることにもなるのだ。

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