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[寄稿] 「すまた」署名削除問題

2023年11月6日
性暴力被害者の会 代表 郡司真子

包括的性教育の看板で子どもたちに「すまた」を教えているってどういうこと?と、驚くお母さんお父さんは多いだろう。そもそも「すまた」って何だ?私は家族や友人など周囲の10から60代の男女に尋ねてみた。「ええ?何言ってるの?何それ、何の話?」という反応だ。「すまた」を説明できる人はいなかった。なんだか性的なニュアンスがある行為だとは、気づいていても、具体的に何をどうするかは、情報がない状態だった。

◾️署名運動


私が「すまた」という言葉を知ったのは、2022年1月当時のTwitter(現在、Xと呼ばれるSNS)の友人から、【『素股(すまた)』を避妊方法として教えないでください。中高生に人権教育に基づいた性教育を届けてください!】という署名運動をChange.orgで始めたと、連絡があったから。

『素股(すまた)』とは、性風俗店でのサービスの一つだという。私は、性技を拡散したくないので説明は省く。URLも貼付したくない。性産業の性技が「包括的性教育」で教えられていること自体に疑問を感じるからだ。アダルトグッズ販売業者が「包括的性教育」として「安全な素股」情報を提供しているのも欺瞞ではないか。このサイトが開設された当時、有名フェミニストたちが「素股教育」を推奨するツイートを始めたのも、異様な光景に見えた。

「素股教育推奨」の流れに反対の声を上げたのは、性風俗店勤務経験ある女性たちや市井の女性たち、子育て中の母親たちだ。特に、性産業に従事した経験のある女性たちは、実体験をもとに「安全な素股など存在しない」「性産業参加へのハードルを下げるのは危険」「性搾取を助長する」と、抗議の声を上げ共感を広げ、順調に伸びていくように見えた。

ところが、提案者に予告なく、この署名運動は、Change.orgにより、突然、削除された。
署名発起人がなぜ署名が削除されたか、尋ねても明確な説明がなかったという。筆者が取材を申し込んでも企画書の提出を求められ、その後、返事がなかった。

他の署名支援者が問い合わせたところ、残念ながら1番聞きたかった”募集立ち上げ者への警告の有無"の回答はなかったが、Change.orgから以下の回答を得た。

「該当キャンペーンに関して、他のユーザーからの苦情・ルール違反していると複数件通報が届いていることをお知らせします。
これらの苦情は、該当キャンペーンの内容が誤解を招くと指摘しており、キャンペーンで使用された立証が誤っていることを示しています。
参考として、苦情の一部を以下のように提示します:
[当該のキャンペーンサイトにおいて、「性風俗店向けのマニュアルであり、18歳未満の閲覧不適切なものです」とありますがリンク先のページが、性風俗店の営業のためであるとの虚偽が喧伝されています。]
[許可なく⚫️⚫️(包括的性教育サイト)のTwitterの画像が勝手に切り取り使用されていた。]
ならびに、キャンペーンの内容の中で、誤解を招くと特定された箇所を、一部以下の通り提示します:
“中高生向けメディアにも拘わらず、性風俗店向けのマニュアルへのリンクを貼っている”“性風俗店で女性が男性の快楽のためだけに行う『性サービス』を中高生に教えないでください。”

Change.org
はオープンなプラットフォームであり、私たちは言論の自由を尊重し、社会で変化を起こしたいというユーザーの思いが実現できるようにしています。
ただし、コミュニティガイドライン(https://change.org/policies/community)やその他の規約(https://change.org/policies/terms-of-service)を違反する場合には、有害なコンテンツ、誤解を招くような情報の発信を防止するために、米国のポリシーチームにより対策を講じる必要があります。」

◾️回答についての分析


署名を立ち上げた当事者への説明が不十分であり、突然署名が削除されたことに関係者は、かなり困惑していた。

包括的性教育サイトの画像が切り取られたと主張されているが、引用にあたるのではないのか。実際、旧Twitterでのスクショによる引用については、引用と認められた判例がある。https://innoventier.com/archives/2022/11/14321

署名運動を始めた当時、問題コンテンツから容易に性産業のURLに繋がっていた。
署名ページ自体が急に削除されたのは、あまりにも奇妙で、不可解なままだ。

◾️包括的性教育の危険性


包括的性教育と言えば、先進的なイメージがある。現実は、そのきらびやかで善良なイメージとは、かなりの乖離があることに私は最近気づいた。SNS上で人気の包括的性教育絵本には、性風俗のような性技がふんだんに盛り込まれいる。性感染症や妊娠、性依存、性的コンテンツによる性的価値観への影響などへのリスク説明が少ない。2023年に改正された刑法の性犯罪に関わる法令に関する説明や性行為同意についての説明が不十分だ。性技や快楽を幼い子どもに教える加害性の問題は、性暴力被害者のトラウマ治療に関わる専門職からは警鐘が鳴らされている。性暴力被害者や性搾取被害者がそれらを申し入れしたが、一切無視の状態が続いている。

国連、ユネスコそれぞれがお墨付きを与えた包括的性教育は、何だか「良いことをしているはず」と、多くの人は考えるだろう。保護者としては、性に関係するリスク、同意、拒否の方法などを包括的性教育では教えるという印象を持つ人が多いだろう。真っ先に学ぶのかと想像する。その実情は、保護者の期待とは裏腹に、「快楽」「性の多様性」「性技」「自慰の方法」がふんだんに盛り込まれ、性を解放的に楽しむものと捉える内容も多い。代理出産を積極的に利用するカップルのストーリーがカラフルに描写されている一方、代理母や子どもたちが受ける困難やリスクはほとんど説明されていない。幼児期から自慰や性行為の性的快楽を教え、他者に対する警戒心を「差別」で悪いことだと教えこむ教材に溢れている。このままでは、性犯罪に巻き込まれるリスクが高まるのではないだろうか。現在、子どもたちが学校などでアクセスできる包括的性教育に「性依存」や「性的自傷」「性化行動問題」「自他境界線(バウンダリー)侵害」「トラウマの再現」「関係性依存搾取」などについて学ぶ機会がないのは、絶望的だ。マーケティング力ある有名組織が行政にアプローチし、性自認至上主義派の「包括的性教育」が官民協働事業として行われ、子どもの発達段階について何の知識もないLGBT活動家が講師を務めることもある。学校教育の現場で行われる「生命の安全教育」にさえ、「包括的性教育」が組み込まれるという流れまでできている。

◾️包括的性教育の挫折


日本における性教育の自由化は、性教育バブルと呼ばれている。性自認至上主義派による包括的性教育コンテンツが溢れ、関係書籍の出版やイベントが急増している。有名なフェミニストたちがライフワークとして包括的性教育の普及に力を注いでいる。包括的性教育の名のもとにジェンダーイデオロギー、性風俗の要素が盛り込まれた内容が相次ぐ。そんな中、イギリス、アメリカ、カナダなど、包括的性教育先進国では、包括的性教育の問題が明らかになり、反対運動が激化しているのは希望だ。英国のスナク首相は、包括的性教育をやめることを宣言した。https://note.com/fine_macaw88/n/n53304b939abf

スウェーデンでは、思春期ブロッカーの投与が禁止されるようになった。カナダ、アメリカでは、包括的性教育に反対する保護者たちによる抗議行動が活発化している。子ども期にグルーミングされてトランス医療に繋がったが、トランスしたことを悔いてデトランスし、医療機関に訴訟を起こすケース、性転換医療に繋がった子どもの多くが、実は、自閉症であり、適切な療育などの対応を受けられなかった問題も明るみに出た。

◾️日本のメディア問題


包括的性教育の問題は、ほとんど日本の報道機関は扱わない。その上、公共放送であるNHKは、包括的性教育番組を積極的に流し続けている。とうとう内容があまりにも酷いことから、放送中止を求める署名運動まで起きた。なぜ、日本のメディアは、包括的性教育の問題を伝えないのか。あまりにも奇妙な現象だ。

日本では、包括的性教育に反対する母親たちの署名活動が立ち上がりhttps://voice.charity/events/525、世界的街頭運動が2023年10月21日に行われ、日本でも連帯する市井の女性たちのマーチが行われた。これには、LGBT活動家や女性を罵倒する男性たちによる妨害が起きた問題からも、包括的性教育が、女性や子どもの安全や尊厳を脅かす存在であることがわかる。https://www.sankei.com/article/20231021-CARNNUUVPROPZP764SXHTX4AVY/

◾️最後に


包括的性教育の問題を感じる最初のきっかけが私にとっては「すまた」教育反対署名削除問題だった。署名プラットフォームの問題に加え、この事件は、忘れられない。

日本で性技や性的アクティブを刺激する包括的性教育の最大のリスクは、脆弱な子どもたちへの被害だ。日本のアダルトビデオにより、一般的な女性や脆弱な女性子どもが性加害されている現実を見れば、同様の被害が蔓延するのは、あっという間だろう。https://www.nishinippon.co.jp/image/4902/

性加害者治療の専門職も初めてみた性的コンテンツがその人の性的価値観を決定づけると、断言している。https://makog.theletter.jp/posts/cc0134e0-be2f-11ec-b61e-83cf70b32044 性技や性的アクティブを促すような「包括的性教育」は、性搾取へのハードルを下げるためのグルーミングなのではないか、私は危惧している。


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