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生得的性別のほか法的性別を設けることについての当会の考え方

 当会は、一般の女性(レズビアン、バイセクシャル含む)を中心に、「女性スペースを守ること、『性自認』について立ち止まって考え、国民の声を聴くこと」を求めている団体です。賛同者には性的少数者の方も多数おられます。
 私たちは、今日的な女性への差別と不利益は、外見やふるまい(ジェンダー)ではなく、生物学的な性差(セックス)を根拠として社会的に作り出されてきたものであると考えます。

 性別の基本はアイデンティティではなく生得的な身体の違いであり、女性の権利は生得的性差に基づきます。暴力や性被害などの圧倒的被害者となっている女性の身体的・精神的な安全を守るためには、「女性スペース」の確保をはじめとした権利を保障し、「性自認・性同一性ないしジェンダーアイデンティティ」について立ち止まって考えるべきだと訴えています。
 現在争点となっている性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」という)第3条4号の生殖腺要件、5号の外観要件(併せて「手術要件」という)について、これを違憲とし、外すことに反対します。法的な性別が「ジェンダーアイデンティティ」に基づくものに大きく変わると、女性の身体的・精神的な安全が保てなくなるからです。
 現行の「特例法」は、強い身体違和を持つ人の幸福追求権を保障するために一定の役割を果たしており、強い性別違和から性別適合手術を望む方がいること、法的性別と生得的性別に食い違いがあり性別変更している方が既に1万人を超えているという現実の重さを受け止めることが大切だと考えています。
 性同一性障害の方の存在も尊重するとともに、「性別は生得的な性差のみで判断すべきで、特例法自体の廃止を求めるべき」とする意見も私たちは尊重します。

 このような多様な意見が民主主義社会において意味のあるものとなるためには、あらゆる意見や価値観が本質的に等価であると保障される公的な領域で、それぞれが意見を述べ合う必要があります。
 憲法に規定された人権の制約原理である「公共の福祉」は、「一方」の自由・権利ではなく、「双方」の自由・権利が衝突する場面における調整です。そのためには、双方の安全と尊厳を図るための解決策を公正な環境で民主的に議論することこそが求められます。
 私たちは、こうした「あるべき最低限度の『自由』の平等」の達成のための様々なアプローチやプロセスがあることを大切にしながら、そのうえで、ジェンダーアイデンティティについては、女性の人権を阻害しかねない問題を考慮して立ち止まって考えるべきとし、そうした立場から、特例法に基づく「性別適合手術等の要件の廃止」に反対します。

 私たちは、自認する性別に基づく社会的・法的な権利をどこまで認めていくか、あるいは一切認めないのかという議論は、憲法のいう「公共の福祉」のための議論により、社会的合意を得て解決すべきだと考えます。国民的な理解と議論もなく、ジェンダーアイデンティティによる性別へと大転換を図ることは、民主主義のルールを逸脱するものです。
 そのためにも、複数の選択肢を相対的に比較し、それぞれの意見を比べ合い、民主的な合意を積み重ねていくこと、競合する諸原理が生き残るという多様性を認める「民主主義的討議」が重要です。この「合意」とは価値の選択であると同時に、他の価値を排除することにもなるため、あくまで暫定的なものである必要があります。私たちが目指す民主主義とは最終的なゴールを持たない不断の運動ではないでしょうか。
 いま最も必要なことは、公正で民主的に議論できる環境をつくることです。未だに、ジェンダー・クリティカル(ジェンダーアイデンティティに基づく多様な性別があるとする考えに批判的)な立場から声を上げる女性たちに対して「差別主義者」とレッテルを貼り、「手術要件の削除は当然」、「ジェンダーアイデンティティに基づく性別を他の者にも当然に強制できる」、「制度とすべきだ」として議論にさえ応じない勢力があります。民主的な議論を排除して一方の価値観に対するヘイトを煽ることのないよう願います。
 特例法についても、たとえ厳しい批判であっても、同じ社会に生きる市民として尊重しあい、想定される場面ごとの丁寧な議論をすることが重要です。女性や性的少数者双方の福祉の増進のため、暫定的な社会的合意を繰り返していくことが民主主義社会としてあるべき姿ではないでしょうか。

 当会に参加する生得的女性スタッフのなかには、「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」で、ともに手術要件をなくさせないための署名活動をするにあたって、ジェンターアイデンティティに食い違いのある方々とシビアに議論し合う場面もあり、葛藤を抱えつつ活動している者もいます。私たちは、現実の目の前の女性が、一人でも性暴力被害に遭って欲しくないことから、「男性器のある女性が出現」する事態を止めたいと思っています。
 最後に、私たちが設立趣意で想定していた理解増進法は、2021年6月に相応の修正を経て成立しており、今後、第2趣意書というべきものを作ることを検討しています。当面、特例法の手術要件を外すことを止め、そのうえでさらに議論を重ねて、成案としていきたいと考えています。
 「女性スペースを守る」こと、女性が置かれ続けている差別的な現状を踏まえ、「女性」の定義をアイデンティティに還元することは女性の現実を消し去るものであるという立場から、劣後され無視される傾向にある女性の声をしっかりと政治に届け、社会構造的な不平等を是正するために、公正で民主的な社会的合意を求めていく決意を改めて表明いたします。

以 上

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