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無職転生は「なろう系」作品の最高傑作

現在絶賛アニメ放送中の「無職転生~異世界行ったら本気出す~」はもはや界隈以外でも通じる「なろう系」と呼ばれる作品群の初期に生まれた小説であり、同時に異世界転生ものの最高傑作であると私は考えている。今回はこの素晴らしい作品を皆様が「どうせ最近よくあるやつだろ」と見逃してしまうことのないよう、興味を持ってもらいたくて初めて筆を執った。

原作小説は現在も小説家になろうで無料で全公開されており、是非皆さんに読んでもらいたい。アニメもまだ序盤ではあるがアニメーションの作り込み、声優の演技、話のまとめ方、全てのクオリティが素晴らしく、関係者が長年準備を掛けた甲斐のある代物になっている。ファンとしても感無量だ。


わたしが皆様にオススメする理由

この作品が何故「小説家になろう」という玉石混交魑魅魍魎入り混じった巨大な蠱毒の中でトップに立ち、評価されたのか。偶然ではなく様々な理由がある。今回は特に3つのポイントに絞って、皆様にお伝えしたい。

理由その①:親子関係の描写が素晴らしい

この作品は名前の通り「異世界転生もの」というジャンルであり、主人公は現代社会からファンタジーな異世界へと転生して物語が始まる。そして例に漏れず主人公は元の世界においてクズである。30代無職童貞引き篭もりブサイクである。更に言えば死ぬ直前は親の葬式中に自室で自慰に耽り、兄弟姉妹に家を追い出されているような人間だ。

ルーデウス(過去)

そんな主人公は異世界に転生し、美しく賢いルーデウスという少年になる。

ルーデウス(転生後)

だが、ガワは変わっても中身は変わっていない。生まれ変わり新しい環境で心機一転頑張っていくぞと意気込んでいる「クズ」。それが主人公である。

翻ってそんな彼の異世界の父親になったパウロはというと、

パウロ

20代前半イケメン筋骨隆々モテモテ男、そして語弊を恐れずに言えばDQNと言われる類の人間である。ルーデウスが生まれる前も生まれた後もとんでもない問題行動を起こし周囲の人間を巻き込んではトラブルの原因となる。

この2人見てどうですか?相性ヤバそうでしょ?

学校で同じクラスになったら絶対に仲良くなれないこの2人の親子関係、それがこの作品の肝である。異世界転生ものはその世界での主人公の活躍やヒロインの可愛さに力を入れて親子関係をおざなりにしてしまうものが多い中、この作品はそれを見所として練り上げている。

作品序盤中盤この2人の仲にはトラブルが多発する。あまりにも歪な関係だから当然だ。育ってきた世界が違う、性格が違う、得意なことが違う。しかし何より、実は親より子供の方が年上という部分が決定的な異常の原因になっている。息子から見ればムカつく未熟な父親、けれど尊敬できる所もある。父親から見れば出来の良い、けれどどこかおかしな息子。転生ものでしか描けないこの親子関係が生み出す物語がこの作品の大きな魅力の一つだ。

明言は避けるが、この2人にはある共通点があって、それがお互いがお互いに気を許し合える大きな理由となるのだが、それが何かは皆様が実際に作品を鑑賞して確かめてもらいたい。

ルーデウス親子


理由その②:ヒロインがカッコいい

エリス

この作品の全キャラクターの中で圧倒的一番人気なのがこのエリス・ボレアス・グレイラットだ。このキャラの何が凄いのか?実はこのキャラ、いわゆる暴力系ヒロイン。この言葉を見て「うわ……」と思った人も多いだろう。暴力系ヒロインって90年代のラブコメで出てくる古臭いツンデレもどきでしょ?他のまともなヒロインの方が可愛いってなるやつでしょ、と。だが安心してほしい。このヒロインはそんな生っちょろいキャラクターではない。このヒロインを通して描かれる世界、それは本物の暴力

べちん

主人公を殴ればお返しに叩かれる。そんな当たり前だけでなく、

エリス拘束

不利な状況、大人の男、強者に歯向かえば

エリス虐

か弱い少女など容易く蹂躙されてしまうということ。エリスと旧来の暴力系ヒロインとの違い、それは世界がヒロインの都合の良いように出来ていないということ。そんな世界で暴力系ヒロインであるが故に、エリスはだんだん暴力の恐怖というものを知っていく。そしてそんな世界で己を貫くため、誰よりも強さを求めるようになる。主人公と旅を続ける中で無力感に苛まれたり、不幸に躓いたり、周りに助けられたり。大人になるにつれ、彼女は口数少ない、凛とした、強き剣士に成長していく。

戦うエリス

彼女が世界中の強者たちと生死を掛けて戦う様はまるでヒーローのよう。主人公のルーデウスがヒロインに見えてきてしまうぐらいカッコいいのがエリスという女の子だ。ヒロインを可愛く描けている作品は多いが、カッコよく描けている作品は少ない。なにより未熟さやそこからの成長といった描写は主人公の特権になりやすいポイントで、それをヒロインで描けているのがこの作品をオススメできる理由の一つだ。


理由その③:世界の中心が主人公ではない

この作品がなろう系の走りでありながら、いわゆる「なろう系」と揶揄される作品たちと決定的に違う部分。それは世界の冷たさにある。

世界の冷たさ

小説では「ターニングポイント」と題された章で起こる大きなイベントを代表に、無職転生の世界は主人公にはどうしようもない問題が数多く発生する。天変地異、人種差別、強すぎる敵、治る見込みのない難病。この作品、結局主人公は負ける。大切な人は死ぬ。世界は救えない。クズが本気出してもやっぱり駄目でした。あまりにも無情なのがこの無職転生の世界だ。それもそのはず、この世界の主人公は実はルーデウスではないのだ。それがどういうことなのかは重要ではない。しかしその事実こそがこの作品を良作たらしめている。


おわりに

小説第一巻の表紙を見てほしい。描かれているのは主人公の家族たち。この作品が「家族」を大事なテーマにしていることがはっきりと分かるものだ。だからこの作品の終わりは、主人公が異世界転生した意義は、子供だった主人公が親の立場になるところで描かれることになる。

無職転生

無職転生の原作を読んだり、アニメを見て気に入った方は是非、スピンオフである「ジョブレス・オブリージュ」まで読んでほしい。これは同作者が小説家になろうに投稿している作品で、なんとやっぱり親に似たのか無職になってしまったルーデウスの息子、ジークハルトの視点でこの物語世界が、親となったルーデウスが描かれる。そこでの彼の在り方、子供たちからの見られ方は必見だ。そしてルーデウスが息子の問題にどう対処するのか見てほしい。前世のどうしようもないダメな自分、異世界でなんとか努力してやってこられた自分、両方を経験しているからこそ出せるその答えに、わたしは感動した。


書ききれなかったけれどヒロインは他にも師匠のロキシーと弟子のシルフィがいて皆可愛いし、ルイジェルドっていうカッコいい友人も出てくるし最高!漫画も小説で読んだ描写が絵で見れて最高!


無職転生は良いぞ!

https://ncode.syosetu.com/n9669bk/


ジョブレス・オブリージュも良いぞ!

https://ncode.syosetu.com/n9038dg/

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