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日本を再確認できる本 #2

「日本を再確認できる本」の二冊目はまた全然違うベクトルの本です。
日本再確認というか、「こんな人が居たんだ!!」と驚く本ですね。

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「田中清玄自伝」インタビュー大須賀瑞夫

これは友人詩人のtotoのお母さんから「SWING-Oさんに渡して」という形で届いた本です。俺の何を知っていてこの本を届けてくれたのか?そもそも俺はこの「田中清玄」という人を知りもしないのに、、、と驚きから始まりました。でも本との出会いも「縁」だからね。サクッとでも読んでみようと思って手にとってみたら、これがみるみる面白くなり、特に後半は内容に驚きながら読み進める形になりました。まさに「縁」を感じましたね。

この田中清玄(通称たなかせいげん)のプロフィールがまた難しくて、よく言われるのが
政界の黒幕・石油利権屋・フィクサー・怪物・共産党転向者
、、、などなど、とにかく怪しくマイナーなイメージのものばかり。つまり昨今の報道では決して取り上げられないだろう肩書きばかり。そんな人のキャリアをなぜ振り返らなきゃいけないのか?と半信半疑のまま読み進める。

彼のキャリアをリストにするとこうなる
■1906年生まれ
■1927年〜共産党闘士として活躍、書記長などを務めたのち1932年に逮捕
■1934年獄中で共産党を転向、天皇主義者に
■1941年出所ののち禅宗(臨済宗)山本玄峰の元で修行
、、、ここまでは想像ついたが、ここからがすごい
■1945年 昭和天皇への進言、当時の総理への説得などにより終戦(終戦の立役者の一人ということです)
■終戦後は実業家として造船から農業から電気事業からデパートまであらゆる活動をしていく
■60年代以降は更に海外へと手を広げ、その交友関係の豪華さがすごい
オットー大公(オーストリアはハプスブルグ家、のちのEUになるヨーロッパ共同体を推進していた)
経済学者フリードリヒハイエク教授(ノーベル賞受賞)
インドネシア・スハルト大統領
中華人民共和国の2代目書記長、鄧小平
、、、などなど枚挙にいとまがない

そして氏が成し遂げた〜やろうとしたことは例えば下記
■1970年代半ばの石油ショック時に独自のルート開拓で中東・インドネシアのルートを確保
■北海油田の開発にも関わる
→いずれもアメリカに振り回されるのを回避するため
■鄧小平、スハルト大統領らとアジア連盟〜東アジア共同体を作るために尽力
■山口組田岡会長と組んで麻薬追放運動をしたが別な暴力団に阻止された

いやぁ、、、やってきたことのスケールが逐一大きくてビックリの連続。それでいながらも好感が持てるのは、氏の信念と筋の通し方が素敵なのだ。そもそも金儲けを全く意識していない。日本が欧米列強に振り回されないようにするためであり、戦争にならないようにするためであり、そのためにも「アジア連盟」を作ることを夢としていた。氏の言葉を紹介すると

「科学的な手段が全てを救えるというのは、西洋文明の幻想に過ぎない。これに対しアジアは二元論、多神論の世界であり、一人の人間にも仏の顔と夜叉の両面があるように、異なるものとの共存が根本にある。アジアは多様性にこそその最大の特徴を持っている」

ここにも出てきました。そう、前回紹介した松岡正剛の本にも出てきた「二項対立ではなく二項同体」(清沢満之)と同じ視点だよね。そこがいい。

一方1957-60年の総理である岸信介とは相容れない仲で、その理由が石油から何から選挙資金のために事業化されていたりとか私利私欲が激しいからだと言う。そして「日本の政治家が海外から舐められる理由」についても「人付き合いが表層的だからだ」と言う。実際総理在任中こそ海外の重要人物との親交をアピールしていても、退任してもその親交を続けてる人がどれだけいるか?を見れば確かにだね。岸信介の孫である安倍晋三氏は今でもトランプとやり取りしてるだろうか?を想像してみると分かりやすいかも(笑)。その点田中清玄は一度仲良くなった上記のような人たちとは長きに渡って親睦を深めていて、海外の重要人物はまず総理や外務省ではなく氏に会いに来る人も多かったと言う。日本の政治がダメな理由もそこらへんなんだろうな。

でもそう言う、どれだけ日本の中で権力を持っている人だとしても「信用の置けない人物」と思うと容赦しない性格だったものだから、日本の表の歴史からは抹殺されがちなんだ、ということも分かるけどね。

いやぁ、、、田中清玄、ちょっと説明しきれないほど色々すごい動きをしてきた方、かつたった今のメディアで取り上げにくい方なのが勿体無いなぁ。こう言うまさに「明確なビジョンを持っているやり手」な方は今こそ日本に必要な人なんだけどねぇ。もし欧米なら絶対映画の素材になるような人だよ。映画以上にすごすぎるキャリアだけれど、いつか映画になるといいなと思ってみたりする読後感です。

なんにしてもこの本を、田中清玄と言う人を教えてくれたtotoのお母さん、ありがとうございますm(_ _)m
このレビューを見て少しでも田中清玄に興味を持つ人がいてくれると幸いですね。

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日本の戦後の政治がダメな理由をちゃんと知っておきたければ
この本も一つの指標になると思います
戦後の日本の政治史は、アメリカの圧力史&アメリカ追従史でもあると言う話です

「戦後日本史の正体」孫崎亨 著
https://jazzmaffia.exblog.jp/19467831/

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