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Soulful Strut 物語

 1969年の大ヒット曲"Soulful Strut"(全米ポップチャート3位)にまつわる物語を話そう。なにせこの曲はそのアーティストYoung-Holt Unlimited自身が一切関わっていないのに、代表曲となるほどの大ヒットをしてしまった。そこから始まるあれやこれを踏まえたバージョンを #45trio 名義で先日レコードと配信で発表したので、それの解説にもなっていきます。背景を知って聴くとまた聴こえ方が違ってくるよ、て話です。



"Soulful Strut" Young-Holt Unlimited (1968release)

 まずは聴いてみましょう。タイトルやアーティスト名こそ知らなかったとしても聴いたことのある方も多いと思います。数多のカバーもあるしね。リリース順で言うとこれが世界初出です(1968年11月)。そして年が明けてから全米のポップチャートで3位にまで上がる大ヒット。カナダでは1位に!こういうインスト曲がラジオや街中でかかりまくってる時代ってだけで涎が出ちゃいますね。

"Am I The Same Girl" Barbara Acklin (1969)

 そして翌1969年にリリースされた歌ものバージョンがこちらです。残念ながらインストほどは売れませんでした(R&B 33位/ ポップチャート79位)。ただ、のちに歌もの自体のカバーも多く誕生しました。その代表が #SwingOutSister でしょう。かく言う自分もこのカバーバージョンでこの曲の存在を知りましたからね。

 普通ならこれで物語は終わりです。インスト曲が売れて、その歌ものカバーも追うようにリリースされたがそれはさほど売れなかった。それくらいに思ってましたが、事実は異なっていたのです。

実は"Soulful Strut"はYoung-Holt Unlimitedの演奏ではなかった

 のちに色々深く調べたり、書籍を読んだりしていてその事実を知りました。そもそもは歌ものの"Am I The Same Girl"が先にレコーディングされていたようです。そしてレーベル #Brunswick のプロデューサー #CarlDavis の思いつきで、ピアニストの #FloydMorris を使ったインストバージョンを"Soulful Strut"というタイトルをつけ、同じレーベルの中堅アーティスト Young-Holt Unlimitedの名前をつけてリリースしてみたらよもやの大ヒット!になったと。

Wikipediaにも記してあります

 恐ろしい話ですよね。ピアニストのクレジットはされてないし、何よりそのアーティストYoung-Holt Unlimitedは一切演奏に関わっていない。ただ、同じレーベルのアーティストなので、同じスタジオを使っていたというのもあるんでしょう、音質的にはそんなに遠くはない、あり得る範囲に仕上がっている。にしても自分が関わっていないのに自分の名義にされた曲が、これまでで一番の大ヒットになったという状況、周囲からもさぞ「おめでとう!」と言われたことでしょう。その気分たるやいかなるものだったか?

"Young And Holtful" の誕生(1969)

 その気分、というかその怒りが生んだ曲が、この1969年にシングル発売され、このアルバムにも収録されている曲"Young And Holtful"でしょう。

 まるで"Soulful Strut"のパクリです。作家クレジットも本人たちになっています。ここで想像されるのが
「あんな曲が大ヒットするなら、俺らだって簡単に作れるさ!」
と思って作ったのではないか?と。

 普通にいい曲なんですが、その結果は?というと、全くヒットせずでした。そして彼らは1974年にはバンド(といってもリズム隊2人のユニットですが)は解散してしまうのでした。

手前味噌ですが、 #45trio バージョンはこうなってます

 そしてSWING-O率いる45trioとしてこの曲をカバーすることになった際にまずやろうと思ったのが

◼︎A面を歌バージョン "Am I The Same Girl"
◼︎B面をインストの"Soulful Strut"

あと、箇所箇所に上記の"Young And Holtful"のベースラインを入れてみよう!と。そして更にこの #Jackson5 のコーラスも少し引用してみよう!と思いつきました。

ちなみにこのネタは1988年のHip Hopアーティスト #TallDarkAndHondsome のタイトル曲にも使われています。

、、、というなかなかに重層的な引用とオマージュを形に仕上げたのがこちらです。"Am I The Same Girl"はボーカルに #鈴木桃子 #小田玲子 from #CosaNostra のお二人を迎え、桃子さんの希望もあり、Swing Out Sisterのバージョンを参考にしてます。そう、原曲にはないブリッジがあるのです。

 そしてB面のインストバージョンはピアノではなく、Organで攻めてみました。これも新鮮じゃないかな?と。

 ある種の関係者には悪しき思い出となってしまっている曲かもしれない訳ですが、なんにしても曲自体の素晴らしさは間違いない。それをただカバーするだけじゃなく、どれだけの歴史をこの4分に詰め込むか?という形でまとめてみました。50年以上前の曲を、これがきっかけでまた次の数十年に受け渡せるといいなという思いですね。気に入っていただけたら幸いです。レコードも絶賛発売中ですよw



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