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Wonder Stevie! こんな本があったとは!

先日古本でひょっこり見つけて驚いた!
こんな本があったとは!
しかも"Songs In The Key Of Life"(1976) リリース直前までの半生の記録とある。これが800円!これは買うでしょ!

そしたら中に織り込んであったプレイボーイの記事(これは1980年ごろの物と思われる)も面白くて、、、

、、、てことで読んでみたら非常に読みやすく、かつ濃厚な内容だったので、早速レビューしておきます

Stevie Wonder ~わが半生の記録(冷たい鏡の中に生きて)」
三浦憲 編・著

著者のあとがきが1976年夏、出版が1977年1月とあるので、"Songs In The Key Of Life"が1976年9月にリリースなので著者もまだそのアルバムの全貌が知らない中記された本ということになる。そもそも #三浦憲 って誰なんだろう?古いレコードのレビューなどでも見かけない名前だ。

筆者(左)とスティービーとその仲間たち

三浦憲(みうらけん) 1943年生まれ

ミュージックライフ勤務後、音楽評論生活に入る。現在、半年ごとに海外で生活しながら取材執筆活動をしている。

とある。俺が残念ながらあまり触れてこなかったミュージックライフのライターなのか。しかもこの本を執筆する頃は既にフリーランスのライターのようで、検索してもあまり出てこないし、いやそもそも出版社の立風書房というのも聞き覚えがない。

そんな個人的に謎な本として手に取ったが、これがまた素晴らしい本だったのだ。著者が1973年から76年までの3年間にスティービーと密に行動した上で記されたものというのも驚きだ。そんなジャーナリストがいたんだとは知らなかった。

この本はこのような構成になっている。

第一章 冷たい鏡の中に生きて
誕生秘話から1976年までの半生

第二章 ただ今録音中
キーオブライフ」のレコーディングレポート

第三章 迷信を打ち砕く青年 スティービー
著者とスティービーとの関わり、逸話

ディスコグラフィー(アルバム解説)

このまず第一章から素晴らしい。自伝とも他伝とも違う、本名スティーブランド・モーリス・ジャドキンズという盲目の男の主人公になりきってしまうような記録なのだ。兄弟喧嘩のやりとりなどもその様に記されているから、そのような感覚になるんだろう。盲目だけど負けず嫌いなスティービーは木登りもするわ、レスリングや果ては水泳もやっていたそうだ。楽器との出会いの感動と、のめり込む様もリアルでまるで映画を見ているような文章で一気に95ページを読み切ってしまった。

中でも驚きだったのは芸名のStevie Wonderの由来。有名なのかもしれないが、俺は知らなかった。

社長のベリーゴーディーJrが「スティーブランド・モーリス」って覚えにくいから名前をつけようと言ったのが理由1

そしてワンダー(驚異の)スティービーにしよう!と決まったが、なんと秘書が名前と姓を間違えて契約書を作ってしまい、逆の「スティービー・ワンダー」としてしまったのが理由2なんだそうだ。確かに英語圏の名前としては逆が正しいからね。ワンダーという名字は多分ないと思われるからね。

そして第二章がまたレコーディングレポ、それも何トラックのレコーダーを使って何をやって、、、という具体的なレポの宝庫で、著者が撮ったと思われる写真も数多あってミュージシャンな自分としては興奮してしまう章だった。でも何より興奮というか驚愕だったのは、"Fulfillingness' First Finale"(1974) 以降に少なくとも1000曲は作っていて、300曲はレコーディングされたと記されていること。そしてレコーディング詳細まで記された"In The Buisiness"という曲や、Moogだけで作られた"Eleanor Rigby"とか、結果「キーオブライフ」に入れられていない曲の話も出てきていて、聴きたくなる気持ちが増してしまう。この先、世に出ることはあるんだろうか?

いや実際この本のレビューでも、俺の手元にあるレコード「キーオブライフ」の解説でも"Lady Prima"という曲のことが記されていて、直前までアルバムに入る予定だった曲だけでも数多あることが想像される。

この本のレビューを見るだけでも
"Lady Prima"
"Late December"
"Give It Up"
"Crazy Letter"
が結果未発表に終わっている曲だ。

うーん気になるなぁ。

そんな訳でびっくり玉手箱な半生の記録本だった訳ですが、この本にひょっこり挟まれていた1980年ごろと思われる("Master Blaster"への言及があることでわかる)プレイボーイ誌のインタビュー記事、これがまた面白かった。なにせタイトルが

「勝新太郎vsスティービーワンダー」

だからね。「なぜこの組み合わせ?」と思ったが、読んでいて腑に落ちた。この頃、勝新太郎は盲目の座頭市の映画制作に夢中だったので、盲目繋がりでこの様な対談となったのだ!と。芸能誌らしい着眼点だわ(笑)

これは写メで全ページアップしておこう。もう

「きれいな女の識別法は?」
「さわってみれば分かるさ」

なんてやりとりだけで大爆笑でしょう

なかでも驚きの馬鹿話をしているくだりがあったので、そこはアップにしておきましょう。

勝新太郎 
「迷信」のおかげで、日本じゃイン○になってた男たちがみんな治っちゃったいうことだ

なんだその話、その切り口!!笑

いやぁこの記事に一気に印象を持って行かれそうですが、なにせこの本、良かったです。挟まれている絵も良くてね。藤島亮という方の挿絵らしいんだけどどれも素敵だった。中でも本の中で「キーオブライフ」のジャケットのミーティングのシーンがあり、結論はキーボードを軸にしたものにしよう、っていう話になっていたんだが、実際はご存知のこの様なジャケになった。

で、そんな話の後に本の中に藤島亮による(と思われる)こんな絵が出てくるんだわ。

本なのでちと見にくくて申し訳ないが、こんなデザインのものだとしたらまた素敵なジャケだっただろうなと想像させられる素敵な絵でしょ?いやぁ面白いなぁ。今のところ自分の知ってる限りでは、まだスティービーのちゃんとした伝記本はないんだけど、まさかこんな昔に「半生をまとめる」形の本を、しかも日本人著者が記していたなんて、、、

三浦憲さん、その後どんな執筆活動をされたんだろう?

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