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これはかなーり素敵なビートルズカバーアルバムだ!!

音楽ジャーナリストの林剛さんが呟いていて、
かなり推していたので聴いて見たら、
俺もかなーり気に入っちゃったのでレビューを記しておきます。

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"blackbird~Lennon-McCartney Icons"
by Marilyn McCoo & Billy Davis Jr 2021

音質や歌詞的に好きな新譜は色々ありますが(J.Coleとか)、「音楽的」に素晴らしい新譜は久々出会った気がします。それもこんな古株な方々の作品がこんな素晴らしいなんて。

簡単にこの二人組を紹介しておくと、このマリリンとビリーは The 5th Dimensionという、1965~75年ごろ活躍したボーカルグループのフロントの二人で、1975年にはグループを離れて夫婦デュオとして活動を開始し、その後各々役者をやったりソロを出したり色々やってきた、現在80歳前後の方々。音楽家としては珍しく、結婚してから50年以上経ち、未だ夫婦としてこうして続いているという、誠に稀有なおしどり夫婦ですね。

その結婚する時の話も素敵な逸話があり、当時すでに付き合ってた二人が、たまたま「ビリー、私と結婚してくれる?」と女性から男性に逆プロポーズをする歌詞があるLaura Nyroの"Wedding Bell Blues"という曲をカバーし、公開プロポーズのような形の演出がなされて二人は無事結ばれた、そうだ。そしてこのカバーは見事全米No.1となる大ヒット曲となる。(この映像は笑える演出になってますねw)

The 5th Dimensionとして多数のヒットを出した後、夫婦デュオとなってからもヒットを出すんですが、個人的にはこの曲を最初に歌ったアーティストということを推しておきたいね。Whitney Houstonで大ヒットした"Saving All My Love For You~すべてをあなたに"は実はカバーで、オリジナルはMarilyn McCoo & Billy Davis jr.なんです。

そんな夫婦デュオが、13年ぶりにリリースしたカバーアルバムがこの、Lennon-McCartney楽曲のみをカバーしたアルバムだ。もう80歳前後の夫婦とは思えない声の伸び。特に82歳のBillyのパワフルさには驚いた。そして何よりもアレンジ〜解釈がどの曲も素晴らしいのだ。

前作の2008年のカバーアルバムも落ち着いたいい感じではあったが、アレンジはそんなに凝ったものではなかった。「あるある」的な想定内アレンジだった。ところが今作は歌はもちろんだが、何度もいうがアレンジがまず素晴らしい。どれも素晴らしいんだけど、個人的にはTr-3"Yesterday"のスムーズな解釈にやられたな。"Yesterday"の黒人カバーといえばシャウトしまくるRay Charlesのイメージだったからね。見事に美しく裏切られました。

あとTr8のゴスペル解釈な"Help"も素晴らしくて、まさかの感動の曲になっている。これらの解釈の深さはAretha Franklinの60-70年代の名カバーに匹敵すると言ってもいいほど、独自の解釈で、全く違う別曲に仕上げ切っているのだ。

自分もカバーの際は色々アレンジを施して、原曲越えを目指すか、別な名曲に仕上げるように目指しているんだが、そんな俺も「これは参った!」と思う素敵な解釈のオンパレード。いやあ、やられたなぁ。

選曲もまたいいよ。John Lennon"Starting Over"、Paul McCartney"Silly Love Song"とソロ曲も一つずつ選んであるしね。大人ならではのセンスと大人の余裕を感じる素敵な音楽表現だ。これはジョンもポールも嫉妬する仕上がりじゃないだろうか?

昨今はどうしても「音質」「歌詞」「SNSマーケティング」が先行していて、音程的な探求が浅いものが主流となっているからね。このカバー集の奥深さ・面白さはどれくらいの人たちと共有できるんだろう?80歳前後の爺さん婆さんたちの、素敵な音楽発信はぜひ多くの人が受け取って欲しいなと思う。SOULファンにはどちらかと言えばこれまで無視されてきたThe 5th Dimension~Marilyn McCooとBilly Davis Jr。林剛さんも記してるが、これを機に彼らの再評価へとつながればいいなと思う。ぜひ聴いて味わってくださいw

俺も無事80過ぎまで生きたとしたら、
こういう奥深さと出汁がたっぷりな音楽を作れるように頑張ろう!

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