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"雌伏30年" マキタスポーツ 著

「同い年が記す自伝的小説はこんなに面白いのか!!」

それが第一印象。

マキスポことマキタスポーツは音源制作を機に最近少し親しくさせてもらっていて、先日草月ホールで行われていた「オトネタ5」を見に行ったら、先行でこの本が販売されていたので購入。数日前から読み始めたら面白くて一気に読了。

52歳同い年、ってだけでまず時事ネタ、流行曲、芸能ネタ全てがほぼ俺自身の記憶にあるものになる。我々が20代の頃の新宿の歓楽街のめちゃくちゃっぷりもある程度共有できてしまう。俺は歌舞伎町じゃなくて新宿三丁目のバーに入り浸ってた訳だけれど。

サクッと共感ポイントをリストにしてみると

*ピーターバラカンさんの紹介する音楽の影響を受けている
*故大瀧詠一さんの「分母分子論」を知っていて、それをつい引用したくなること
*ビートルズ"Let It Be"を聴こえたまんま「エルビー」と言う人がいる。検索のない時代は確かにそういう「そう聴こえたんだから仕方ないじゃないか」的な人が多くいた。
*落ち込んでいた時に読む本として「完全自殺マニュアル」を読む。俺も読んだ。俺は「完全疾走マニュアル」の方に夢中になったが。
*「頑張らないと親に似てしまう」と思って生きてきたところ。でも残念ながら似てきてしまう部分もある、、、てとこまで。
*オウム真理教の選挙活動からその後のサリン事件までの流れを知っている。実際、俺の通ってた千葉大学の学祭にゲストで呼ばれて講演していたので、目の前を麻原彰晃が通り過ぎるのを見た記憶がある。
*間間に挟まれるヒット曲、SMAPからエレカシからオザケンなども「あったあった」と思い出せるものも多かった。

、、、などなど。

でも何よりも個人的に共感してしまったのは、20代(=90年代)の迷走っぷり。特に音楽シーンはバブル崩壊してからもしばらくは絶好調だったのに、俺は音楽仕事に無縁で、でも売れたいとは思っていてあーだこーだ迷走していたのでね。いろんな場所に出かけ、いろんな人に会い、時に怪しい勧誘に会い、時に親にも迷惑をかけてしまい、、、

「あー俺もこの頃めちゃめちゃダメな奴だったなぁーーー」

色々と、それもなんなら思い出したくないことまで(笑)、走馬灯のように思い出してしまった。

、、、とここまでは「同い年」だからこその感想だけど、この本の面白いポイントは、

今順調そうな、確固たるポジションを築いているように見える人がどのようにそこに辿り着いたか?

という物語としてであり、それもどこかの勧誘広告で出てくるような

「明確な夢・目標を立てて一歩一歩進んできた」ような話とは無縁の物語だ

という点だ。

もちろん目標を立てたり、夢を語ったりは俺もしてきたし、なんなら今もするけれど、いざ振り返ってみると今やらせてもらっている仕事のほとんどは自分が目指していた場所の隣の場所だったりするのだ。その、「なんか知らないけど気づけば」ということが実は大事なんだよね、そうそうそう、とうなずいちゃうんです。分かりますこの感じ??

その肝となるのが、この本の中に何度も出てきた
「俺は他とは違うんだ」「俺は特別」
と思ってきたかどうか?そこを守ってきたかどうか?だと俺は思う。それも、他人をバカにしたり、自分をアンラッキーと慰めるためにそう思うだけじゃ結局三流で終わる訳で、
「俺にしか出来ないことがあるはずなんだ」
というところに辿り着けるかどうか?ってことだよなぁと。

元々やりたかった歌を「オトネタ」という形で継続させつつ
「一億総ツッコミ時代」「すべてのJ-POPはパクリである」などの批評家的側面もありつつ今一番順調なのは役者業?なマキスポの、役者業の原点、映画の「苦役列車」に出演する経緯とその後の評価、というところでこの本は終わる。

読了して俺も俺に対して思った

「俺のキャリアのピークはこれからだからな」


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