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侮れないベスト盤

たまにはレコード紹介

いわゆる「ベスト盤」と言われるものは、中古レコード屋さんでは過小評価されがちだ。なぜならオリジナルアルバムにも入ってるヒット曲や人気曲の寄せ集めな場合が多いので、そこでしか聞けないものが入ってないケースが多いからね。そんな中ダントツ俺の好きなものは甘茶ソウルグループ #TheMoments "The Best Of The Moments"(1973)だ。それは実はいわゆるベスト盤ではなく、「今までで最高の」という意図でつけられたタイトルであるらしく、中身は完全にオリジナルアルバム。なので中古レコード屋でもよく勘違いされていて、他のアルバムよりは安く売られているのをよく見かける。

そんな話をしておきながら、本日紹介するのはポップデュオDaryl Hall & John Oatesの1977年発売のベスト盤"No Goodbyes"だ。

"No Goodbyes" (1977)
Daryl Hall & John Oates

Daryl Hall & John Oates、通称ホール&オーツは80年代にリアルタイムで知って、大好きになって、旧譜まで遡って聴きまくっていたので、全体像は把握しているつもりだった。当然このアルバムも知っていた。1972年にデビューした彼らはなかなかヒット曲を産めなかったが、1976年についにブレイクした。"Sara Smile"の全米4位の大ヒットに続いて、既に黒人アーティストには評判だった1973年作の"She's Gone"を再発したらこれも全米7位と大ヒット。それを機に作られた、初期3作からのベスト盤がこれだ。

というところまで把握して俺の中ではこのベスト盤は追及せずに最近まで放っておいた。よくある話だからね、4作目でやっとブレイクしたアーティストが、1-3作目をかき集めて初期ベスト盤を出すってことはね。しかもやる気のないジャケットだしね。

で、最近たまたまサブスクでホール&オーツを流し聴きしてて、このベスト盤を見つけてかけてみたら、「なんだこれ?」「なにこの曲?」と知らない曲が3曲も入っててビックリした。調べてみると1973年録音の、つまり #ArifMardin プロデュースの名盤"Abondoned Luncheonette"の頃の未発表曲だと言うじゃないか!中でもA-2のこの曲にやられた。まんま #Spinners を意識したようなフィリーソウルな素敵な楽曲じゃないか。

シングルカットされたA-1"It's Uncanny"も、もう一曲の未発表曲A-4"Love You Like A Brother"もいずれもArif Mardinプロデュースの1973年曲で、それも素晴らしい。ヒットこそしていないが、既に80sの更にポップスターになっていく頃のサウンドの萌芽が見られるではないか!これを今まで知らなかったのは悔しく思うぐらいだった。

あの、"Kiss On My List"(1980)や"Private Eyes"(1981)のピアノを8分で連打するスタイルは、俺が昔読んだ解説では1978年に #DavidFoster プロデュースで発表されてスマッシュヒットとなった"It's A Laugh"がきっかけと記されていたが、いやいや違うじゃないか。既に1973年作の"It's Uncanny"でも使われているし、いやそもそも彼らの3作目"War Babies"(1974)のプロデューサー #ToddRundgren の"Hello It's Me"(1972ver)がその原型じゃないか!あ、それが好きでToddにプロデュースをお願いしたらまさかのロック寄りなプロデュースをされちゃってこけちゃったってことかぁ、、、あ、ちと勝手に突っ走っちゃいましたが、色々俺の中の認識が繋がっていくベスト盤でした。

いやあでも改めて聞いてると、彼らのポップセンスとソウルの取り入れ方のセンスは素晴らしいね。でもってやはり"Abondoned Luncheonette"収録曲の素晴らしさたるや、、、という確認もできるし、ちょいとサイケにぶっ飛んでるToddプロデュース作も面白く聴こえてくるし、、、

で、もう一点

サブスクで聴いてると、なんかシャリシャリしてて音がチープで、「これはもしや」と思ったんだけど、レコード用のマスターテープをまんまデジタル化すると起きガチな症状なんです。だからこれはやはりレコードで!と思って探して探して無事見つけて聴いてみたら、予想通り、いい音でした。

うん、これはレコードで聴かねば!!!

ベスト盤って侮れないでしょ?
そんなお話でした

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