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バラカンさん、カタカナは発音記号じゃないんですよ

先に弁明しておきますが、
ピーターバラカンさんのことは大変リスペクトしてますし、多大な影響を受けてきました。バラカンさんの本やラジオで紹介されてきた音楽にどれだけ影響を受けてきたか?を思うと頭が上がらない音楽ジャーナリストの一人と思ってます。

が、ほんと唯一、唯一
「ちょっとそれは、、、」
と思う点があります。

それは、アーティスト名のカタカナ表記問題です。日本のレコード会社やライターの方が解説を書いたりレビューを書いたり日本語タイトルをつける時にカタカナ表記がつくわけですが、それをバラカンさんは
「それは英語発音とは違う!」
と言うことを理由に表記を直す、直させる提言をされてきました。

アレサ・フランクリン→アリーサ・フランクリン
チャカ・カーン→シャカ・カーン
などが有名な例です。

すでに日本では「チャカカーン」「アレサフランクリン」で定着しちゃっているのに、です。

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その結果、例えば2年前に出た、「マーヴィンゲイ生誕80周年記念」特集本の中でこういうことが起きてしまうのです。彼の代表曲"What's Going On"のカタカナ表記が、ライターによってバラバラになってしまい、同じ曲なのにカタカナ表記が4種にもなってしまうのです。

「ホワッツ・ゴーイン・オン」(これが70年代最初のカタカナ表記と思われます)
「ホワッツ・ゴーイング・オン」
「ワッツ・ゴーイング・オン」
「ウォッツ・ゴーイング・オン」★

★がピーターバラカンさんの表記です。

すんません、違和感ありますねぇ。しかも一冊の雑誌の中で有名曲の表記がこうも違うというのはどうなんでしょ?編集の方が口を出せないくらい、大御所ライターの方々が記してるので、下手にペンを入れれないんだろうとも思いますが、結果として読者置いてけぼりですよね。すんませんがライターの方のエゴのぶつかり合いに見えてしまいます。編集部的にはどうせなら全部"What's Going On"の英語表記で統一すればよかったのにと思っちゃうのは俺だけでしょうか?

そして、最新号(2021/7/15号)のBRUTUSの「音楽と酒・夏」特集の中に「ピーターバラカンチョイス」という記事の中にこんなのを見つけちゃいました。

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これまでAverage White Bandは「アヴェレイジ・ホワイト・バンド」と表記されてましたが、「アヴリジュ・ワイト・バンド」ですかぁ、、、英語発音的にはおっしゃりたい意図はわかるんですが、これはないです。カタカナを英語の発音記号と捉えた場合のみ大正解でしょうけれど、これでは全く音楽を広めたい記事に見えないです。

そもそもどの言語にも翻訳をする際にちょっとした間違い〜勘違いはあるでしょうし、なんならば壮大な歴史があったりもします。分かりやすい逆の例で言うならば、

■「当地の人の発音にすべきだ」とするならば、
Tokyoは「トキオ」と発音しちゃうので例えばTaught Kyoとかに綴りを改めるべきですか?

■Japanはそもそも間違いなのでNipponと言いなさいと広めるべきですか?
これは昔の中国では「日本」の読み方が「ジーペン」だったらしく、そこからマルコポーロが「ジパング」と記して、その結果のジャパン、だそうです(一説ですが)。

■北京は我々は「ペキン」と呼んでますが、実際は「ベイチン」なんだそうです。よく言われる「ベイジン〜Beijing」は欧米の人の読み間違いだそうです。それも世界的に直すべきですかね?

あ、そもそも「ピーター」も英語発音的には「ピーテー」の方が近いですよね?今更「ピーテーさん」て呼べませんけど。

、、、とっさに思いつくだけでこれだけあります。

特に日本におけるカタカナの歴史は古いですし、明治維新以降の外国文化輸入の折から発音記号的に使われるようにはなったものの、オランダ語からフランス語からドイツ語からいろんな言葉をカタカナ表記にしてきてるので、英語を軸にすると間違ってしまうものも必然的に多々あります。例えばドレミファソラシドはイタリア語読みですが、英語だとドレミファソラティドですよね?これはどうすべきですか?

個人的な結論としては、このままでいいんですよ、その国に根付いてしまったものは今更変えなくたって。新人アーティストとか新商品が出てきたときの発音〜表記を気をつければいいだけじゃないですか?そして必要あらば、その国の表記で記せばいいんですよ。Average White Bandのまま記せばいい、What's Going Onのまま記せばいい。

特に古い音楽への興味を持つ若い人が減ってきてるとも言われている昨今、こうした先輩ライターの方々の意見が元で表記が混乱してしまうと言うのは、勿体無く思えてきちゃいます。

「発音チェック」の厳しい目があるが故に日本人は英語をいつまで経っても喋れない、と言う説もあるくらいです。いいんですよ、発音を間違えていても、伝われば。実際、英語の発音なんて国によって全然違うじゃないですか?統一なんて無理だし、統一する意味がそもそもないんですよ。ご当地ごとに発音が違ったっていいんです。占領地じゃないんですから。

ま、俺がどうこう言うまでもなく、バラカンさんの提案する「カタカナ表記変更」は日本にはまず根付かないと思います。先ごろの映画"Amazing Grace"でも「アレサ」と表記されていてホッとしました。日本人同士〜日本在住同士はアレサでこれからもいいと思います。それを英語圏の人に伝えなきゃいけない時に「アリーサ」ではなくArethaと記す、発声すればいいんです。

で、再度申し上げておきますが、この「カタカナ表記変更提案」を除けば、ピーターバラカンさんの紹介してきた音楽、昨今のフェスの開催など本当に素晴らしいと思ってます、影響も受けてきてます、敬意を持っています、これからもバラカンさんの切り口で色々と紹介し続けてくださいね。

そしてこのBRUTUS「音楽と酒・夏」もほんといい特集です。音楽はもちろん、音楽が聴ける酒場の紹介が多々あるのが嬉しいですね。自分がこれまで一番世話になってきたと言って過言ではないバーの系列、Marthaのボス福山さんが巻頭のインタビューに出てるのも嬉しいです。ぜひご覧あれw あ、東京はまだしばし飲みにいけないのが残念ですが・・・

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