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展覧会『blue vol.1』開催のお知らせ

青い? そう見えてるだけだよ。

多文化共生、共生社会、社会包摂、多様性……。今という時代をやんわりと彩るこれらの言葉に嘘臭さ、もっと言えばうさん臭さを感じている人は少なくないだろう。なぜだか生きた言葉として胸に響いてこない、と。真剣味が感じられない? 人間を上下に分断して上から物申す構図が透けて見える? 思うにその最も大きな理由は、これらが望むべき社会の在り方を示しつつ、今はまだ0、ナッシング、目指しはするけれども叶わないかもしれない、無理かもしれないという諦めにも似た空気を漂わせ、そんな空気が大多数の共通認識となっているからなんじゃないだろうか。

じゃあ、もう、既にあるとしたら?

つまり多文化共生は、共生社会は、社会包摂は、多様性に満ちた社会は、希望でも理想でも夢物語でもなく「もう既にあるもの」と捉え直してみたらどうだろう。「違い」を認め合うなんて簡単なことじゃない。本音を言えば、できれば同質性の高い、似た者同士で生きてゆきたかった。が、私たちは既に否応なく、望むと望まざるとに関わらず、自分とは絶対的に異なる他者や文化と共生しているのだ。

ゴミブルーは皆、一様に青い。圧倒的な異物感を漂わせながらも、赤でも緑でもピンクでもなく「全員、青い」という不可思議な共通項と安心感の中でヒーローになり切ったり、ゴミ拾いに夢中になってヒーローぶることすら忘れたりしている。けれど言うまでもなく、青い化繊の皮膜の下にいるのは年齢、性別、障害の有無等、様々に異なったラベルを持つ一人ひとりだ。

あるいは私たちはあまりにも「違い」に気を取られすぎているのかもしれない。人はそれぞれ決定的に違う存在であると同時に、多面的で多層的な生き物である。街も、歴史も、文化もそうだ。主観に任せて一面だけを切り取り、断定することなど決してできない。ならばもう既にある1を、2や3により良く変えてゆくために、なんとか同時代を生き、生き抜いてきた者同士として、まったく同じではなくとも折り重なり合う部分に注意深く目を向け手繰り寄せ、覚悟を決めて答えのない問いの中を歩いてゆきたい。

私たちは幼く青く、その目は濁っている。

でもだからこそ、世界をもっとクリアに見つめられる可能性を秘めている。

NPO法人スウィング

木ノ戸昌幸

フライヤー ura

こんな展覧会をしたいな。。。とまずは考え、そのイメージに沿うように準備を進めてゆく。

これは展覧会に限ったことではありませんが、その過程においてうまくゆかないこと、予想外のこと、こんなはずじゃなかったことがあったほうが面白いものです。だってイメージして、イメージのまんまだったらそれってやる必要ある???

ところが本展に関してはそもそもの出発点として、イメージに合わせるのではなく「決めずにやりながら考える」という手法をはじめて選びました。1年間、継続して京都・東九条に足を運び、ゴミコロリをしたりいろいろなワークショップをしたり反対にお話を聞かせてもらったり、そうした時間の積み重ねの中で感じたこと、考えたことを展覧会という形にしようと(冒頭のステートメントも同様です)。

しかしながら誰も予期していなかったコロナ禍の到来によって、プロジェクトの実施自体が危うくなってしまいました。

世界中で「できること」や「やってもいいこと」が著しく制限され、瞬く間に、例外なく、現代を生きる私たちの最優先事項はCOVID-19の感染拡大防止になってしまったのです。

柴田祥子/2020(八切02)

そのような状況下にあってもなんとか「できること」を探り、様々な方々のご理解とご尽力のお陰をもって、昨年5月からの11ヶ月、12回に渡って、唯一清掃活動「ゴミコロリ」を実施し続けることができました。

この間、写真家・成田舞さん、そして彼女の出産に際して代打登場した堀井ヒロツグさんが撮影した写真は2,000枚を超え、また、プロジェクトの途中からは映像作家・片山達貴さんが合流、本プロジェクトに更なる厚みが生まれました。

そして結果的にはゴミコロリ一択になったことで、いろいろな意味で視点や焦点がシンプルになり、すごくよかったなと感じています。今現在、展示に向けたラストスパートの真っ最中ですが、そして冒頭のステートメントとかぶるところもありますが、本展の会場であり提携団体でもある「THEATRE E9 KYOTO」のWEBサイトより以下、企画内容を転載します。

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NPO法人スウィング(京都府京都市北区)は、これまで活動拠点である京都・上賀茂にておよそ12年間、140回以上に渡り「ゴミコロリ」と名づけた清掃活動を展開してきました。そのゴミコロリに複数人登場するのが『まち美化戦隊ゴミコロレンジャー』。戦隊モノの常識を覆し「全員ゴミブルー」となることで、すれ違う人たちに強烈なインパクトを残します。

<「多文化共生」とはこれから目指す夢ではなく、既にあるもの>という仮説を出発点に、2021年2月現在、東九条にて継続的かつゲリラ的に展開してきたゴミコロリは11回を数え、一歩一歩、少しずつそこで暮らす方々にも認知されつつあります。既に子どもたちの多くは、ゴミブルーと出会っても動揺せず、はしゃぎません。この現象はゴミブルーが子どもたちにとって「圧倒的異物」から「よく見知った当たり前の存在」に変わるという最も歓迎すべきもの。こうした変わりゆく景色や関係性は写真家・成田舞によってつぶさに撮影され、成田の写真はスウィングメンバーの手によって絵画へと生まれ変わります(尚、このプロジェクトは2021年度も続きます)。

更にこのプロジェクトを映像作家・片山達貴の視点から捉えることで、ゴミブルーと成田のアクション、そして東九条の「今しか見ることのできない景色」をより立体的に、多層的に映し出します。 劇場を舞台にした写真、絵画、そして映像の複合的な展示をぜひお楽しみください。

ゴミブルーと絵:NPO法人スウィング

写真:成田舞/堀井ヒロツグ

映像:片山達貴

舞台監督:浜村修司

照明:渡辺佳奈

音響:森永恭代

広報デザイン:鯵坂兼充(iTohen)

主催:NPO法人スウィング

提携:THEATRE E9 KYOTO(一般社団法人アーツシード京都)

企画:木ノ戸昌幸(NPO法人スウィング)/成田舞/片山達貴

企画協力:堀井ヒロツグ

映像協力:中谷利明

協力:京都市地域・多文化交流ネットワークサロン/コミュニティカフェ ほっこり/社会福祉法人カトリック教徒司教区カリタス会 希望の家カトリック保育園/認定特定非営利活動法人 京都ダルク

助成:公益財団法人京都市芸術文化協会

※映像作品は、「映像でつづる東九条2020-2021」のプログラムとして製作・展示されます。

<以下、映像作品のみ>

主催:京都市

企画制作:一般社団法人アーツシード京都

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これはもう全く個人的な話になるんですが、舞台監督の浜村修司さんは、僕が2000年頃、就職活動に背を向けおもむろに演劇をはじめたその最初期に出会った人で、20年の時を超えて再会し、こうして一緒に仕事ができることにびっくらこいております。

縁は巡るもの。

巡って再会したりまた離れたり、だから人生は分からない。

本展では成田舞さん、堀井ヒロツグさんによる写真80点と、スウィングメンバーによる絵画作品約30点、そして片山達貴氏による映像作品がブラックボックス(黒い箱形の劇場形式)内に展示されます。通常こうした展覧会はまるで真逆のホワイトキューブですることが多いため、一生懸命に計画は練ったものの、まだ見ぬ風景に僕たちもワクワクしております

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会期中、来場者にはハンドアウトをお渡しするんですが、広報デザインをしてくだった鯵坂兼充さんの助言により、展示マップのようなものではなく(見られないことが多いし、情報の混乱に繋がる恐れもある)、僕と成田さんと片山さんが、ハンドアウトでしか読めない文章をしたためることにしました。こうしてギリギリまで妥協せず、ベターを求め続ける人たちに恵まれたのは本当に幸せなことだなと思います。今現在もスウィングでは、展示作品を粘り強く描き続けている人が数名います。睡眠7~8時間はキープしつつ頑張れ!!

NOV/2021(半切01)

「E9で展覧会をしませんか?」とあごうさとしさん、蔭山陽太さんにお声かけいただいたのは2019年夏のことだったと思います。これまで新たな挑戦を丁寧に歩んできたつもりですが、同時にたくさんの見落としやいたらなさもあるはず。プロジェクトは次年度も続きますし、その後も東九条には変わらず関わらせていただきたいと思っていますが、ひとまず僕たちなりの通過点をご覧いただければ嬉しいです。

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Swing×成田舞×片山達貴

blue vol.1

 会期:2020年3月20日(土)~29日(月)11:00~19:00 

※ 最終日のみ16時まで

※ 入場無料・ご予約不要

 会場:THEATRE E9 KYOTO 京都府京都市南区東九条南河原町9-1

 お問い合わせ:

NPO法人スウィング 京都府京都市北区上賀茂南大路町19

Tel:075-712-7930/Mail:swing.npo@gaia.eonet.ne.jp

http://www.swing-npo.com

THEATRE E9 KYOTO 京都府京都市南区東九条南河原町9-1

Tel:075-661-2515/Mail:info@askyoto.or.jp

https://askyoto.or.jp/e9


皆さまのご来場を心よりお待ちしております!!!

木ノ戸昌幸

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