HSL日誌

5月26日日曜日風の強い晴れ



今日はミケランジェロの『最後の審判』を自分なりに整理します

『最後の審判』ミケランジェロ



ミケランジェロの『最後の審判』はいわゆる
「天国と地獄に行き先を分ける審判」
とは少し違うように見えます

絵の人物は全体として時計回りの円環の流れを形作っていて
360度途切れない輪廻の図のように見えてきます

中央下には地底の地獄に通じていそうな洞窟が
業火の赤に染まっているのが垣間見えますが
まさにそこから人々が再生していることを見ても
輪廻的なイメージが強く伝わってきます

ある人は抱き抱えられ
またある人は意識もないまま逆さに足を引っぱられたり
誰も彼も”無理矢理”に天国へ引き上げられていきます

地上には骸骨姿が多数見られ
再生の喜びのかけらも見当たりそうにありません

さらに雲の上に引き上げられても
人々の顔には笑顔がなく
まともに空を仰ぐ顔さえありません

やがてイエスと使徒たちの輪環に再接近すると
使徒たちのようにイエスの方へ顔を向ける人もいますが
ほとんどの人は別のことに夢中です

イエスのすぐ頭上を時計回りの流れになって
人々は地獄の方へ向かいます

これは気のせいかもしれませんが
どちらかというと地獄側の人の方がイエスに向いている気もします

天国側は女性、地獄側は男性が多いかもしれません

やがてイエスの左側の人々は悪魔に引きずり落とされ
地獄に落ちます

なんとも凄まじい輪廻の図です 

そしてなんとこの絵には一人も笑顔の人がいません



別の『最後の審判』と比べてみましょう

ルーベンスの人物描写に震えますがそれはともかく

好対照な二枚
決定的な違いはイエスが顔を向ける方向に思えます

ルーベンスが天国側を見ているのに対し
ミケランジェロは地獄の方を向いています

最後の審判を下すのはイエスですから
この審判がよりどちらに重きを置いて下されるかを見るようです

両者の人柄が滲んでいるのかもしれません。。


少し気になるのは
ルーベンスの絵にははっきりした輪廻の流れはありません

雲の上は右も左もぜんぶ天国のようです
その天国の直前
イエスの代理なのか雷(いかずち)を持った大天使らしい人物が
険しい表情で眼下を睨みつけています
それが合図なのか悪魔に捉えられ引き摺り下ろされる人々

画面左下では
再生したばかりの、身体半分まだ地中に埋まっていそうな人々がこぞって
地獄に引き摺られる人々を不安げに見ています
再生前の記憶がまだ残っているのでしょうか?
地上に出た途端地獄の方には誰も見向きもしません

けれどやっぱり天上で左から右への流れはないので
輪廻とは言い切れない気がします
だから
人間皆が地獄を繰り返し経験するというイメージは沸きません


ミケランジェロの『最後の審判』において
審判を下すイエスが見つめる先は地獄行きの人々

そしてこの絵が輪廻を描いている以上

人間は皆、永久に再生して
天国へ行くのかと思いきや
地獄に落ちまた再生する
その繰り返し。。

たいへん恐ろしいイメージです

けれど同じ輪廻でも
イエスが天国の方を向いていれば反対に祝福的な絵になるでしょうか?
そうはなりません
天国に着いたと思ったら地獄行き
輪廻の流れからそうなります

仮に反時計回りの輪廻なら祝福的でしょうか?
これもなんだか不自然です
”再生”が流れの向きを決定づけている気がします

どうも私たちの天国は”ゴール”のイメージなのかもしれません
それ以上行き先がない
地獄に落ちても敗者復活戦(再生)のチャンスが欲しいのは人情です
人類にとって、もしも輪廻をするならば
(天国にゴールして輪廻から抜け出さないかぎり)
「最後の審判みな地獄行き」しかない気がしてきました


描き手の人柄とかの問題ではなく
論理的にミケランジェロが正しい気がしてきます

輪廻の思想はともかく
再生の場面ははっきり聖書にあるので
これは決定事項にさえ思えます
「最後の審判みな地獄行き」

人は地獄から再生し天寿を全うし再び地獄へ落ちていく
楽しいはずがありません

や、だからこそ生命はその瞬間その瞬間だけに生きるべきと思いますけれど
そうすれば楽しい や、楽でもない
喜ばしい(歓喜)のでしょう



まるで整理しきれていませんが

あまりに巨大な相手なので数日でやっつけるのも不可能に思えます

シーン20を手掛けるのは数年先になりますから
ゆっくり考えていくことになりそう

ひとまず今日はここまでです

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