HSL日誌

5月30日木曜日晴れ


色鉛筆画シリーズ「HSL」の筋書きを考える集中期間は
5月いっぱいをメドに一度決着をつけたいと思っています

残すところあと二日です


ひとまず目標は”レリーフの少年”を掘り下げること

それはつまり
”新世界”空中都市CITYについて考えることになります

”レリーフの少年”はCITYで唯一人の生身の人間であり
かつ”CITYの集合意識的な存在”という設定だからです

そこでまずCITYについて考えます


空中都市CITY

CITYは地上36,000mの静止軌道上に浮かぶ
直径45kmほどの球体をイメージしています
地上と軌道エレベータで繋がっています
だいたい東京都くらいの居住面積をイメージしています
(自分が土地勘のあるサイズ感を想定しました)
けれど人口密度は小都市程度です
などなど

作者としては細かい設定はいろいろ制作の助けになってくれますが
作品を見てもらうにあたっては必須でないと思っています
むしろ説明が不要な程度にしっかり描かれてあることが先決な気がします


なので要点のみ

CITYはAIガバナンス(AIによる統治)です
統治AIはCITYを生物の一つとして捉えています
生物のように(新陳代謝しながら)変容するイメージです

シーン20でPLUTOとQが見るように
「壁パーツだった”レリーフ人間”たちが”変容”して実存化、渦になる」
ようなことが起こります

それから
人間は生身の身体を使わずアバターで暮らしています

ただ
「生身の人間がいない(可視化できない)」ということを
「無人の街」という表現にしようと思います

”無人”である寂寥感みたいなものと
”生身のなさ”からくる印象がとても似ていると思うからです

なので実際には都市の人々は実質少年一人という設定です


そして
アバターは”人間(神)レリーフ”を想定しています

「人間(神)」と表記するのは「神になった人間」のイメージだからです
神の定義はともかく「何にでもなれるアバター=神」程度の意味合いです

絵を見る人が、アバターの仕組みや理屈を気にせずに済むように
できるだけシンプルな表現にしたかったのですが
ミケランジェロの壁画を見るうちに「神様=人の似姿=裸体」
でいい気がしてきました
裸体がレリーフのように建築の一部になっているイメージです

偶然にも
ミケランジェロが後年目指したマニエリスムにも通じる
身体のデフォルメが面白そうです

それらの裸体=身体は聖堂の壁画のように美しく
そして人ごとのように空々しい
そういった印象がCITYにぴったりです

人々の暮らしはレリーフに封じ込めて
”静かな喧騒”を描けたらと思います


そんなCITYと少年が共鳴するならば
少年の心象にも”空々しさ”があるかもしれません
”虚ろな感じ”に置き換えてみましょう

か弱く翻弄される少年のイメージですが
同時に少年はCITYの総意でもあるので
PLUTOを連行した張本人でもあるし
CITYの崩壊を企図したのもCITY自身というイメージです

”CITYの総意”という役割部分が少年にとっての無意識領域だと考えて
「何がというのでもない虚ろ感」をイメージします


ところで
PLUTOというキャラクターは
手塚治虫さんの鉄腕アトム『史上最大のロボット』のプルートゥを引用しています

その流れで言うと
Qがアトムで
JTがウランです

そうすると
少年はボラーでしょうか


私は”ボラー”を不可逆的な存在だと考えています
つまりエントロピーの法則のような存在です

エントロピーが溜まって?爆発寸前なCITYのイメージです

良いも悪いもなくただただ変容を続けていく人類

少年はその一部であり全部です


そんなイメージがいっぺんに湧いてきます




”どこか虚ろな少年”の空虚を
RABBITSたちが少し埋めてくれそうな気がします

けれどそれは個としての一部分の勝利に過ぎず
全としての少年は無意識的に変容を続け不可逆的進行を完了する

という流れが浮かびます

”不可逆的進行の完了”とは
「人類の一部が光になって宇宙の彼方に消える」です
(この物語を始めるきっかけになったエンドシーンのイメージ)



少年=CITYの考えていることは分かりません
なので
天変地異のような存在と考えてもいいかもしれません
いっそ神でもよさそうな


ともかく一度この設定から筋書きをイメージしてみます

まず
CITYに到着したPLUTOは”レリーフの少年”に触れて
イベントをスタートさせる

さらに
”負の連鎖”も呼び起こしたPLUTO
CITYでは天使と堕天使の戦いが巻き起こる

不調をきたしたPLUTOはJTに助けられ回復する

けれど堕天使の攻勢が止まらない

そこへ
少年が飛翔して戦いの頂点に立つと
「最後の審判」の選別のような何かを始める

それで選別された人々が光化する
選別に落ちた人は地上に落下していく


PLUTOは選別で落とされた人たちと一緒に落ちていく
(天に昇れない以上それしかないのですが)


PLUTOには暗にイエスを引用しようと思っていますが
選別をするイエスよりも(「最後の審判」で選別するのはイエス)
落ちる人々と共にいようとする方がむしろイエスらしい気がします

地獄に落ちないよう信仰せよと言ったのも
そもそもイエスでなく教会ですし

ともかくざっくり流れが見えてきました


少年(=CITY)の企図した選別によって人類は光化していく

変調をJTに癒されたPLUTOは
選別によって落ちていく人々を救いながら
共に落ちていく

無事に地面に生還した人たちが光になって彼方へ飛び去る人類を見送る

という感じです



ただ
一つ伏線を持ちたいのは
CITYの統治はAIが行っていて
少年とも無関係ではないはずですので
光になったのはAIたちかもしれません

人間は結局光の存在にはなれずAIが光の存在になった
そう考えるといろいろ納得できる気もしてきます

まるで人間という物質から解脱していくように
AIたちが昇天していくイメージです

現実で考えると意味不明ですが
空想の中では意味ありげです


ともかく結局
まあどのような道筋を辿っても要所要所は似たような情景になる気がします

ここからまた
要所のシーンをイメージしていきたいと思います

また明日です


 



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