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文字に現れる感情

料理屋のカウンターで飲んでいたら
隣の席にいた同い年くらいの人が
不意に立ち上がる
 怒りを表にしてスマホを握りしめていた

「 すいません、ちょっと電話してきます 」

奥の座敷が空いていたので
周りに気を使いつつ移動したようだ

男性はゆっくりと丁寧な口調で電話の相手に
語りはじめる

「貴方がその文字で報告している間はお店は
万年人不足ですょ、」

その後は声が遠くて内容はわからないが他人の会話を盗み聞くのも如何なものか、と思い
そっと時間が過ぎるのを、待っていたら

カウンターでマスターがポツリと
「彼ね、大手フランチャイズのスーパーバイザーなんだよ、」

マスターは同業者
いわゆる飲食店関係者の間では
兄貴的存在で みんなから慕われている
柔軟な頭で常にアンテナを張り巡らせる

この前も映画からヒントを得た 
江戸時代の料理を再現してみたりする 
研究熱心な料理人
商売人でもあるはずだけど、
性格なのだろう
 感情がいつもストレート

料理を提供した際に 
映え写真(インスタとかの)
取ろうとしている若者へ

「お客さん 、今すぐ食べるか 
そのまま帰るか、選んでもらえる? 」

じつに気持ち良い 料理人からすると
人に見せるための写真より 
食べに来たのだから
絶妙な美味しいタイミングで
提供しているのだから すぐ食べて欲しい

普段言えないセリフを 
躊躇いなく話すマスターに
飲食店関係者は心を鷲掴みされるのだ

その文字とはいったいなんだろう?
と気になって仕方がない僕の様子を見て

マスターが 
電話終えてニコニコしながら戻ってきた男性に

「 カツヒコ君 わるいけどこの人にも
文字の表す感情を教えてあげてくれないか? 
店やってて 人不足みたいなんだわ、」

カツヒコ氏 全国にその名を轟かせる
有名飲食店のスーパーバイザー
東京本部勤務でデスクワークでも良い役職なのに

「 答えは机の上にはない!
 現場にあるのだ! 」
と踊る大捜査線的な熱血漢 

パッと見た雰囲気は
高級ホテルの支配人を連想させられる
物腰の柔らかさ 落ち着いた対応
穏やかな言葉遣い  

そのギャップがまずは興味深い

マスターに促され カツヒコ氏が語り出す

「あ、そんな大げさな話しではないのですが、
お客様 フランチャイズ加入されたオーナーと
文章のやりとりで、 
 
人材 という文字が出てきまして
私は その文字嫌いなんですよ、
材料の 材でしょ 

人に対して 使うってことは 
その程度の感情って思えるので

僕は いつも 人は 財産だと思いますので

人財 だと 伝えてるんです。」

カツヒコ氏 勉強させて頂きました。
仕事と向き合う姿勢は細部に宿るのですね








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