在り方  営業の方法

急な出張だけど、 少し気楽だった

発注ミスの連続で下請業者に負担がかかるはずだったのだが、世界的半導体不足のおかげで
製品が完成せず、ぎりぎりセーフ

誤発注のまま生産されていたら
会社にかなりの損害が出ただろうし、
自分の立場も危うくなる 

高校を出てすぐ就職 
親のコネで入って25年
コレと言って取り柄もなく係長
出世コースはとうに外れたが、
結婚もせず一人暮らしなので
とくに問題はない

淡々と過ぎる日々に
慣れた作業をこなすだけ
週末には高くない酒を飲みに出かける

街は人影まばら 
キレイに舗装されたマス目状の道のお陰で
遠くまで良く見える

会社指定のビジネスホテルのフロントマンは
高校を出てすぐに勤めずーと働いている雰囲気の
フロントマンだ

  愛想笑いもなく作業的

「 まぁ、そんなもんだろう、」

期待はしていない 観光ではないのだ
距離感があるほうが都合が良いこともある

夜も深くなった頃 
アルコールの勢いで
色的なサービスを利用する可能性もあるだ
下手に会話を持つより 
そっとしておいてもらおう

繁華街 マス目状の太い道から 
誘われるように細い道へ入る
敷居の高そうな紫のノレン
その横に小さく 
看板がライトにてらされている
入口の玉砂利がすこし濡れていて
高級割烹なのだろう 
すーと格子扉が開いて
和服姿の30代前半の色白な女性 

店前に佇む俺を見るなり

「申し訳ありません、狭い店なので紹介のお客様以外は案内できませんので、」

スッと小首をかしげながら 確認された
知り合いではない判断


客が店を選ぶのではない
店が客を選ぶのだ

一見さんお断り

まぁ、そうでしょう 

通りすがりを相手にするより
次につながるお客様だけを大切にするほうが
先は長いのだ

特に酒を扱うとなれば 癖がある人もいる
店の色に合わない場面があれば、
常連も離れてしまうもの

招かざる客と言うわけではなく
小さめな店で、常連客だけを相手にやる
ただそれだけ

敷居が上がれば ステイタスも上がる

ソレも一つの在り方なのかも




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