リーマンの再来にならない理由

リーマンショックの再来か?と記事になっていますが、リーマンショックの再来には発展しないでしょう。今回はそのことについて記載したいと思います。

今起きていることのおさらい

まずは今起きていることのおさらいです。記事では「シリコンバレー銀行の破綻とクレディスイスの信用不安」が「ベアスターンズ破綻とBNPパリバの資金ショート」と同じ段階にあるのではないかと危惧しています。
シリコンバレー銀行はITスタートアップの不振によるものですが、一部報道によると利回りの高い社債などの債権にポートフォリオが偏っていたことも要因の一つのようです。
クレディスイスはアーキェゴスやグリーンシルとの不誠実な取引により引き起こされた信用不安ではないでしょうか。
仮に破綻や信用不安の主要因がインフレによる経済の不安定化ということであれば、リーマンショックの再来もあり得るでしょう。しかし今回は銀行のリスクコントロール(コンプライアンス違反)が引き起こした問題ではないでしょうか?

リーマンショックと何が違うのか?

次にリーマンショックとの違いを整理したいと思います。リーマンショックといわれ、あたかもリーマンブラザーズの破綻が金融危機を巻き起こしたかのように報じられますが実際には違います。実際に金融危機の引き金となったのはサブプライムローンの不良債権化が金融危機を起こした大きな原因です。当時の欧米の金融機関でサブプライムローンを取り扱っていないところはないぐらい一般に浸透していました。それほど一般に広く流通していた証券が不良債権化したので、日本のバブル崩壊時に世界中のバブルがはじけてしまったような状態をイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。
シリコンバレー銀行に関していえばITスタートアップ郡の経営不振ですし、クレディスイスに関していえばそもそもが不正取引による経営不安となっています。

サブプライムローン問題とは?

サブプライムローンとは、ベアスターンズ等の投資銀行販売した、優良債権とサブプライム(粗悪な住宅ローン債権)を抱き合わせて見せかけの格付けを高くした債権のことです。住宅ローンの返済などが滞り不良債権化するものが増え、格付け会社の調査が入ったことで初めて実態が明るみに出ました。その後、格付けを大幅に切り下げられたことで自己資本比率を下回る銀行が多発し急速に金融不安が広がったものです。
サブプライムローンについては、ミニマムペイメント(カードローンやクレジットカードでのリボ払いで、最小金額だけ返済し続けるイメージ:利息を下回ることもあり返済はできません)からわかるように、一般消費者との取引を債権化することの高いリスクはたびたび指摘されていました。
投資銀行などはそのことを理解していたにもかかわらず、高格付けの債権と抱き合わせることで悪意を持って格付けをごまかしていました。

Too big to fail

リーマンブラザーズ破綻の前後に、ほどんどの金融機関は信用不安に陥っていました。Bank of Americaなども破綻が懸念されているほどで、欧米の銀行で安定しているものはありませんでした。当初、金融機関の救済はしない姿勢のアメリカ政府でしたが事態を深刻に受け止め、大きすぎる銀行(買い手が用意できないほど巨大)は救済することとしました。買い手がつく程度のリーマンブラザーズやベアスターンズなどはそのまま破綻させることとなったのです。

本当に金融恐慌は起きないのか?

リーマンショックを教訓にバーゼル規制委員会はBIS規制3の導入を決めました。BIS規制を簡単に説明すると「リスク資産(おおよそ債権)に対する自己資本の割合」としてあらわされます。
リーマンショック前の8%の自己資本比率は変わらないものの、自己資本比率規制の厳格化やレバレッジ比率の規制など、高リスクな取引ができないように規制されました。
多くの銀行は自己資本比率規制の高さより、リスク資産の保有からその他サービス(コンサルなど)へ収益の道を模索することとなりました。
その為、金融機関という業種全体が信用不安を抱えた状態ではありません。

こんなに強いぞ近年の金融機関

数年前のスマートデイズ(かぼちゃの馬車の運営会社)が破綻したニュースが記憶に新しいとおもう。その片棒を担いだスルガ銀行もやく6ヶ月の業務停止命令をくらい、日本全体が金融恐慌に陥るリスクがあった。
しかし実際にはどうだろうか?金融恐慌どころかスルガ銀行はいまだに営業を継続している。
似たような話は日本に限らず存在する。もはやリーマンショック後ではないのである。

以上より、個人的にはインフレによる被害者や金融恐慌の前触れというよりも、不正を働いたプレイヤーが市場から追放された程度に感じています。

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