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創作 「アメリカの大学生の日常」

 間接照明がほの明るく光る部屋で、僕たちは草を吸っていた。Boseのスピーカーからは、Sadeの 『By Your Side』 が流れていた。
 
 最近は、草を吸ってもアガらない時が多かった。前にやった紙のバッドトリップが、ずっと尾を引いていた。しまいには自殺願望までが僕の精神を蝕み始めていた。他にも理由があったが、ありすぎて上手く書けない。
 
 ただその時だけは違った。草の質が良かったとかそういう理由ではない。それまでの自殺願望から抜け出し一歩、ほんの小さな一歩が踏み出せたように感じられたんだ。真っ暗な未来に、何か小さな光が微かに見えたんだ。
 
 言うならば、それは、
「生きていこう。」
っていう小さな勇気みたいなものだった。

 
 2日後、僕たちは再び草を吸っていた。この日、Boseのスピーカーからは、The Beatlesの『Rubber Soul』のアルバムが流れていた。確かThe Beatlesのメンバーがインドに行った後に作られたアルバムだった気がする。アルバムジャケットがサイケでイカしていた。

 
 3日後、僕たちは再び草を吸っていた。Boseのスピーカーからは Jimi Hendrixのギターによるアメリカ国家が流れていた。
 
この日はメンバーが4人いて、もし Bob Barley と Jimi Hendrix(二人とも、だいぶ前に死んでいます)のライブに行けるならどちらが良いかと言う話で盛り上がった。
 
 僕的には、映像で見たことのある、Bob Marley の、ジャマイカ大統領選挙で対立する二人の候補者を、ステージ上で握手させたライブを生で見たいと言ったが、一つ年上である他の3人は、ウッドストックの Jimi Hendrixのライブが見たいと言った。
 
 バックで Jimi Hendrixのギターが鳴ってんだからそりゃそうだろって思ったが、それについて僕は何も言わなかった。


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