ただ高級ブランドの店頭にディスプレイされているだけで 普通に花屋さんで見かける花ばかりなのになぜかうっとり 白いカラー 黄色いオンシジューム ピンクのアルストロメリア ただバサッと そこにはきっと 何の意味もなく 思い入れもなく ただ高級ブランドの店頭に飾られるというだけで きっと何倍もの値段で取引きされるんだわ そんなことはわたしにはなんにも関係ないけど すれ違った青いサングラスの女性がなぜか印象に残る 隣に立つ高校生の会話が耳に入って思わずニヤニヤ 服の色 後ろ姿たたず
道端の 雑草さえも 愛おしい わたしはただの 植物オタク
暑さのせい きっとこの暑さのせいひと夏で 終わりたくない 終わらせたくない
梅雨のさなかの夕暮れ時 雲の合間からのぞくハーフムーン ひとりの部屋へと旅に出る ほんとのわたしに戻るとき 今夜は何食べようかとか 洗濯ものがたまっているとか 箪笥の上にホコリがたまっているとか そんなことよりも 早く着替えよう 居心地のいい わたしだけの世界 境界線を越えて こっちからこっちはさっきのわたし こっちから向こうはこれからのわたし 何をしたっていいの何を考えたっていいの それなりに満足してる毎日 でも何か足りないこのストーリー だから自分の手で書いてみよう
沿道に咲いている昼顔をみつけて思い出した 君は昼顔のような人だ かつてそう言って同じ時間を過ごした人 バラではなくて チューリップでもなくてガーベラでもなくて スイートピーでもアネモネでもカーネーションでもない いっそのことニゲラみたいな人だ・・・なんて ニゲラって知ってる? 花屋さんに並ぶときは先の尖った薄い花びら 青みがかった紫か白色 内側にはひょろひょろとしたおしべとめしべ その真ん中が時間とともに膨らんでやがて実になるの 今のわたしだったらきっと選ぶのはニゲラ で
好きだった人の死をきっかけに もっとその人の事を知りたくて 否が応でも今まで知らなかった そんな事実があったなんて わたしが知っていた あなたのことはほんの一部に過ぎなかった だからと言って幻滅したとか 好きじゃなくなったとか むしろもっと知りたい もっとあなたのことが好きになっている自分 過去は過去として 事実として塗り替えられないあなたの人生を わたしの人生と重ねることや 間違っても交わることなんて ありえないほどあなたは遠い存在の でもわたしにとっては人生
すっかり春だなぁ いやまだ寒いなぁ なんて言っている間に 生き物はどんどん成長して 一日は24時間もあるというのに わたしのこんな気持ちなんて誰も知らずに 米粒ほどの小さなことに拘っているうちに あっという間に花が咲いてしまうよ わたしと言ったらどうだろう ひと花ふた花咲いた後はもうさっぱり 女でありながらオンナになれない女 オンナになりたくても何か目の前のことに囚われて それは誰かのためではなくて 誰かに指図されていることでもなくて わたしがそう思っているだけ
春の匂いが好きだ 春の香りももちろん好きだけど あの春の芽吹き独特の 青臭い匂い 生臭い匂い 命が生まれる時 それはきっと美しいとか 尊いとか言っている場合ではなく この世に命を生み出すことで精いっぱい がむしゃらに わけもわからなくなるほどに まさに命がけで命を送り出す 小さな命をこの戦場に 雨の日も風の日も 強く生きてゆくために そうそうこれこれ 慌ただしく過ぎて行った2月 3月になって肌で感じる 春の気配 春の足音 結構匂いに敏感 匂いフェチというよりも その一瞬
いつもの道は緩やかな下り坂 とっくに陽は落ちて西の空に細い三日月 右上には誇らしげに輝く金星 その上には少し控えめな木星 お互い高めあって輝きあって 手を伸ばせば届いたかもしれない手を なぜ繋がなかったのかしらと 闇夜に溶けても陽はまた昇る 新しく芽生え生まれた一日 昨日のわたしは今日のわたしじゃなくて あなたも昨日とは違うあなた 決して交わることのない二人