スリップはあるのが当然、だった頃。

一度書き始めると延々と長くなる傾向のあることが分かったので、こまめに区切っていきます。

今回は、基本的にスリップは付いていなければいけない、という認識だった頃の私の使い方です。主に、前職での「古典的」管理方法に該当します。(ずーっと長年、「スリップのない商品は返品お断り」だったんですよ!それがころっと一転して、経費削減の流れで、書店側の事情をたいして斟酌することなく廃止一直線になっています。)それはともかく、写真へ。

20200506note世襲のスリップIMG_0870

一例として、NHK出版新書の本郷和人『世襲の日本史』のスリップです。いま確認したところ、2019年9月10日が発売日でした。本郷さんは、日本史研究者では屈指の人気者。各社から引く手あまたです。どの本もよく売れていますが、最近はちょっと乱発気味で、いわゆる「票が割れてしまう」結果に。

さて、一行目。10月2日のメモで、入荷が5冊に対し、売れ数が4、店頭在庫が1冊、新書ランクの92位だったことが分かります。補充をしたいところですが、取次(=本の問屋さん)在庫および版元在庫が切れていて、(PC上で)発注できなかったため、「✕」を記入しています。もう少し早めに手を打つべきでしたが、発注が出来ていなかったのか、直前の数日でぱぱっと売れて1冊になったのか、今となっては不明です。その点、不十分なメモです。

本書の場合、次の手があります。NHK出版は「ブック・インタラクティブ」という版元横断型のウェブ発注サイトに加盟していますので、そちらを当たってみます。ただこのメモからは、ウェブ発注が出来たのか、そもそも検索はしてみたのか、共に痕跡がありません。自分に失望ですね。笑

2行目からは、ともかくその後に2冊の入荷があったこと。およそ1か月で市場順位が54位に上昇したことが分かります。なかなか好調に感じられますが、自店では1冊しか売れていません。

そこで今後の伸び悩みも意識して、当時の私は最低限の補充(=1冊だけの発注)に抑える判断をしました。数字なしのレ点は、補充発注を一冊だけした(できた)印=マイルールです。

というのも、前職で新米だったときに、先輩から一番最初に教わったことの一つが、「棚前(この場合新書コーナー)平積みは3冊を基準とするべし」だったからです。売上絶好調の商品以外は、3冊あればたいがい補充は間に合うので、積み過ぎに注意しなさい、という含意があります。

そして3行目。短期間で1冊売れましたが、前回と同じ判断で「一冊だけ補充しました」のレ点が付いています。

このようなメモを繰り返していくと、当然スリップの記入スペース(そもそもこの空白は番線印を押すためのスペースなのですが、そこは措きます)が埋まってしまいます。

じつはこの先が前職時代からの課題であって、なかなか固定したスタイルを確立できませんでした。スリップは手元に豊富にあったので、2枚目に移行するのか、ノートに転記するのか、などなど。裏を返せば、現在の書店よりも随分と売れない店だったので、記憶や感覚に頼ってもやっていけて、差し迫った必要に迫られなかった、とも言えます。

本日はここまでにします。

次回の予定は、スリップが無くなりつつある現在の、代替手段です。


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