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【MTGパイオニア】イゼットフェニックスガイド ~冷静と“情”のあいだ~【Season2 Cycle1ファイナル権利獲得】

割引あり

【イントロダクション】

8月6日、カードボックスオーサカ店にて行われたチャンピオンズカップSeason2 Cycle1エリア予選で5-0-2という成績を残しファイナルの権利を獲得することができた。
デッキはパイオニア黎明期から擦り続け、過去にはPT権利の獲得にも貢献してくれたイゼットフェニックス(以下イゼフェニ)。

名のある強者でも権利獲得に苦労する現状のトーナメントシーンにおいて、エリア予選の初週2回目で抜けられたのはかなり運が良かったと思う。
パイオニアシーズンも終盤に差し掛かる中勝ち語りをするには旬が過ぎた感もあるが、現状あまり研究が進んでいないデッキであることと、個人的に信頼しているプレイヤーの一人でもあるokrn氏が自分のリストを75枚コピーして予選を抜けデッキの強度が保証されたことで、一定の需要はあるかと思い記事を公開するに至った。

余談だが、okrn氏と自分は今日に至るまで全く面識がない。
以前モダンで行われたMOCS予選でokrn氏のリビエンのリストをコピーして優勝したことがあるのだが、その時も今回も事前のやり取りや調整は一切なく、事後報告でお互いのデッキを使ったのを知った。

競技マジックは徐々にオフライン中心のものに戻りつつあるが、こういうオンラインならではの妙な絆のようなものは大事にしていきたい。

閑話休題。
当記事では僕が再びイゼフェニを使用することになった経緯や構築思想などについて書き記したいと思う。
無料部分ではデッキ選択の経緯と大会レポート、有料部分ではおまけとして権利獲得リストに至るまでの構築思想や基本的なプレイ方針、マッチアップ別のサイドボーディング、ゲームプランなどを記す。興味を持ってくれた方は購入して頂けると今後の励みになる。

8/25追記
記事公開から一週間弱、予想以上の反応を頂き驚いています。概ね好評のようで嬉しいです。
と同時に、まだまだこのデッキについて伝えきれていない部分が多いなとも感じたのでプレイ指針、サイドボーディングガイド、覚えておくと役立つTips集などを大幅に加筆修正しました。
新セットが出て環境が変わっても使えるテクニックを詰め込んだつもりなので、まだ購入を検討している方は是非。

【デッキ選択】

イゼフェニについて語る記事の冒頭から何を言っているんだと思われるかもしれないが、今回の予選シーズンでイゼフェニを使う気はさらさらなかった。
これは愛情の裏返しでもなんでもない。Season1-1のファイナルで1-3からジャイルーダにKOされて1-4drop、Season1-3のエリアに3回出て0-2×3とボロ負けしPTSD気味になっていたのもあるが、そもそもイゼフェニにとって簡単な相手ではないラクドスミッドレンジと青白コンが過剰に多い日本のメタゲームでは一生勝たないだろうな、と使うのを半ば諦めていたのだ。(と言いつつ地元の店舗予選ではイゼフェニを使って抜けたのだが…)

とはいえせっかく権利を得た大会に半端な気持ちで挑むのは勿体ない。直近で親しい友人が複数人アリーナCSや世界選手権といったハイレベルなトーナメントの出場を決めて火が付いたのもあるかもしれない。それに、次シーズンは個人的に苦手かつ紙のデッキを殆ど持っていないモダンときた。
そういった様々な要因から、今回のエリアは情を捨て全力を尽くそうと考えていた。

というわけでMOのオールアクセスなども駆使し様々なデッキを試したのだが、やはりというべきか、どのデッキも性に合わない。
1マナで3ドローしながら勝手に出てくる3/2飛行で殴るデッキを使い続けてきた自分にとって、ラクドスで細かいアドの取り合いをするのも、緑単で除去がこないよう祈りながらマナクリを送り出すのも、青白コンでカウンターを構えるか全体除去を唱えるかの2択に頭を悩ませるのも、どうにも刺激が足りないのだ。

依存性高し

何よりリアルの大会に慣れていない自分にとって、がっぷり四つのミラーマッチが発生しやすいこれらの王道デッキを長時間のトーナメントで回しきるのは不可能に近いと感じた。
そんな中、ビビっときたのはボロス果敢だった。

エリア予選初日に使ったリスト

果敢デッキらしい序盤のブン回り要素は勿論、合計11枚入った衝動的ドローによりラクドスの単体除去、青白の全体除去の両方にある程度耐性があると環境的な立ち位置も悪くない。
ショーケース予選で華々しいデビューを飾ったものの、その後は目立った活躍もしておらず舐められているデッキ(ミラーマッチが発生しづらい)というのも逆張りオタクの自分にとって好印象。
また、下馬評では緑単やラクドスサクリといったデッキに不利とされていたものの自分で回してみるとサイド込みで意外と勝てなくもないことが分かり、直前のリーグではなんと10-0。確かな手ごたえを感じた。

何よりデッキの主役であるピアナラーが素晴らしい。
マナ効率の良いドロースペルでリソースを回復しながら自動的に飛行クロックが並んでいく…どこかで聞いたことのある響きではないか。

実質フェニックス

未練を捨てきれずイゼフェニも一応回したが、無事リーグを0-2して憂いなくボロスを使うことに。

ということで急遽カードを揃えて大阪のエリア予選へ。
当日通販に在庫がなかったカードを揃えようと思ったら火遊びが500円して目ん玉が飛び出たが、何とかラウンド1開始までに飛び出た目ん玉を拾うことができた。ショックにおまけが付いただけのカードがこの値段なのだから、間違いなくMTGは大人気ゲームだ。
結果から言えばボロスを使用した初陣は3-2没。負けはアブパルと青白コン(カヒーラ)。
ここでデッキの致命的な欠陥に気付く。対アブパルのメインと青白コンの一時的封鎖が絶望的なのだ。

サクリ殺し

対アブパルは元々割り切っていた部分はあるが、ラクドスサクリの隆盛を受けて一時的封鎖や碑出告のようなキラーカードがサイドに増えていたのは誤算だった。経験上、特に意識されているわけでもないのにトップメタの対策のついでに対策されてしまっているデッキはバッドデッキだ。
とはいえイゼフェニを使いたい理由も見つからないまま、とりあえず大阪を楽しもうということで適当な串カツ屋で飲酒からの爆睡。
宿が和室だったこともあり死ぬほどよく眠れた。やはり日本人は畳。

起床後、眠い目を擦りながらチェックアウトまでもうひと眠りするかと思っていたところに同部屋のテラサワ氏(前日にアブパルで僕をボコった人でもある)がおもむろに「今イゼフェニいけるんちゃう?」と呟いた。
「はいはい、それは僕も通った道でね…」と反論したい気持ちもあったが、しかしよくよく話を聞いてみると、アブパルをプレイしていたにも関わらず一日を通してRIPや黒力戦といった墓地対策を全く置かれなかった=墓地へのガードが薄いのでは?というのだ。
確かに煮詰まりすぎた現パイオニア環境では墓地対策だけで機能停止するデッキはイゼフェニくらいしかいなくなり、そのイゼフェニも虫の息。
客観的に見ても、ラクドスや青白が純粋な墓地対策に枠を割く余裕は無くなっていたのだ。
更に環境の変化で白単やスピリットといった純粋なクリーチャーデッキが復権したこともあり、本来イゼフェニが得意だったフィールドにメタが戻りつつあった。

お前、飛べるのか?

この時既に朝の9時。
幸いにもチャオズは鞄の中に入っていた。使うならこんな感じかなあというリストも固まっていた。
冷静と情のあいだで揺れていた僕は、もう一度情を信じることにしたのだ。

【結果と教訓】


結果は冒頭の通りで、5-0から最後は同じくイゼフェニを使っていた関西の強豪、Ryuji氏とIDし権利獲得。

細部の差こそあれど、お互いスタン時代からイゼフェニを使い続けていることもあり認識も近く、ほぼ同じリストで抜けられたのは嬉しかった。やはり構築思想が似ているプレイヤーと話すのは楽しい。以前イゼフェニのリストを借りてMOPTQを抜けたときのお礼もできて感無量。(こいついつも人のリスト借りてるな)

蓋を開けてみれば懸念点だったラクドスは墓地対策の枚数が減り、青白コンは大振りなアクションが多いロータス型に変化し、とイゼフェニにとって都合の良い要素しかなく間違いなく立ち位置が良かった。テラサワ氏のアドバイスは正しかったのだ。

ちなみにテラサワ氏はその後もアブパルを使い続け無事2週目で権利を獲得することができた。選球眼。

イゼフェニだけに固執し他のデッキを回していなかったら、調整仲間の客観的な意見を受け入れることができなかったら、今回の結果は得られていなかっただろうと思う。
「カードゲームはバイアスと戦うゲーム」とは僕の友人がよく言っている言葉だが、それを強く再認識した結果となった。

しかし今回得た別の教訓として「情だけでは正しいデッキを選べないが、情を注がないとチャンスを掴めない」ということも感じた。
今回イゼフェニを回したのは直前で0-2したリーグの2マッチくらいで、大半の調整時間を他のデッキに割いていた。
にも拘わらず直前で最適なリストに辿り着き、最適なプレイができたのはこれまでの蓄積によるものが大きい。
僕が一度は使い慣れたデッキに見切りをつけ別のベストデッキを模索したように、一つのデッキを使い込まないと見えてこない景色というものは確実にある。
時には情に自らの身を委ね、全力で情と向き合ってみるのもまた一つの方法なのかもしれない。
11月に控えたファイナルでも、柔軟な思考とやり込みを両立させたデッキ選択をしたいと感じた。

【無料部分の終わりに】

というわけで最後はまとまりの無い内容になってしまったが、ここまで読んでくれた方はありがとう。
繰り返しになるが、有料部分ではおまけとして権利獲得リストに至るまでの構築思想や基本的なプレイ方針、マッチアップ別のサイドボーディング、ゲームプランなどを記した。
ベースは友人にデッキをレンタルした際に書いたメモ書きに肉付けした程度のものなので誤字脱字や表記ゆれなど推敲し切れていない箇所も多々あると思うが、温かい目で見て欲しい。
そして今回試験的にSNSプロモによる割引機能を導入してみた。無料部分で面白いと思ってくれた方、有料部分に興味を持ってくれた方は是非利用して欲しい。
また、今回書ききれなかったマッチアップに関しては記事のコメントやX(Twitter)のアカウント宛てのリプライ、DMで質問してくれればできる限り追記して答えようと思っている。
今後同デッキを使用する、また使用される人にとって有益なものになれば幸いだ。

【構築思想】

サンプルリスト

ベースは旧環境から変わらないテンプレだが細部にはある程度拘りがある。

・土地19+棘平原2


土地20、もしくは19+棘1となっていることも多いがここは明確な意思を持って19+棘2としている。ラノエルデッキや白単にガードを上げる意味も勿論あるのだが、そもそも棘というカードがイゼフェニと相性が良い。
帳簿やフェニックスのスペルカウントになって事故を防いでくれるのは勿論だが、特にパズルで拾える土地という点を重要視している。詳しくは後述するが、イゼフェニはフラッドよりスクリューの方が受けづらいデッキである。パズルを連打する過程で土地を見つけられるかどうかは勝率に大きく関わるので、この部分は変えようと思ったことがない。
過去には土地18+棘3や島→海門修復も試したが、序盤のタップインの多さやライフロスを考えるとこの比率が一番しっくりくる。

・マナベースと土地の置き方

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