指す将順位戦6th 自戦記 A級2組8回戦

事前準備

8回戦のお相手はうりゅんさん。
将棋俱楽部24の棋譜を見ると、四間飛車と雁木の両作戦を併用されていた。早めに角道を止められると作戦を妨害することは難しいため、これらの作戦に飛び込んでいこうということになった。
ここまで7局戦ってきて、相手に合わせて序盤を短期間で見直して実戦投入するのは難しく、結局は今までの自分の経験を活かすしかないという感じがしてきている。

作戦の相性

後手番となり対局開始。最初の6手を示す。
▲7六歩 △8四歩 ▲1六歩 △1四歩 ▲6六歩 △6二銀
6手目までを見ると振り飛車かなと思ったが、雁木系の居飛車となった。うりゅんさんは今期ここまで全局振り飛車、ほぼ四間飛車だったため、気分を変える意味もあるのかと思った。雁木と四間飛車は一気に主導権を握りにいく戦法ではないものの、相手の陣形(特に玉の動き)を見ながら柔軟に序盤を展開できるイメージがある。

局面1

先後の差

はっきりした成算はないが、先手の右辺が一瞬壁なので△7五歩と積極的に仕掛けてみた。先後逆で、私側の左銀が7八や8八に上がっているとよくありそうな配置だが、今回は後手のため左辺の金銀が不動のままである。これがどう影響するのか、いわば人体実験をしてみることになった。
先手はこの歩を取ると銀の進出の助けになりやすい。反撃を見て▲3七桂と跳ね、△7六歩▲同銀△7二飛と進んだ。

局面2

2筋はスカスカ

下図では、先手は1手で自陣を引き締める手はなさそうで、▲4五桂には△5五角で飛車取りの先手になるため、2筋3筋の歩の突き捨てから攻め合いになると思っていた。実戦も▲2四歩△同歩と進み、▲2五歩を継ぎ歩をされた場合は無視して△6四銀と出てどうかと思っていたが、▲6五歩と角交換を挑まれた。

局面3

本局最大のハイライト

下図は何気ないが、後の展開を見ると最重要局面だった。詳細は後述するが、ポイントは自分から角交換するべきか否かの一点に尽きる。実戦は早く銀で出たいなあと思いながらふらっと△8四銀と出てしまったが、この罪が重かった。▲3三角成と先手から交換され、△同桂▲7七歩と補強され攻めが見えなくなってしまった。

局面4

既に厳しい

下図は手番を得ているが、△7五銀▲同銀△同飛はあらかじめ歩でガードされているため響きが薄く、▲2四飛と歩を補充されたのちの▲3五歩やいきなりの▲3五歩が厳しく見えて見送った。

局面5

△4四角と力をためつつ桂頭をそれとなくカバーしたつもりだったが、それでも▲2四飛△2二歩▲3五歩が厳しかった。

画像14

銀が泣いている?

露骨だが確実な角打ちを食らい、ダウン寸前。銀が3一のままなのがもろに響いている。△7六飛と浮いて△7七角成の王手飛車を狙う手には、先に▲3三角成で飛び上がる。ここではまだしも△3二歩と屈服するしかなかったか。▲4五桂の応援もあるため△2三歩と力なく突いたが、▲3三角成△同角▲8四飛の大立ち回りで、将棋が終わってしまった。

局面6

人体実験大失敗

下図以降△7六飛と銀を取ったが(▲同歩なら△9五角の王手飛車)、当然取ってはくれず▲3四歩から急所を突かれて形勢は悪くなるばかりであった。

局面6.5

以下は、手数は数十手続いたが、形すら作れない完敗となった。

局面7

反省会

角交換を自分からすると、相手は角を取り返しながら駒が進むので相手から取ってほしいという一般論がある。角換わりの出だしや、角交換振り飛車を指す際によく言われる。それ以外でもたとえば、先日のJT杯プロ公式戦(渡辺名人-木村九段)のこの局面でもそれが該当するだろう。これらの場面は、基本的に銀(または歩)で取り返すことが多い。

渡辺木村

前述した、本局の最重要局面を再掲する(課題図とする)。この場合はどうだろうか。先手後手ともに、角交換されたときに取り返す駒は基本的には桂になる。実戦は角交換を見送ったため、先手から角交換されて△同桂と取った形が弱く、攻めを受け止められなかった。

局面4

ここでの正着は△7七角成で、感想戦では一例として以下▲同桂△8四銀▲7五歩△同銀▲同銀△同飛で銀も交換する手順が挙がり、▲6六角△7四飛▲1一角成と香を取られるも△7六歩で、逆に桂頭を攻めることができる。

参考1

つまり、課題図では先手後手ともに角を自分から交換し、相手の桂を跳ねさせて守りを弱体化させることが重要だったということである。相掛かりや横歩取りでは、桂を足早に跳ねて攻めに参加させる場合も多くあるが、課題図の場合は有効な攻めが見込めるわけではない。

先手の符号でいうと、7七に行ったあと、
銀は、6六・8六・8八に行けば7七への効きが復活する
桂は、交換して打ち直さない限り、7七への効きを復活させられない
角交換などで桂馬を跳ねる場合は、上記に気を付ける必要がある。

そういえば、先日の王位戦七番勝負第3局(藤井王位-豊島竜王)でも以下の局面があり、豊島竜王は「自玉を崩しているので感触が悪かった」と感想を述べられていた。プロとアマチュアでは棋力を比べるまでもないが、参考にできる感覚も転がっているのではないだろうか。

藤井豊島

よく考えれば、このような考え方は今回初めて遭遇したものではない。たとえば、下図の△9七桂成の端攻めに対して香・桂・玉のいずれでとるかという問題で、▲同玉で取るのが良い。△9六歩▲8八玉と戻ったときに9七への効きが復活するためである。▲同香・▲同桂では危ない。

端攻め

対局では必ず未知の局面に遭遇する。読みももちろん重要だが、一般的なセオリー・格言を応用できないか、常に感覚を尖らせたい。
以上が、反省会の結論になる。

最後に

惨敗の終盤を書いても仕方なく、課題図がピッタリの材料になるため反省会を設けた。順位戦も残り3局しかない。悔いの残らないように指したいが、もし残れば今回のようにきちんと反省していきたい。
対局相手のうりゅんさん、ありがとうございました。
※棋譜は将棋倶楽部24から

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