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不可抗力でラブホに入って何もなく出てくるの性癖なんです(タイトル)
こんにちは。
今日も今日とて一次創作の更新です。Twitterに書いたものをまとめました。
『ファクト・エレクトロ』というお店に関わる人たちの話です。
今回の登場人物は…
桝永龍くん:駆け出し探偵。25歳。仰木さんが好き。自分に自信がない。
仰木さん:刑事。28歳。龍くんが好き。割と直情的だが据え膳を食べられないタイプ。
紅さん:『ファクト・エレクトロ』のマスター。46歳。龍くんの保護者的ポジション。二人をもどかしく思っている。
眞言(まこと)さん:紅さんのパートナー。25年前に死別。
今後登場人物一覧を作ったり、本編の小説を書き進んだりしてよりわかりやすくしていこうと思います。応援いただけたら幸いです。
ちなみにタイトル画像は龍くんのイメージです。
桝永くんと歩いていたらゲリラ豪雨に打たれた。服はぐしょ濡れで、カフェやファミレスへ行けば迷惑だ。入浴できて、服を乾かせる施設が目の前にあった。なかば反射的に桝永くんの手を取り、俺はラブホテルのフロントで適当な部屋のボタンを叩いた。桝永くんは戸惑っている。…俺は何をしているのか。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 21, 2020
僕の手首を掴んだ仰木さんは、何の迷いもなくラブホテルに入った。雑に部屋を選び、エレベーター経由で部屋に入る。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 21, 2020
「先にシャワー入ってください」
言いながら仰木さんはネクタイを緩め、シャツのボタンを外す。着痩せするタイプなんだな…と思ってからあわてて目を逸らす。仰木さんの意図が読めない
桝永くんがシャワーを浴びている。二人分の服をハンガーにかけ、安っぽい部屋着を着てベッドに座る。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 21, 2020
…俺は何をしているんだ?
急な豪雨に打たれたとはいえ、憎からず思っている相手を性交に特化した密室に連れ込んだ。しかも何らの同意もなく。
下心を必死で否定する。左手で右手首を握り込んだ。
腰にバスタオルを、頭にタオルを巻いてシャワールームを出たら、部屋着を投げられた。仰木さんは壁の方を向いている。確かに、男の身体なんて見たいものではないだろう。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 21, 2020
部屋着に袖を通して呼びかければ、仰木さんは振り向く。頬が赤い。今日は非番とはいえ、聞こし召してはいなかったはずだが。
うっすらと鍛えられた筋肉が、脂肪のない肉体の上に乗っている。誠実そうな顔を映えさせる慎ましい身体に、俺は目を釘づけにされかけた。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 21, 2020
しかし、最後の理性が警告する。どんな状況であれ、許しなく他者の身体に性的な視線を向けるのはハラスメントだ。俺は部屋着を投げ渡し、あらぬ煩悩を封じた。
シャワーの水音が響く。僕はいったんベッドの端に座り、三度呼吸してから合皮のソファに移動した。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 21, 2020
このホテルに入ったのは、あくまで冷えた身体を暖め、衣服を乾かすためだ。僕は仰木さんに恋しているが、仰木さんが僕などから色目を遣われたら不快感を覚えるだろう。叶わない想いをわきまえなければ
脱衣場で身体を拭き、下着のことに思い至る。湿った下着を穿いて体温で乾かすのは、あまり快適ではない。しかし、憎からず思う桝永くんの前でノーパンになるのも恥ずかしい。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 21, 2020
そういえば、桝永くんは下着をどうしているのか。俺の前でノーパンなのか。
そこまで考えて、愚息が反応した。浴室に戻ろう。
少し長い入浴を終えた仰木さんは、すっきりしたようなどんよりしたような、不思議な表情をしていた。部屋着に包まれた胸板はやはり立派だ。僕の視線も気にせず、仰木さんは灰皿を取ってベッドサイドへ移動する。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 21, 2020
「吸ってもいいかい」
僕がうなずくと、仰木さんは手早く煙草に火を点ける。色っぽい。
紫煙を天井へ吹き上げる。喫煙は決して褒められた習慣ではないが、職場には喫煙者が多い。副流煙を吸わされ続けるなら、と喫煙を始めてからしばらく経った。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 21, 2020
部屋は微妙な沈黙に支配されている。落ち着かなくて、テレビのリモコンを操作する。いきなりクライマックスのAVが流れ、あわててテレビを切る
テレビを点け直し、無難なハリウッド映画にチャンネルを合わせる。僕はソファで、仰木さんはベッドで、面白くもつまらなくもない映画を眺める。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 22, 2020
気詰まりに感じてしまうのは、仰木さんを独り占めにしている現状が落ち着かないからだ。こんな貧相な男と密室で二人きりだなんて、面白くないだろう。
すぅ、とニコチンを吸い、はぁ、と紫煙を吐き出す。ルーティンに身を任せているうち、一応性欲は収まってきた。なるべくソファの方を見ない努力が必要ではあるが。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 22, 2020
「いつ出ましょうか」
「せめてもう少し服が乾くまでだね」
俺の言葉に、桝永くんは嘆息する。こんな無骨なな男と二人きりなど嫌だろう
CG技術が発達し、比例的に映画のスタッフロールも長くなった。しかしたくさんの人が関わっても、必ずしも面白い映画になるとは限らない。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 22, 2020
そんなことを思いながら、暗転した液晶画面を見る。映画が終わり、僕は仰木さんと密室で二人きりであることと向き合わなければならない。ため息ひとつが重い。
フリータイムだったので、いようと思えば夜七時までこの部屋で過ごすことができる。目の前の青年を抱きしめたい、と思うが、同意を取らなければできない。そして同意を得られる可能性はまずない。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 22, 2020
「もう一本見ます?」
「いや、MVでも見よう」
気まずさを先送りにする俺たちは、さぞ滑稽だろう。
ハンガーにかけていた衣服が、なんとか着られる程度に乾いた。多少臭いはするが、帰宅するまでは我慢しなければならない。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 22, 2020
同じくパーカーを着た桝永くんは、「じゃ、帰りましょうか」と笑顔を作る。その腰に手を回して引き寄せ、驚きに開く唇を塞ぐ…というのはもちろん妄想である。俺のいくじなし。
こんなところまで来たのに、指一本触れられることなく外へ出る。泣き出しそうな心を抑えて、精いっぱいの笑顔を作る。
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 22, 2020
エレベーターのかごが下降する。二人並んで、階数表示のランプを見つめる。ここを出れば、日常が戻る。
偶然を装って、手の指をそっと触れさせる。仰木さんの手も、びくりと震える。
最後は紅さんの独白です。早くくっついちゃえと思ってる紅さんです。
「…で、何もしないで出てきたの?」
— すばる💫☀️ (@suba_rubaru) July 22, 2020
呆れる俺に、龍くんは涙目を見せる。
「せっかくの密室だったんだから、告白ぐらいすればよかったのに」
「断らせるのが申し訳ないです…」
絶望を疑っていない人の言葉だ。どうやったら、この青年を翻意させられるだろうか。眞言、君ならわかるかな?
いただいたサポートをガチャに費やすことはしません。自分の血肉にするよう約束いたします。