おかあさんゆび(11話と12話の間の話)①
この話と、
この話の間のお話です。
ユミが帰国してから果たしてどうなったのか・・・。
【農業をしようと思ったが、北海道放浪中に小さな牧場をやってるお爺さんとラーメン屋で意気投合し、牧場で馬の世話を手伝うことに。その牧場の最後のサラブレッドがまさかのダービーを勝利。あきらはサッカーを続け、中学卒業と同時にスペイン留学が決定。この話はあきらがスペインに出発して数日後から始まります。】
カランカランカラン。
大将「お!! ユミちゃん。今日は早いね~。」
ユミ「もう無理。ムリムリムリ!!!!!! 何で日高が35℃になんだよ!!!!!!」
大将「そりゃ俺に言われてもねぇ。 ビールでいいかい?」
ユミ「問答無用!! ジョッキ×2、とうきび、じゃがバター、あとで日本酒いくから準備よろしく!!」
大将「あいよ。あれ?そういえば祝勝会って今日じゃなかったけ?」
ユミ「ん?明日。だから今日は早めに切り上げるつもり。」
大将「って言いながらユミちゃん早めに終わった試しがないからねぇ。それに今日も後からみんな合流でしょ? はい、まずビール。」
ユミ「どうかな、今日は流石に来ないと思うよ。明日ダービーの祝勝会ってみんな相当緊張してたからね。」
大将「そりゃそうだ。ホースマンはみんな夢見るのがダービーで勝つことだからね。それがあんなに小さい牧場から出たとなったら、田中の親父もそりゃ緊張もするよ。」
ユミ「まあね。でもあたしから言わせれば、あたしが育てた馬が強いってのは当然の結果だよ。牧場の頃はカメ吉も相当ぼーっとしてたから、何度か闘魂注入しておいたし。」
大将「それ大丈夫かい? 今、動物虐待とか結構うるさいよ?」
ユミ「愛ある闘魂注入は認められてるって生徒手帳に書いてあったから大丈夫。」
大将「どこの生徒手帳よ、それ。でも、ダービーで逃げて勝つってなかなか出来ないよね。やっぱ凄い事だよ。」
ユミ「牧場から出てった後の事はよく分かんないけど、この前聞いたらカメ吉は必死で逃げるんだって。練習中?も、とにかく凄まじい勢いで逃げるんだってさ。何か怖い思いでもしたのかね。」
大将「(それきっとユミちゃんの仕業でしょ。間違いないね。)」
大将「ところでカメ吉って何?」
ユミ「ん、あたしがそう呼んでた。何するにも遅いから。」
大将「カメがダービー勝つか。そりゃ縁起がいいね。」
ユミ「でしょ。 あ、大将、もう日本酒でいいや。早くちょうだい。」
大将「早すぎないかい? はい、いつもの。」
ユミ「これこれ。 うーん、やっぱ美味いよね。 なんかホッとする。」
大将「ユミちゃんこれ好きだよね。まあ俺の仕入れチョイスがいいってことかな。」
ユミ「まあそれは認めるよ。ところで大将、これって仙台の酒だよね。何で日高で仙台の酒なの?」
大将「そりゃ話すと長くなるよ。まずはねぇ・・・」
ユミ「あ、じゃあいい。」
大将「いやいや、良い話なんだからさ。」
ユミ「だって大将の話、長くてつまんないで有名じゃん。」
大将「人聞き悪いねぇ、じゃあ何で聞いたのさ。」
ユミ「まあね。じゃあ特別に聞くとしよう。さあ、話したまえ。」
大将「なんだかフリがおかしいけど、まあいっか。きっかけはあの地震だよ。こっちも相当揺れたけど仙台福島は比じゃなかっただろうから、あの時はボランティアとしても何度か行ったんだよ。でもさ、やっぱり日が経つとなかなか行けなくなるんだよね。」
大将「でさ、長く支えるってどういうことか考えた訳よ。うちはちょうど居酒屋をやってるんだから、一番いいのは仙台から酒を仕入れてうちが繁盛すれば、仙台にとってもお金が落ちるってことでね。俺にできるのはこのぐらいかなって思ってさ。」
ユミ「ふーん。じゃあ大将がいつも出してるデザートのフルーツも意味あるの?」
大将「そう、果物は福島から。あと米は新潟ね。新潟も一時地震で大変だったからさ。米の方が仕入れの期間は長いよね。」
ユミ「なるほどね。でもさ、良い話の途中で申し訳ないけど、この店『ラーメン居酒屋』って看板出してるじゃん。チキンラーメン800円って完全にぼったくりだよね?」
大将「ユミちゃん、通常のチキンラーメンに色々手間暇掛けて作ってんのよ。一回『チキンラーメン味噌味』食べてみる?900円だけど。」
ユミ「なんかチキンラーメンには申し訳ないんだけど、今までの話の説得力だいぶ薄まるよね。」
大将「いや~、それとこれとは話が別。でも結構出るんだよ。だいたい0時過ぎるとさ、みんなこういうシンプルな味が食べたくなるのよ。」
ユミ「まあわかったよ。 んじゃ大将、あたし仙台行くわ。」
大将「は?仙台行くって何しに?」
ユミ「え?働きにだよ。あたし今無職だから。」
大将「あぁ、田中の親父も牧場たたむって言ってたね。けどさ~、いきなり日本酒の話で仙台行くの決めるって、ユミちゃんそれでいいの?」
ユミ「ん?あたしの高校卒業の時の夢は日本酒を作る事だからね。ようやく夢に向かってチャレンジだよ。」
大将「それユミちゃんの場合作るじゃなくて飲むでしょ。まあそれは置いといても、チャレンジするのはいいことだよ。街もいいところだから気に入るでしょ。」
ユミ「あ、思い出した。 あたし日本帰ってくる時、酒作るって言ってたんだ。 やっぱり有言実行大事だね。」
大将「そうそう。何事も前向きにね。 はい、お待ちかねのとうきび、じゃがバター、あと日本酒ね。」
ユミ「いいね~。」
この後、ユミは5時間飲むに飲み、結局記憶を無くし田中の親父が迎えに来る羽目に。
仙台編に続く
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