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おかあさんゆび(第6話)

ユミ「離婚届ってあんなに簡単なんだな。」

華「そうでしたね。でもユミさん、さっき思ったんですけど、婚姻届も似た仕組みじゃないですか?」

ユミ「知らない。言われたところに名前書いただけだから。」

華「はぁ、そうでしたか。」

ユミ「あの時な~、底辺だったな~今思えば。何やってもダメだったんだよ。」

華「そういう時ってありますよね。」

ユミ「まあな~。眼底骨折して顔ボロボロだったし、あばら3本ぐらい持ってかれてたっけな?」

華「う~ん、みんな通る道ですね~・・・・・って結構な傷を負ってますよね!!」

ユミ「うん、あれ無ければまだ戦ってたかも。結構いい線いってたし。」

華「あの~、前々から思ってましたけど、ユミさんって格闘技の経験が・・・。」

ユミ「あるよ。昔釧路のじーちゃんが空手の師範だったからそっからだけど。これでも昔はあたしも弱っちくてさ、いじめられなくなるには強くなるしかないじゃん。」

華「(ユミさんがいじめられる・・・。無い。絶対無い。)」

ユミ「で、いろいろやってるうちに強くなっててさ。そしたらもう負けないじゃん。で、トントン拍子に総合でデビューするきっかけがあって、3試合目だったかな~。もろ顔面にもらって。それで引退。」

華「はぁ・・・(そんなにトントンいきますかね?)」

ユミ「だからさ~、店に来る変態オヤジたちを張り倒すときはデコピンレベルであとに残らない倒し方をする訳よ。じゃないと逮捕されちゃうじゃん。ギリギリを責めるのは腐りかけが美味しいのと同じ理論だね。」

華「全然分かりません・・・」

ユミ「で、その底辺だった時に出来た子があきら。まあ、あきらが居たから今生活してるってのもあるかな。」

華「そうだったんですか。やっぱりユミさんあきら君のこと好きですもんね。」

ユミ「なにそれ?」

華「え?だって2人を見てると、ユミさん本当にあきら君のこと好きなんだな~って思いますよ?」

ユミ「好き?あたしが?あきらの事?」

華「はい。」

ユミ「う~ん、分かんない。」

華「分からない?」


ユミ「分かんない。一緒に居ないといけないのは分かるけど、好きとか愛情とか、そういったのを感じたことは一度も無い。」


華「でもそれって実感が無くても・・・」

ユミ「あたしの親がクソババアだったからかな? いや、だったらあたしもあきら捨ててるかも。じゃ、違うか。 う~ん、分かんないね。」


華「そうですか・・・。」







あきら「華ちゃ~ん、あ、おかあさんもいる!! やった~!!」


華「あきら君お帰り~。今日はみんなで帰ろ~。」


あきら「やった~。ねえ、コンビニでアイス買ってよ!!」


ユミ「いいよ。1本。」


あきら「え~、1本すぐ無くなっちゃうよ~」

ユミ「ダメ。タバコ買えなくなるから。」



ユミ、歩くのむちゃくちゃ早い。
2人を置き去りにし、コンビニ入店。




華「ねぇ、あきら君はお母さんの事好き?」


あきら「うん、好きだよ。何で?」


華「あ、いや何となく聞いてみたかったの。」


あきら「僕おかあさん大好き。だってかっこいいもん。 お母さんが僕のこと好きかは聞いたこと無いから分からないけど、僕は大好きだよ。」

華「そっかぁ。お姉さんはユミさんもあきら君も大好きだよ。」

あきら「やったぁ!! ねえ華ちゃん、手見せて。」

華「ん? はい、どうぞ。」

あきら「華ちゃんゆびに名前が付いてるの知ってる? これがおとうさんゆび、これがおかあさんゆび・・・。」

華「うん、知ってるよ。」


あきら「でもさ~、なんでぼくのは出てこないのかな~。もうあかちゃんじゃないし。」


華「あきら君はもうおにいちゃんだから、真ん中のおにいちゃんゆびでいいと思うよ。」


あきら「そうなの? 華ちゃんありがとう!! じゃあ僕の手のおねえちゃんゆびははなちゃんだね!!」


華「え、いいの?」


あきら「うん♪ おかあさんゆびとおねえちゃんゆび、2人とも大好き♪」

華「ありがとう♪」




第7話につづく






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