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第⑧作 ムーミンパパ海へいくを読んで、本当の孤独と、愛するとは何かを知りました

こんにちは!


9つの物語の本質的なメッセージを、

トーベヤンソンの生涯・想いと、 

キャラクターの性格を深堀して読み解く、

新しいムーミンの楽しみ方。


というテーマで

第八作【ムーミンパパ海へいく】を読んで
ストーリーにどんなメッセージが秘められているのか
私なりに綴ってみました^^*


※この作品のすべての内容は

一個人である私の見解であり、

公式のキャラクター・実在の人物とは

一切関係ありません。


ご了承の上、お楽しみくださいませ!


※ネタバレ注意です※

第八作

じつはこの物語は、「愛されムーミン」を知るみんなが

タイトルからイメージする、

わくわくするようないつもの遠出でも、


帰るところのある

安心した冒険譚でもありません。


なにもかもを捨て去り、

新しいスタートラインに立とうとする、

トーベとパパの決意の物語です。


トーベはヨーロッパの父親の心の内を

この物語で体現したと言われています。


そんな作品として描かれているパパは、

「家族に頼られ、そして守りたい」

という強い想いから、


安心できるムーミン谷を捨て、

なにもない絶海の孤島へ

住処をうつすことを家族に伝えます。


それはいつも「家族の中心」にいるママへの、

ある種の嫉妬であり、反抗なのです。


そして、パパのその

子どもの部分に振り回される家族が

どういう心境の変化に陥るのかが

リアルに描かれています。


そう、この「ムーミンパパ海へいく」は

まるで大人向けの作品なのです。

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灯台 ストーリーガイド

≪ムーミンバレーパークのストーリーガイドより≫


いつもパパを理解し、支え続けるママ。


今回のパパの決意にも、

ママは黙ってついていきます。


はりきったパパに

「なにもしなくていい」と言われたママは、

旅立ちの前からアイデンティティを

少しずつ失ってゆきます。


けれど思い通りにならない海は、

パパを翻弄し、パパは早々に

自分のことだけで精一杯になってしまいます。


そして

ママもそっけないこの島に馴染むことができず、

「自分で描きあげたムーミン谷の世界」に

最終的には「眠り」という形で逃避してしまいます。

ママの絵②

≪講談社文庫の挿絵

 灯台の壁にムーミン谷を再現するママ≫

ママの絵

≪ムーミンバレーパークにも

 挿絵がそのまま再現されていました≫


そんな両親の様子は、

感受性の高いムーミントロールにも

影響を与えてゆきます。


内向的な彼が、

いつも心の拠り所にしているスナフキンも、

そこにはいません。


なんせ、誰もいない絶海の孤島に

ムーミン谷を捨てて、来てしまったのだから。

灯台 全体

≪ムーミンバレーパークにある灯台≫


灯台 雰囲気①

灯台雰囲気②

≪講談社文庫の挿絵≫


家族の視野は狭まってゆき、心も離れてゆき、

一家離散の危機に陥ります!


そしてムーミントロールは

両親にも言えないたくさんの秘密を

はじめて持つことになります。


人間でいう、思春期かもしれません^^*


この8作品目ではムーミンが、

子どもから大人になるために必要な葛藤を、

飼い馴らしていくお話でもあるのです。


家族から離れて住むための居場所が欲しくて、

ミイを介し、他の生き物の命を奪ってしまったり。


「うみうま」へ恋心を抱くけれど、

そのうみうまのあまりの美しさに

今まで誇りに思っていた自分の姿を

「かっこわるい」と感じ、自信をなくしたり・・・

うみうま

≪講談社文庫の挿絵 うみうまとムーミン≫


うみうまに恋焦がれていることを、

ムーミンは自分の秘密の場所で

ママにこっそり打ち明けます。


そこでママはこう言うのです。


「きれいな鳥とか美しい景色を

 見るのとおなじように、

 うみうまを見ることができたら

 それで幸福だと思えばいいんじゃない」と。


本当に愛するということは、

「自分がただその存在を愛し、

 相手をありのままに認めること」。


「誰かを愛すれば、自分も相手に愛される」

という気持ちは、たんなるエゴでしかない、と。


ママが説くのは無償の愛。


ママはいつも息子に、

生きていくためのとても大切なことを

そっと教えてくれます。


********


うみうまに会いに行くと

必ずひっそりと佇んでいる恐ろしいモランがいて、


モランから家族を守るために、

生活には欠かせない

必要な灯油を大量に消費してしまいます。

モランとムーミン

≪講談社文庫の挿絵 モランとムーミン≫


ムーミン一家のカンテラの灯を

追いかけてきた氷の精モランは、

誰からも愛されることのない

寂しさのつきまとうキャラクターです。


灯台の島に来る前に、

モランがムーミン谷に来るという事件が起こりました。


ママはモランのことをこう言います。

「自分から誰も愛そうとしないから、

 誰にも愛されないのよ。」


ママとモランの性格は対極的です。


けれどママが、

みんなから恐れられ、深く考えることもされない

モランの心境をここまで読み解けるのは、


ママ自身のなかにもやはり

深い孤独があるからだと思います。


パパとは違い、

ママはモランを敵視することをせず

その姿をありのまま受け入れています。


しかし、パパはそれも気に入らない。


灯台に移り住んでから、

ムーミンは毎晩モランと時間を共にします。


灯油が尽き果てた日、ムーミンは

なにも持たずに海辺へ向かいました。


カンテラの灯りに

彼女が喜んでいるとばかり思っていたけれど、


しかし、モランは驚くことに

いつもとおなじように

よろこびの歌を歌ったのです。


そして、彼女が佇んでいた場所が

凍っていないことに気づきます。


そこでムーミンは知るのです。


モランの孤独は、

生まれて初めての友達を得たことにより、

解氷したことを。


**********


家族が自分たちのアイデンティティを

確立しようともがいているけれど、


パパも様々な失敗を繰り返した末に、

「自然をそのまま受け入れる」ことにします。


そのとたんに海は、パパにやさしくなり

家族に素敵なものを贈り届けてくれました。


そんな様々な壁にぶつかり

悩んでいる3人の様子を、

一歩離れたところから見守るのはミイ。

ミイ

https://www.moomin.co.jp/


ミイはなにも変わらない。


そんな彼女にこの物語は、

不思議と安心感を与えられています。


養子である彼女は

ムーミン一家の大切な一員ですが、

その気質は彼らに染まりません。


そして誰よりこの3人の性格を

理解している人物でもあります。


心が離れていた

ママとムーミンの間を繋ぐきっかけを

知らず識らずに作ったり、


ムーミンの秘密を

そっと見守り続けたのも彼女でした。


実はこの島に一緒に住んでいた、

人生を悲観していた灯台守を

みんなに引き合わせることで、

崩壊寸前の危機に陥っていた家族を救い出したのも

ミイです。


この土地を愛していた灯台守を

ママがパーティに迎えたことで

彼の心に希望の火が灯り、


パパを縛りつけていた

「灯台守」という使命感からも解放しました。


どこまでミイが分かって、仕向けたのかは

原作者のトーベのみ知るところですが、

とにもかくにも彼女たちは


この荒廃した島に

〝灯台″という

ひとすじの光をもたらしたのです。


この感動せずにはいられない読後感は、

ずっと、ずっと忘れられません。


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いかがでしたでしょうか?


この第八作【ムーミンパパ海へいく】は

人生の荒波を乗り越えるコツや

「愛するとはなにか」

「孤独とはなにか」について

教えてくれる作品でもあります。


人生に悩んだ時、ふと手に取って

読んでみるのに、おすすめの一冊です^^*









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