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第①作 小さなトロールと大きな洪水を読んで、誰かの光になりたいと願いました

おはようございます^^*


9つの物語の本質的なメッセージを、

トーベヤンソンの生涯・想いと、 

キャラクターの性格を深堀して読み解く、

新しいムーミンの楽しみ方。


というテーマで

第一作【小さなトロールと大きな洪水】を読んで
ストーリーにどんなメッセージが秘められているのか
私なりに綴ってみました^^*


※この作品のすべての内容は

一個人である私の見解であり、

公式のキャラクター・実在の人物とは

一切関係ありません。


ご了承の上、お楽しみくださいませ!


※ネタバレ注意です※


第一作

この物語は、冬がやってくるまえに

あたたかい家といなくなったパパを探して

ママと幼い頃のムーミントロールが

彷徨い歩くお話です。

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≪ママとムーミン。恐ろしい森に入っていきます≫


この作品が書かれたのは、

第二次世界大戦のころ。


感受性豊かなトーベは、

戦争によって離ればなれになった

父へのさみしさや、


まわりにいる友人の家族たちが

バラバラになっていく様子を見て、


〝物語にせずにはいられなかった″んじゃないかな。

と思います。



「小さなトロールと大きな洪水」は

まさに戦時中のトーベの、感情や想いそのもの。


明るくて楽しい物語ではないけれど、

そんな彼女だからこそ描けた、

魂に響く言葉がたくさん散りばめられています。



ストーリーの舞台は

昏い森や沼、

あらゆる誘惑にあふれる世界。


昏い道をさ迷い歩き、

思うようにいかない現実に

みんなが涙を流すころ・・・


その現実から逃れるように

親切な発明家がつくりだした、

夢のような桃源郷に招待されます。


そこは「人工の」

つくりもののパラダイスでした。


最初こそ子どもたちははしゃぎまわり、

その楽園を謳歌するけれど、


甘いお菓子を食べすぎて

すぐに病気になり、

とても安心して生きてはいけません。


ママに連れられ、

桃源郷を後にしたムーミンたちは、

少年が旅人をやさしく迎える島に辿りつきます。


一緒に旅をしていた妖精チューリッパは、

少年とともにその島で

「旅人のための灯台の光」となることに。

灯台


このシーンは、本当に純粋で美しく

忘れられません。


パパを見かけたという少年の言葉によって、

物語は一気に

「パパさがし」の旅へと舵を切ります。


ママとムーミン、スニフの3人は

洪水に足をとられながらも、


流されてきた

パパの手紙入りのボトルを

奇跡的に拾いあげます。


前に進むなかで、

ピンチの時にはチューリッパが

美しい髪を光らせ、

危険から身を守ってくれることも。


後半のストーリーには、そこかしこに

トーベの秘められたメッセージが

見え隠れしています。


それがとても愉しい^^*


「闇には光を。

 暴力ではなく、

 相手を傷つけない自然な方法で

 困難を乗り越えていくこと」

こんなメッセージや・・・


洪水は

〝死と再生″を象徴しているのでは?とか。

洪水


流されていく猫の家族を

ママは自分の危険をかえりみずに、

藤椅子に乗せて救いだすシーンは

まるで、ノアの方舟のようでもあり・・・

ノアの方舟


そして、ムーミンが

旅のさなかで親切にしたコウノトリも

のちのち3人を助けてくれます。


「親切はいずれ自分に返ってくる」ように。



物語の終盤で、

ようやく再会したパパと家族たちは

「どこよりも美しい谷」に流れ着きます。


そこにはパパが

家族のためにひとりで建てた

「夢の家」が立っていました。


洪水に流されることなく残っていた

青い三階建ての家。


その煌めく美しい場所こそが、

物語の舞台となる「ムーミン谷」になるのです。

ムーミンの家

≪ムーミンバレーパークにて≫


でも、なぜこんなにも家族思いのパパが

家族をかえりみずに、

ひとり家を出ていったのか…


この作品では語られていませんが

若いころ冒険家だったパパは

その旅で、ニョロニョロに出会い、


誰にも言わずにいたけれど

彼らに強い憧れを抱いていたのです。


ジオラマ ニョロニョロ


たしかにパパとニョロニョロは似ています。


その共通点は、

「自分の今いる環境に満足できず、

 安定とは無縁な星のもとに生まれ

 つねに新しい場所を探し求める放浪者」

ということ。


おたがいの決定的な違いは、

感情があるか、ないか。


パパの放浪記は

「ムーミン谷の仲間たち」の短編のひとつ

『ニョロニョロの秘密』で語られています^^*


パパがニョロニョロと旅をするお話です。


この第一作の魅力的なところはきっと、


どこか暗い部分もある物語だけれど

そのぶん〝光″ の部分が

印象的に描き出されていることです。



実はトーベが

ムーミンを描くきっかけとなったのは

「戦争で絵が描けなくなったから」でした。


貧しさで紙や絵の具が買えなくなり、

自由な表現も許されない時代。


検問によって、何度も作品を

差し戻されては描き直す日々…


そのつらい現実からの逃避として、トーベは

「自分だけの自由な、

 なんでも許される世界」を求めたんです。


それが
「ムーミン物語」のはじまりだったそうです。


*********


いかがでしたでしょうか?


この【小さなトロールと大きな洪水】は

第2次世界大戦の終戦直後に出版され

わずかな部数で絶版となったきり

世界からその姿を消していた

「幻の作品」でした。


そんな歴史的な1冊を、改めて

あなたも読んでみてはいかがでしょうか?^^*





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