『囀る…』についての個人的妄想その8 サ○ン、もしくは堕天使について(つづき)

(以前ふせったーに上げた記事の再掲です)

前回のつづきです。(注: 今回も妄想が炸裂しています)

前回「矢代さんを誘惑した罪は真の罪ではない」と書きました。
そう思う理由は、三角さんに追放された後もしばらくは百目鬼の「堕天使=サタン」としての外見が完成していないからです。

百目鬼の服装は、矢代さんのそばにいたときはずっと、白いワイシャツに(たぶん)グレーのスーツ、自宅アパートでは白いTシャツにデニムと、基本的に上半身「白」。

矢代さんに捨てられてからは白Tシャツの上に黒のブルゾンを羽織るようになる(季節的な設定もあると思いますが…)。見た目は半分、黒。これを「不完全な堕落」と見るのは穿ち過ぎでしょうか……。

桜一家に身を寄せるようになってからも、しばらくはこのスタイルのままでした。甘栗を追いかけ回し、矢代さんの所在を問いただしたとき。そして一年前、仁姫ちゃんを救出したときは、まだこの白Tシャツの上に黒ブルゾンを羽織る「半分、黒」スタイル。

しかしそれから一年後、矢代さんと再会した時にはスーツやネクタイ、中に着るシャツに至るまで黒一色になっていた。背中に入れた刺青が透けないようにするための心遣いか?という見方もありますが、同じように墨を入れている綱川や連は白いシャツを着ており、黒シャツ着用は必須ではないと思われます。

今のところ分かっているのは、全身黒に身を包むようになったのは仁姫ちゃん救出後だということのみです。つまり、彼を完全な堕天使に変えてしまう何かが、この一年の間にあった。そしておそらく、背中に刺青を入れたのも、それと同時期ではないかと予想します。

背中といえば。
四年前、まだ出会って間もない頃、彼は浴室で矢代さんの背中を見て「…墨、入れてないんですね」「綺麗です」と言った。

百目鬼のいう「綺麗」とは、おそらく見た目の美しさだけを表しているのではなく内面の美しさ、清らかさ、そして何ものにも穢されない強靭さをもった美しさを表していると思われます。仮にそれらを象徴して「天使の羽」という言葉を用いるならば、このとき百目鬼は矢代さんの背中に「天使の羽」を見たのではないかと思うのです。ちょっとファンタジーが過ぎるかもしれませんが……。
でもそう思ってみると、1巻のこのシーン、矢代さんの裸の肩甲骨の辺りに本当に羽が生えているように見えてくるのです(心眼ここに極まれり……)。

これに対し矢代さんは「よく見ろよ そんな綺麗じゃねぇから」と言う。自分は汚れている、天使の羽などとうに失っている存在だと。でも百目鬼はなおも「…綺麗です」と言いつのる。あなたはけっして天使の羽を失ってなどいないと。

この見方に従えば、百目鬼にとって背中に墨を入れる(背中を穢す)ことは天使の羽を失う、つまり堕落する、ということになります。
黒シャツを纏うというのは刺青を隠す行為、言い換えれば背中に墨を入れたことを百目鬼は隠したいと思っている……といえるのかもしれない。

つまり、私の思う『囀る…』の世界での百目鬼にとっての「堕落」の意味は二重構造になっていて、ひとつは三角さんを中心とした世界から追放されるという堕落。でもこれは、百目鬼にとって真の堕落ではなかった。何故なら百目鬼にとっての絶対神は、三角さんではなく矢代さんだから。その矢代さんに顔向けできなくなるような何か、自らの天使の羽を失う(と百目鬼は考えている)ような何かが、彼の身に起こったのではないか…というのが私の考えというか妄想です。(ついて来てくださってる方、いらっしゃいますか……)

それはたぶん、仁姫ちゃん救出に関することではないかと私は思っています。詳細はまだ分からないけれど。その根拠というかこじつけは、堕天使ルシファーが神の雷(いかづち)によって負ったといわれる顔の傷を、ここで二回目に負っている点です。

一体、彼の身に何があったのか。


……と、ここまで書いてきましたが、先日55話が公開され、本編がいよいよクライマックスに突入し、それに伴いこれまで伏せられてきた百目鬼の過去四年間についても明かされていくと思われ、したがって好き勝手な妄想ができるのもここまでかなと思います。

この他、神・三角さんの忠実な僕であるはずの天羽さんが言いつけどおり堕天使・百目鬼をその世界から完全に追放することなく密かに匿っていたことが判明したら、その裏切り行為に対し三角さんはどう反応するのか?についても気になりますが……。

ここまで、長々とつづく私のトンデモ妄想におつき合いくださり、ありがとうございました。まさかこんなに(しつこく)つづけてしまうとは、自分でも思いませんでした。私自身はとても楽しかったですが……。何の根拠もない、一個人の妄想としてどうか忘れてください。

(2023/12/21)


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