囀る…感想24-2 55話感想(後編)主に百目鬼と矢代さんについて

(以前ふせったーに上げた記事の再掲です)

 さて、百目鬼です。
 ついに、あの事実を知る時が来ました。

 それを伝える大事な役割を担うのがあの井波ということに、予想はしていたけれど複雑な思いはありますが、とにかく百目鬼は知った。一安心です。

 ある意味、神の目線から見ている我々読者からすれば、「どうして分からないのか……」ともどかしいことこの上ありませんでしたが、考えたら仕方ないですよね。密室での秘め事に関することなのですから……。当事者しか知り得ない事実。井波が暴露しない限り、百目鬼は一生知ることがなかったかもしれません。そういう意味では、ゲス井波に感謝しなければならないのですよね……ぐぬぬ。

 それを聞いたときの百目鬼の、すぐには意味が理解できず、信じられない、という表情。最初はそれがテクニックの問題なのだと思い込み「あんたが下手なんだろ」……と(百目鬼の口からこの言葉が出たのは衝撃的でしたが)。でも井波のダメ押しのような一言「誰に対しても勃たない」によって、問題はテクニックではないと知らされる(井波、グッジョブと言わざるを得ない……ぐぬぬぬぬ)。

 井波の前では何とか自制心を保ち、顔に出すのを抑えていたけれど、別れて車内で一人、これまでのことを思い返す。

 「性欲処理」と称し矢代さんの身体に触れ、抱いた時の矢代さんの様子を反芻し、「矢代さんが自分以外には反応しない」という今知ったばかりの事実と重ね合わせることで、頭の中で色々なことがクリアになっていく。

 このときの、真実に目覚めていく百目鬼の表情が本当に素晴らしくて。特に見開き左ページの、何も気付けなかった自分への後悔と、まだ戸惑いながらも抱き始めた期待と、これまで抑えてきた矢代さんへの溢れる想いの入り混じったような横顔には、もう……言葉を失います(心の中はヨネダ先生ブラボー!の嵐)。

 そして、このとき百目鬼の脳裏に浮かぶ、行為の最中の矢代さんの表情が、本当に可愛くて綺麗なのですよね……。こんな可愛い顔して、百目鬼に抱かれていたのか……と。過去話の同じシーンの画では、矢代さんの目元は影になっていてあまりよく見えない。百目鬼の回想シーンでも。でも今回ははっきり描かれている。考えすぎかもしれないけれど、これは、百目鬼が意識的に記憶に靄をかけていたことの表れなのかな……と。必死で抑えている矢代さんへの想いが溢れてしまわないように。それが解き放たれた今、あのとき自分が見た矢代さんの本当の姿が、彼の脳裏に明瞭に蘇った、そういうことなのではと。

 車内で綱山に電話で業務報告したのち、手に持ったSDカードを見つめる苦悩に満ちた表情。このとき百目鬼は、何を考えていたのでしょうか……。

 8巻ではごく稀にしか(マンションのエントランスで矢代さんに不意に引っ張り込まれたとき等)素の表情を見せなかった百目鬼が、50話ラストで怒りを爆発させて以降少しずつ仮面が剥がれ落ちていき、ここにきてついに本来の表情を見せたように思います。四年前と変わらない、素直で真っ直ぐな彼らしい表情。百目鬼の鉄の仮面を剥がすことができるのは、やはり矢代さんただ一人だったのでした。

 そして問題のチラ見せコマです。妙に横長に切り取られているなあとは思ったのです……。公式様に上手いことやられました(喜んでいます)。まあ、あれで「行けよ」と言われて本当にそのまま行ってしまったら、百目鬼も天然を通り越して相当なトンチキだと(私も相当殺気立ってましたね……)2割……いや3割くらいは本気で心配していましたが、無用でした(本当によかった)。

 しかも一度ドアを閉めた音がして、行ってしまったかと思わせてからの、至近距離での煙草とり上げ……。自分で「行けよ」とは言ったものの、本当に目の前から百目鬼が去ってしまい、一人とり残された矢代さんの横顔に胸が痛くなったところへの再登場に、一瞬息が止まりそうになりました(ヨネダ先生ブラボー!の嵐ふたたび)。

 またラストのコマの百目鬼の下半分の横顔がとてつもなくセクシーで。51話以降感じていた、精悍さと男の色気を増した百目鬼の横顔の威力を再度実感しました。きっとこのあとは……。


 ちなみにチラ見せで抱いた疑問「なぜ矢代さんは服を着ていないのか」については、単にそれが生活スタイルだから、が正解だったようです。下は履いてたし。FFさんに「……裸族だから?」なんてお答えしてしまい、ふざけすぎたかな……と反省していたのですが、当たらずといえども遠からずだったかなとちょっと安堵しました。そういえば、矢代さんは自宅では下着も履かない主義の方でした。


 ただ、この直後のふたりの展開に胸躍らせつつも、いくつか心配な点はあって。

 ひとつは、矢代さんのあまりの「気付かなさ」。今回百目鬼に煙草を取り上げられたとき、俯き加減だったとはいえ、相当近くに迫られるまで矢代さんは気付かなかった。その理由が精神的にショックを受けていたから、だけであって、強度の視野狭窄とかでなければいいのですが……。

 あとは、矢代さんの存在が甲斐サイドに知られてしまったこと、さらに二人の関係を井波に知られたこと。

 百目鬼の弱点が矢代さんであること(逆もまた然り)を知るただ一人の人物である井波の動向に不安が残りますが、今回の件で少しだけ株を上げた彼が、私達を失望させないことを祈ります(圧)。

(2023/12/7)

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