気ままなレビュー その2 Hate tell a lie/華原朋美(1997)~からの中澤系の短歌~
当時、華原朋美の歌が嫌いだった。どこがいいのかさっぱりわからなかった。ほかの小室ファミリーの歌はイイと思ったけれど、この人の歌だけは好きではなかった。なぜでしょうか。
朋ちゃんの歌の歌詞が、ぜんぜんよくなかったからだ。小室さん、恋人への作品は手を抜くタイプかしら。小室哲哉と言えば皆、曲のほうを話題にし、評価していた。歌詞のほうはあまり触れられなかった。
私は、小室さんの作品は曲よりも歌詞が好き。globeの『FACE』の
反省は毎日で悔やまれることが多すぎて
青春が消えてゆく
でも情熱はいつまで続くの
少しくらいはきっと役には立ってる
でもときどき自分の生きがいが消えてく
の流れなんて最高。心に響きますね。それなのに朋ちゃんの『Hate tell a lie』はどうなの。
何から何まであなたがすべて
私をどうにか輝かせるため 苦しんだり悩んだりして
がんばってる
なんかちょっと……ヘンじゃないか……響かないし……。これって「華原朋美が浮気した罰でこんな歌詞を歌わせられてる」って噂がありました。「あなたがすべて~♪」と小室哲哉に誓っているという話。ゲーって思いましたね。そんなこと、公の場でやってんじゃねーーよって。二人の話なんだから二人の中で完結してくれと。そういうプレイに見えてきて「きっしょーーー!」と思ったものです。
そういうのってシラけませんかね?
たとえば短歌の恋人同士の場合、恋人にあてたメッセージ短歌を素知らぬ顔で発表する。なんにも知らんみんなが「よい短歌です」と褒めてくれる。当人たちニヤニヤ。その後二人で大いに盛り上がっちゃったりして。なんか普通にありそうですけども。でも…
作品を恋人へのメッセージとか懺悔とか前戯に使わんでくれ。使ったとしてもバレないようにしてくれ。寒いんだよ!
中澤系と華原朋美
ところで私のもっとも好きな歌人である、中澤系の短歌に華原朋美をモチーフにした作品があります。
I hate to tell a lie 冥き地下道にながながと女の腰のポスター 中澤系
たぶん『Hate tell a lie』のことだと思いますが、I hate~ときちんと文章になっています。「うそつきは嫌い」と言う意味。
暗い地下道にポスターが貼ってありますよね。横長のPARCOとかの、宣伝のアレでしょう。モデルさんの腰が強調された(寝そべってる)セクシーな図だと思います。それか、ズバリ朋ちゃんのこの歌の告知ポスターかもしれません。だから何だという話ですが。
ワタシ流こじつけ解釈
あとで述べますが、ワタシ流のこじつけ解釈だとこの短歌は
●暗いじめじめした閉塞的な、閉鎖的な場にもなまめかしい女の姿(ポスター)がある。
●ああ、この場にも鮮やかな光があり、生がある。
●I hate to tell a lie.でもそのお前の姿は嘘ではないのか?
●華原朋美のポスター、または彼女に似た女のポスターを一瞥して私はそう思った。すべて嘘だと。
●生、とは嘘のうえで成り立っているのだと。
まあこんな意味かと思います。(なんだそりゃ)(イミフ)でも意味通じる~(IKKO風に)(えっ)
でも、こんな感じでいいと思います、解釈なんて。こじつけでいいんです。最終的につじつまが合ってれば。
で、もう一首、華原朋美モチーフの歌があります。
平等に価等のない日々それならば裏声で歌うたうな華原
これの解釈ですが、「価等 かとう」ってなんだ?と思いましたが「価(あたい)など」ですね。不思議なことに、歌集では「価等のない日々」ですけどツイッターのbotでは「価値のない日々」となっています。なんで「かち?」写し間違い?
みんな平等に価値のない日々を送っている。そんなとき、いつものごとく裏声で歌っている華原朋美を見た。あーなんだかなぁ、裏声やめてほしい。という内容。
平等にぃ~価等ない日々ぃ~♪ってか。
でも…そんな歌うたってたかな?
この短歌に近い朋ちゃんの歌詞を探してみたらこんなのが。これかな?
くり返しくり返し毎日電車に乗っている
遠い景色も近い風景も
daily news/華原朋美
こじつけ解釈をしてみます。
解釈1
価値のない日々。そう華原朋美も歌ってんだから、華原朋美だって毎日おんなじこと繰り返してるんだから、みんなそうなんだよ、しようがないよ。だからさ、たいした日々じゃないんなら、気取って裏声する必要なくない?
(でも価値がないのも平等なんだよな、それってよーく考えるとさ、幸せってことなんじゃないか……?)
解釈2
私たちは価値のない日々だ。それはそうとして華原朋美の裏声がうざい。
華原朋美の歌の歌詞の話ではない。たんに平等に価値がないなら裏声で歌うな=本物の自分で歌え、価値があるなら裏声=偽りの自分 で歌ってよい。価値がないなら地声で歌ってろ。価値があるものだけ美しくいられる……
価等ない日々と華原朋美なんの関係もなくね?
この短歌はすっごく難解です。なんで朋ちゃんが出てくるの?そう思いますよね。朋ちゃんの歌詞にそういう言い回しがあるとかないとか別として。
短歌ってこういうパターンが多いです。「無関係のものを二つ出してきてインパクトを狙う」テクニックの“二物衝突”ってやつなんですけども、その二つが離れていれば離れてるほどグッドで、でも実は水面下?では意味が通ってるみたいな感じがイイ的な。
つまり価等ある日々←→華原朋美 じゃ当たり前。彼女は成功しているし価値のある日々を送ってるはずだから。
価等ない←正反対→華原朋美 は二物衝突なのでインパクトあり。でも『daily news』では自分もその他大勢と一緒で平凡な毎日だと歌ってる。ココがこの短歌のキモなんだと思うんだけど…
<まとめ>
中澤系:価値がないなら地声で歌ってろ。価値があるなら美しく歌っていいよ。
朋ちゃん:(あたし価値があるし裏声で歌っちゃうけど平凡な毎日だってことにしといてテヘ)
の、二者のズレが面白い気がします。よくわからんけど。
この華原朋美短歌ふたつは、たいして上手いことは言っていません。むしろ「は???」です。
でも「上手いこと言ってやった」と感じる短歌はよい短歌に思えます。
こじつけでもいいから解釈してみよう!
短歌や詩や俳句などの解釈って、こじつけみたいにしてもかまわない気がします。なぜなら、文字から得られる情報が少ないからどうしても想像になってしまう。
なら想像でいいならなんでもいいんでしょうか。
私のおススメは「自分の経験とむりやりこじつける」ことです。自分に似てる、でもいいでしょう。これは昔塾の先生から習った感想文必勝法です。それなりに形になるし、読むほうも面白いでしょう。最後につじつまを合わせればそれでいいと思います。
と、ずらずらと書きましたが、中澤系って華原朋美が好きだったの?意外なんだけど。KEIKOや安室奈美恵は出てこないし。いや、二首も(あんまり好意的じゃないやつを)つくるなんて逆に嫌いだったのかもなあ……。
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