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私の美術館鑑賞法

小学生の頃、よく美術館に連れて行ってもらっていた影響で、私は今でも美術館が好きだ。

愛知県に住んでいるので、名古屋付近の名古屋市美術館や愛知県美術館は年に数回行く。また、近場の美術館だけでなく、県外の美術館にも行くことがある。趣味のライブ遠征で愛知県以外の県を訪れた際は、ライブ前の暇な時間を美術館で過ごすことがよくある。

そうやって私が頻繁に美術館に行っているのを見て、周囲の人達はよくこう言う。「美術ってよく分からない。1人で美術館に行って楽しいの?」と。

だけど私はその発言が不思議でたまらない。

芸術に正解は無いのだから、肩肘張らずに好きに見たら良いのに。私はそう思うのだが、美術館に行きなれていない人にはなかなかその"自由に"という感覚が分からないようだ。だから今回は、私なりの美術館の楽しみ方を紹介しようと思う。

まずは、美術館の静寂と空気を味わうこと。これがポイントである。

足を踏み入れた途端に重厚感のある空気が身を包み、自分の足音だけがコツリコツリと響く感覚。人や車や機械が溢れた街の中で、こんな静けさを味わえる場所はなかなか無いものだ。展示会場に足を踏み入れたら、まず軽く深呼吸して、「自分は今からここの芸術を味わい尽くすぞ」という気持ちで静寂を吸い込むのだ。

そうして私の美術館鑑賞がスタートするのだが、作品の見方にも私なりのポイントがある。

それは、"見たいものをじっくり見て、興味の無いものはサラッと見ること"である。

「美術館に行こう!」と思うと、全ての作品に時間をかけて鑑賞し、何かしら知識を得て帰らなければならないような気持ちに駆られるが、別にそんなことはないのだ。知識なんて得られなくても良いし、全ての作品を理解しなくて良い。全ての作品を好きになる必要は無いし、全ての作品を覚えて帰らなければならない訳でもない。「全部見なきゃ!」と身構えてしまうと途端に義務感になり、美術館鑑賞が楽しくなくなってしまう。

だから私は、興味を惹かれる作品には時間をかけて鑑賞し、あまり興味の湧かない作品派サラッと見て通り過ぎる。これくらいの感覚で鑑賞すれば、美術館に慣れていない人でも気負わずに楽しむことができる。

そして、作品を見ていて「この作品はなんだかよく分からないな…」と思った時や、「知識が無いからどうやって理解すれば良いのか分からない…」という時は、解説パネルを読むと良い。キャンバス一面にただ色が塗ってあるだけのような、理解するのが難しい作品でも、解説パネルには作者の意図や制作工程が書かれていることがある。解説パネルを頼れば、何の予備知識も無い状態で美術館に行ってもちゃんと知識を得ることができるだろう。1人のアーティストをクローズアップした展覧会であれば、アーティストの人生を辿るような流れで解説パネルが設置されていることが多いため、読みながら作品を順番に鑑賞すれば、アーティストの生涯を楽しむことができる。

ここで1つ私なりの楽しみ方を紹介する。

展示会場に足を踏み入れ、出てくるまでに、お気に入りの作品をいくつか見つけておくのだ。そして会場を出た先にあるグッズショップで、その作品のポストカードを買う。それを100円ショップなどで売っているポストカードファイルに1枚ずつ入れて集めていけば、お気に入りの作品だけをギュッと集めた自分だけのコレクションファイルが完成するのだ。後から見返すと、「あぁ、これは〇〇県に行った時のやつだ」「こっちは〇〇展で初めてみたやつだ」と思い出が蘇る。何かをコレクションするのが好きな人には特にオススメの楽しみ方である。

さらに、時間に余裕がある時は、美術館に併設されているカフェやレストランに入ることも、私の楽しみの1つだ。立ちっぱなしでの美術鑑賞に少し疲れたら、カフェに入ってスイーツを食べる。美術館のカフェは、雰囲気もオシャレな感じのところが多く、少しお嬢様のような気分になれる。また、美術館によっては、展覧会とのコラボメニューが用意されていることもある。アーティストや作品をイメージしたメニューを頼めば、芸術を舌でも楽しむことができる。

展覧会を鑑賞して、ポストカードを買って、カフェでスイーツを食べる。このルーティンで美術館に行けば、大体2~3時間くらいは美術館の中で過ごすことができる。出かけた先でちょっと暇な時間ができた時、1人で静かな空間に行きたい時、手軽に非日常を味わいたい時なんかに、美術館を訪れてみるのはいかがだろうか。


自分の書いた言葉を本にするのがずっと夢です。